『助け人走る』第25話『逃亡大商売』(脚本:野上龍雄、監督:松野宏軌)より。
第25話 逃亡大商売 1974.4.6
全編を覆う重苦しい空気、「その後」の助け人たち、元締がいなくなってからひと月。
表の稼業も無く監視下の日々、懐も寒い彼らに来た仕事は先ごろ処刑された盗賊の女房から、恨みを晴らす殺しではなく自身の逃亡のヘルプ。真っ向から奉行所に対抗する仕事に文さんは躊躇、逃がし屋に回すことに。しかし逃げおおせた筈の女房は鈴ヶ森で夫のあとを追って死んだと知らせが入るのだった。ロケ地、夕立小僧の処刑の鈴ヶ森、下鴨神社糺の森池跡。しのの茶店と周辺(今回は秘密裡にツナギをとる役をしのがつとめる)、今宮神社高倉下、合祀摂社、舞殿前の木(お御籤結んでツナギのしるしに)。後段、逃がし屋差し回しの駕籠が夕立小僧の女房に接触は合祀摂社~高倉前。
*北町同心とつるんでいて文さんや盗賊の女房を騙した逃がし屋・弥平次に伊丹十三、最後は文さんの怒りの短刀を腹に受ける。激しい怒りの表現、刺して刃をぐいぐい押し付ける際襖をつごう四枚突き破り。
あらすじは上記の通り。
さて配役はと言うとこんな感じだ。
- 弥平次 - 伊丹十三
標的。表向きは古着屋を営んでいるが実は逃し屋。文十郎から裏稼業の臭いを嗅ぎつけ、逃し屋の姿を現す。夕立小僧を箱根の関まで逃したのだが三島で捕まったのだと言う。鮫洲→木更津→越後経由で堺の(よねの)兄のところまで送ると言い、10両を要求した。 - およね - 弓恵子
頼み人。夕立小僧の妻。冒頭の処刑場で(編笠で顔を隠している感じの)文十郎に「助けてください。」と声をかける。そして店を閉めてい清兵衛のお宅を訪れ、裏の助けを依頼する。一度は断る利吉だったが、やはり気になり、跡をつけ、話を聞く事にする。「箱根の関所の向こうまで」の逃亡を依頼する。夕立小僧の子供も孕っていた。一度は断った文十郎と平内だったが… - 梶川要蔵 - 外山高士
標的。夕立小僧を捕らえている。実は弥平次とグル。実は夕立小僧は既に足を洗っており、江戸に登ってきたところを梶川に捕まり、盗人に仕立て上げられてしまったのだ。 - 半三 - 島米八
- 丁次 - 芦沢次男
二人とも逃し屋の手下。駕籠かきで鮫洲までおよねを運ぶのだが、弱みにつけ込み、途中で金を要求。他にも(梶川の)手下の岡っ引きがいて、その都度金を要求。最終的には梶川の待つ鈴ヶ森の刑場へ連れ込んでしまう。 - 文字春 - 山口朱美
梶川の妾。 - 夕立小僧(長吉) - 花岡秀樹
罪人。盗人で冒頭で処刑される。
助け人が再起動する話である。文十郎には弓坂の庄八(今回は伊吹剛)の監視がつくようになってしまった。それでも能天気にも(?)お吉は文十郎の家にやってくる。お吉は前回、唯一捕まらなかった事も今回は強調される。お吉の話では平内はあちこちの賭場を渡り歩いている状態で、やはり岡っ引きの監視がついている長屋へは帰ってこないし、清兵衛も方々を渡り歩いているらしい。
お吉「文さん、私達、一体、何をやってきたんだろうねえ。」
と言うのは(それまでの)助け人全員が思っている事だろう。しのは利吉からの連絡を皆(文十郎、平内、龍)に伝える役目を担う事になった。彼女も助け人の仲間になったのである。そしてアジトは清兵衛の屋敷ではなくて芝居小屋の舞台裏に変更。そこで助け人達は密談するのだ。
だが文十郎も平内も降りてしまった。龍は乗り気だったが年が
油紙の利吉「あんたじゃ若すぎるよ。」
その心は夫婦を装って逃す事はできないと言うもの。駆け落ち者にされるのが席の山だ。成功するとは思えない。
さて文十郎が何故降りたのかといえば
中山文十郎「為吉だよ。」
彼の獄死が重くのしかかっていたのだ。しかも
中山文十郎「(捕まった時に)口を割らずに死んでいける自信がねえ。」
と言うのも理由であった。そんな男ではないと言う平内だったが、
中山文十郎「おめえさん、為公のように口を割らずに死んでいける自信はあるのか?」
と返されて返す言葉がなくなってしまった。と言うわけで、この辺が潮時だと二人の結論はそうなった。
だが、そう簡単にはいかないのだ。まず平内は辻家から正式に離縁されてしまった。曰く
辻綾「今後、一切、あなたのくださるお金はご辞退申し上げます。」
その心は
辻綾「あなたは先日、闇の助け人とか称する無頼の輩の一味として町方に取り調べを受けられたそうではございませんか。」
そんな不浄の者のお金は受け取れないと言うのだ。平内の抗弁は聞き入れられず
辻綾「二度とお目にかかろうとは思いませぬ。そつじながら夫婦の縁も今日限り。私の方から切らせて頂きます。」
これが辻綾、最後の登場となった。
そして文十郎の方にも動きがあった。しのが自分の嫁入り道具を質入れしてお酒を買ってきた事を文十郎が検知したのだ。思わずしのをビンタする文十郎だったが困窮ぶりは分かったようだ。
ちょうどその時、利吉から文十郎に依頼があった。逃し屋を紹介してくれと言うのだ。文十郎は既に逃し屋と面識がある。頼み人のおよねを逃し屋に紹介してくれと言うのだ。文十郎は前金5両(推定)のうち1両をまず受け取り、およねを逃し屋に連れて行った。
だが上記の通り、およねは梶川達に殺されてしまった。だが悪い事はできない。文字春からお吉に、およねが持っていた櫛が渡った事から発端となって、事が露見。更に龍から、およねが「鈴ヶ森で亭主の後を追って死んだ」と聞かされ、驚愕する利吉、文十郎、そして平内。文十郎は尋ねた。
中山文十郎「俺の取り分はいくらだ?」
怪訝な顔で聞き返す利吉だったが、二両だと答えた。
中山文十郎「よし。」
即座に
島帰りの龍「(興奮して)今頃になって引き受ける気か?」
前回は冷徹な感じを受けたが、やはり根は熱い男のようである、龍は。更に
油紙の利吉「良いんですか? 私は平内さんから聞いて、あなたの気持ち(降りた理由)はよく分かっています。今、ここで金を受け取ったら、もう後へは戻れませんよ。それを承知で金を出せと言ってるんですね?」
と念を押した。答えはもちろん
中山文十郎「そうだ。俺はこの仕事をやる。あの人に代わって、金をくれ。」
その言葉を聞き、平内も龍も頷いた。そして利吉は2両を渡した。かくして助け人は再起動。逃し屋の一味は利吉が用意した河豚鍋で全員死亡。龍は三下を始末。平内は梶川をキセルで刺し殺し、逃し屋は文十郎が斬るのであった。なお、文十郎の殺しの場面では、コーラスなしの殺しの曲がかかる趣向になっている。
文十郎からも平内からも笑みは消えてしまった。おそらく当初は第26話で終わる予定だったと思うのだが、この後、『助け人走る』は第36話まで重苦しい雰囲気のまま続くのである。