フィクションなどから拾う情報処理用語? その143 テスト(暗闇仕留人)

暗闇仕留人 第2話 「試して候」(脚本:村尾昭、監督:工藤栄一 (C) 松竹)より

この組み合わせで面白くないわけがないのだが本編は見応え満載。まず糸井貢が三味線を弾く芝居小屋で便所が火薬で爆発。兵四郎(松山照夫)の仕業であることが画面では示唆されるのだが、実はさらに裏があった。糸井貢が北町奉行所へ容疑者として連行されてしまって、慌てる中村主水は便所に調書を隠し持って入って糸井貢の部分を破り捨てたのだが、そんな事をしなくてもよかったのだ。吉岡以蔵こと糸井貢と同じ高野長英門下の須貝内記(中山仁)が手を回して「上からの命令」により釈放されたからだ。須貝は幕府工武所で指揮を執っているらしく、糸井貢にも手伝って欲しかったのだ。否応なく糸井貢は殺しに関わらざるを得なくなってきた。そして紆余曲折の末、糸井貢の近所に住む与之吉(山本紀彦)と糸井貢の仲間の半次が罪人として引っ張られ、須貝が(夷狄の黒船に対抗するための)大砲の試し撃ち、要するにテストの標的として使ったため、殺しの仕事にもなってしまった。なお半次はインチキ商売の小悪事がバレて捕まったのだが、与之吉は島帰りの過去がある父弥三郎(池田忠夫)の身代わりに牢に入っており、更にはおつゆ(ウルトラマンAに出たのが有名な西恵子)との祝言も控えていて糸井あやがその祝言のための晴れ着を縫ってあげていたという奇縁もあった。おつゆとの縁談は破談になった…はずなのだが、おつゆは家出して弥三郎のところへ来ていたということも付け加えておこう。兎に角、糸井貢は色々な板挟みに遭ってしまったのである。なお与之吉は死んだが半次は爆発でボロボロになりながらも何とか生き残り与之吉の死を確認後、死んだふりして生き残り、おきんのところへ戻って全てを打ち明けて仕事にし

大吉「(手を伸ばす半次を見て)あの世まで銭を持っていく気だぜ。」

という小ネタも用意されてはいるが。その程度で糸井貢の悩みは晴れなかったのではないか? 晴れ着やら夫婦茶碗やらを糸井貢は目にして弥三郎から金を受け取った。それにしてもよく生き残ったねえ、半次は。撃たれる前に須貝にもボコボコに殴られたのにね。

そして流れる「旅愁」はやはり名曲だ。中村主水が囚人を売った岩井十蔵(上田忠好)を殺し、大吉が兵四郎を殺し、そして

糸井貢「須貝、死んでくれ。」

とあいなった。糸井貢はかつての仲間を斬ったのだが、帰り道に女郎に身を落としたおつゆを見て複雑な表情を浮かべる。須貝を殺しても与之吉は帰って来ない。やはりあの最終回への伏線は貼られていたのだねえ。