フィクションなどから拾う情報処理用語? その64 転送(翔べ! 必殺うらごろし)

翔べ! 必殺うらごろし 第10話 「女は子供を他人の腹に移して死んだ」(脚本:山浦弘靖、監督:松野宏軌 (C) 松竹)より

 

もっと評価されて良いと思うのだけど最終回を最終的に書く事になる山浦弘靖さんが書いた脚本の2本目。かなり作品の世界を捉えていて、一応、明るくしようとしているのがよくわかるし、よくできていると思う。だけんど、元の企画が暗いので引いてしまった視聴者を戻すのはかなり難しい事も再認識させられてしまう、複雑な気分になってしまう話なのだ。

さて本題。勝手に(最終回でそう言っている)先生達に着いて来ているおねむはボーっとしていた。そこに偶然にも妊娠したお京(早川絵美)が悪い皆さんに追いかけられて、最終的にはおねむのすぐ近く(だったと思う)で殺されてしまった。途端におねむのお腹が大きくなり、え! でこの後、お医者さんのところへ行くとおめでた、すなわち、妊娠していたと判明。処女懐胎? いや、そう言うわけではなくて、なんと、咄嗟にお京の腹の中の子供がおねむの腹の中に転送されてしまったのだ!

これ、喜劇のように描こうとしているのだけど、よくよく考えるとやはり恐いネタ。でもおねむはそれでもボーっとしているので若と二人で赤ん坊を産んで育てたらどうなるのかなあという話まで始めてしまうのだ。若も男装してはいるけど女性だと言うことまで考えるとかなりすごい場面である。

さてこの話にはもちろん裏があり、お京の他に佐吉(森下哲夫)まで殺され、正十や若(若は密偵役も兼ねているのだ)の探索もあって大まかな事情がわかり、最終的には朝日が登る中、先生がお京と佐吉からの魂の叫びを恐い音楽(一応、初期より短めにしてはいるが)がかかりつつ聞いて出動だあ! と書いてもやはり恐いものは恐い。なので(魂を沈めるために行なう)殺しの場面は大抵早朝になるのだ。

さて今回の殺しの内訳は次の通り。

  • 沢井久四郎(内田勝正):おばさん
  • 黒沼(浜伸二):若(墓場でボクシング & 階段転がし)
  • 坂崎右近(天津敏):先生

ですが、上記で一番恐いのは市原悦子演じるおばさん。初回の映像を観て山内久司プロデューサーがその危険性に気づいてしまったけれども始まってしまったので仕方なく敢えてそのまま続行させたけど案の定こわすぎたと言う殺し技。市原悦子さんの演技力が裏目に出てしまった形。私は名作だと思うけれども視聴者は皆引いてしまうのもわかるという複雑な気持ちになる話ですが、映像で詳細は確認してほしい。