管轄(暗闇仕留人)

暗闇仕留人 第11話 「惚れて候」(脚本:播磨幸治、監督:高橋繁男 (C) 松竹)より

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第11話「惚れて候」1974.9.7

 山から出てきた獣じみた男が、純朴な性質を利用され磔刑台に消える悲劇を描く。
はじめ盗っ人の一味として弥太を捕え激しい拷問にかける火盗改、将に土壇場の際の際で処刑を止め、一転平謝りで冤罪だったと認め、その後は仕事や住居や結婚の世話まで見る。感激し火盗長官の乾を仏と崇める弥太、そのうちそっと耳打ちされる暗殺話、乾に恩返しと受ける弥太。引かれゆく馬上の彼に仕組まれたことと主水が告げるが、とうに諦めきった男は黙したまま刑に服し、その夜弥太の新妻が死の間際託した五両が分配される。

 ロケ地、火盗改長官・乾寛兵衛役宅、大覚寺大門。小伝馬町牢屋敷、明智門。弥太の濡れ衣が晴れたとはしゃぐおきんの妹分・おまき、でんぐり返りは大沢池堤。釣り禁止の池で釣り(リリースしている)の主水に声を掛け火盗を見直したと言うおきん、大沢池水門そば。縁先で虫を追いかける老中松平和泉守の側室・千鶴、相国寺方丈縁先。玉泉院の石段、乾と行き会い女の匂いを嗅ぐ大吉、西寿寺石段。千鶴の駕籠が出る、相国寺庫裏。弥太に得物が渡される、方丈塀南西角。駕籠が近づく、大光明寺南路地。駕籠に極太手裏剣を打ち込む弥太、法堂前。乾の部下に斬られるおまき、今宮神社合祀摂社前。刑場はどこかの砕石場か。おまき暗殺犯に仕掛ける主水、中ノ島橋上。
*弥太に新克利、おまきに池波志乃、そして乾に金田龍之介とコテコテのキャスティング。

女心は難しいよねえと思う話。おきんのスリ仲間だったおまき(池波志乃)は夜鷹と間違えられて弥太(新克利)と寝る羽目になった。最初は弥太を憎んでいたおまきだったが、弥太が磔やら打首やらになるかもしれないと知ると段々とそれが愛情に変わっていく。しかも弥太はおまきにとっては初めての相手だったらしい。ただ捕まったのが火盗改なので管轄外の主水には手が出せない。弥太は貢の芝居小屋で主水の目の前で捕まったという奇縁もあった。

だが弥太はおまきの懇願もあって助けられた。実は弥太が出入りしていた伝造(浜田寅彦)が彼の手裏剣の腕を火盗改の乾寛兵衛(金田龍之介)に耳打ちしていたのが真の理由だったが、弥太とおまきは彼らの真意など知るわけがない。

おまきは弥太が助かって大喜び。紆余曲折の末、弥太とおまきは夫婦になった。だが幸せは長くは続かなかった。裏があったのだ。これに最初に気がついたのは中村主水だったが、おきんと糸井貢は銭儲けの種になるという話に拒絶反応を示した。だが主水の勘は不幸にも的中。伝造は弥太をうまくけしかけ、5両の金を渡して仕事を持ちかけた。弥太は松平和泉守の行列を手裏剣で狙ったが駕籠に乗っていたのは女。しくじり、北町奉行所の同心に捕まった。おまきは乾の部下岩佐軍三(原田清人)に斬られた。弥太が口を割る可能性を乾が恐れたからだった。主水は乾の真意を見抜いて駆けつけ、おきんにも告げておまきを探したが、時既に遅く、主水が見たのはおまきを抱き抱えるおきんの姿であった。

鉄砲玉のおきん「やるね。あたいはやるよ。」

結局、弥太は口を割らず、市中引き回しの上、磔獄門に決まった。主水は馬上の弥太におまきが殺された話を包み隠さず全て話したが、それでも弥太は何も言わなかった。なお磔の場には中村主水の他、乾寛兵衛、岩佐軍三、伝造、鉄砲玉のおきん、おひろめの半次、村雨の大吉、そして、糸井貢もいたことを付け加えておこう。

まず伝造を大吉が殺した。岩佐軍三を斬るのは中村主水。そして乾寛兵衛を糸井貢が斬るのだが、乾と一緒に寝ていた女も殺した事もあってか、貢の表情は複雑なもの。かぶっていた笠を女の女に被せ、去るのであった。