コスト回収?(新・必殺仕置人)
新・必殺仕置人 第5話 「王手無用」(脚本:安倍徹郎、監督:工藤栄一 (C) 松竹)より
正八(火野正平)が営む絵草紙屋で1人の男(菅貫太郎)が立ち読みをしていた。読んでいるのは
正八「いらっしゃいませ。あ、お客さん、将棋でございますか。色々ありますよ、うちは。えー、これがですね、これが「将棋精妙」
すると男は正八から、その本を奪い取り、熱心に読み耽った。かなり将棋に興味があるようだ。正八が勧める他の本には目もくれず、訊いた。
男「いくらだ、これ。」
正八は答えた。
正八「あ、これでございますか。これねえ、上下2巻本になっているんでございますよ。(下巻を手に取り)こっちが下巻で合わせて2朱です。」
男は下巻も手に取ったのだが
男「高えな。」
正八「とんでもないですよ、今時、これだけで2朱と言ったら。」
それでも男はこう言った。
男「三番町の疋田兵庫だ。金は後日、屋敷へ取りに来い。」
疋田兵庫はそう言って持ち逃げしようとした。それで納得する正八ではない。
正八「あの、お客さん、ちょっとお待ちください、ちょっとお待ちください。その辺、困るんですよね、どちら様も現金取引でお願いしているんですけど。」
疋田兵庫「俺を信用せぬというのか。」
信用できないよねえ。だが正八は本音を隠して
正八「いや、そうは申しません。」
だが兵庫はそれでも持ち去ろうとした。とちょうどいいところにおてい(中尾ミエ)が立っていた。
正八「それじゃあ、お客さん、本返してくださいよ。」
疋田兵庫「貴様、天下の旗本を愚弄する気か!」
正八「(本で叩かれた後)いや、愚弄しませんけど、本、投げ飛ばさないで…」
とそこへ割って入ったのはおてい。疋田兵庫にぶつかり、
おてい「気をつけてください。」
それでも疋田兵庫は立ち去った。
正八「あのう、後で取りに伺いますよ。」
さて実際はというとおていが財布をすりとっていた。
正八「俺さあ、本代だけ貰えば、それで良いんだよ。」
おてい「ありがとは?」
正八「ありがとう。」
そして中を調べたらチャリ銭ばかり。」
おてい「足りないじゃない、全然。」
というわけで店先で
正八「本当にもう、ドケチターイ。」
「大袈裟な財布」を投げる正八であった。