フィクションなどから拾う情報処理用語? その157 ストライキ?(ウルトラQ)

ストライキが情報処理用語に入るのかは微妙かもしれないが、私は労働組合がちゃんとある会社に勤めていたことがあり、昼休みなどに組合活動に参加することがあった。そうではない会社はそこがいい加減なので、社会権がきちんと保障されているかどうかは微妙な気もするのだが、それは本題ではないので置いておこう。

さてこの記事はウルトラQ. 第6話(制作順:11、脚本No:8)「育てよ! カメ」(脚本:山田正弘、特技監督:小泉一、監督:中川晴之助 (C) 円谷プロ)制作時の逸話である。監督の中川晴之助さんは当時、TBSの社員だった。TBSでは労働組合があり、困ったことに制作中にストライキとかち合ってしまった事があったそうだ。その時にどうしたのか、面白い逸話があるので紹介しよう。白石雅彦著『「ウルトラQ」の誕生』より引用しよう。注釈については私の編集が入っている。

満田「育てよ!カメ」のとき、TBSの時限ストとロケがぶつかったことがあるんですよ。それで組合の幹部の人が現場に来るわけですよ。社員は赤坂でストをやるんですが、中川さんはロケでしょう。だから見張りに来ていたわけです。で、十二時から十三時までが時限ストで、時間になったらその人が「ただいまから中川晴之助がストに入ります!」って叫ぶの(笑)。ただこっちにしてみれば、あと二カットぐらい撮ったら場所変わりだから、そこで昼飯を入れればいいな、と思っていたんです。それで仕方がないから、「僕が代わりに撮ります」と中川さんに言ったんです。すると、「指示しちゃいけないけれども、独り言はいいんだ」って。で、僕が「カメラ、構えて下さい」というと、中川さんが「もうちょっと右から行った方がいいような気がするなあ」とぼそっと言うわけ。だからその独り言の通りにちょっと右に入って本番を撮るでしょう。と「もう一回やった方がいいような気がするなあ」って(笑)。これは面白いロケでしたよ。組合の人にしてみれば、見張りには来たけれども、何十人もスタッフがいて動いている。それを「やめろ!」とは言いにくかったんじゃないですかね(笑)。

(注)「育てよ!カメ」の撮影は、六五年の二月からなので、春闘にぶつかったのだろう。

うまい抜け道があったものである。ただ中川晴之助さんが好き勝手に振る舞った結果、「フイルム食いのハルゴン」(フィルムの使い過ぎを皮肉ったもの)という有り難くない諱を頂いたのも確か。完成度は確かに高いのだけれども制作費がかかり過ぎるのも困りものだし労働時間超過を招くのも困りもの。これが遠因となってTBSテレビは番組制作を外注するようになってテレビ番組自体がつまらなくなる遠因になるとも言えるので仕事をするのは難しいですねえ。