オープンソースカンファレンス2010Fukuoka訪問記

前の記事にも書きましたが、本日はオープンソースカンファレンス2010Fukuokaへ行って参りました。今回の会場は福岡工業大学で福岡市のはずれに位置しています。ただ、ギリギリJRの切符では福岡市内に入っておりました。


聴講したもの中から次の三つについて説明しましょう。

  • (1) 〜テキストから映像を作り出す〜 T2V (Text-To-Vision)
  • (2) OSC50回開催からみるオープンソース市場の傾向
  • (3) 【OSSと政府・自治体】脱 おんぶにだっこ


まず、「〜テキストから映像を作り出す〜 T2V (Text-To-Vision)」は元々NHKの放送技術研究所にいらしゃった林正樹さんの発表でした。台本で各キャラクターの動きを指定するとその通りに動く3次元アニメを作り出しているというのがその概要です。テキストで書かれた台本をTVMLという記述言語に変化し、T2Vプレイヤーで再生して映像化するのですが、予想以上に凝ったものでした。まず、映像の方はT2Vプレイヤーで再生したものをキャプチャーすることにより wmv 形式に変換することが可能です。音声合成はフリーのものを使っているとのことでしたが、これは取替が可能で、この部分を変えることにより、日本語だけではなくて他の言語にも対応できます。デモでは中国語を話していました。映像部分も jpeg の画像を挿入したり、二次元キャラクター一枚から自由に動きをつけることが可能だったりと盛りだくさん。極めつけは映像に登場するキャラクターにツッコミが可能ということ。ESCキーで割り込むと一旦映像が止まり、キャラクターへの質問モードに入ります。あらかじめ想定問答集を用意し、それに応じてキャラクターが答えます。ただし、想定問答集にない質問には答えられませんが。研究段階ではWebを検索して動的に作ることも実装しようとしたそうです。まあ、この機能は実装が難しいでしょうね。他にもいろいろな機能がありました。URLは http://t2vlab.jp/ です。


次は「OSC50回開催からみるオープンソース市場の傾向」についてです。OSCが始まった2004年から順に OSC の発表項目を分析していくものでしたが、ここからオープンソースの動向が見えてくるという内容でした。2004年は1回しか行なわれていないのですが、公式サイトのコンテンツは宮原徹さん自身が削除してしまったため、びぎねっとにも残っていないそうです。そのため、ITproの記事を元に分析していました。はじめの頃は「オープンソースはビジネスになるの?」という感じで皆発表したり討論したりしていたのですが、2006年頃になると「オープンソースを何に使うの? どうやって使うの?」という感じでの演目が増えてきているそうです。だんだんとオープンソースの考え方が浸透してきた証拠でもあるでしょうね。ただ私は元々オープンソースのやり方で暮らしてきたので、これが当たり前なんだなあと思います。あと、発表者の指摘で気がついたのですが、だんだんと Java 関連の発表が減ってきているそうです。たしかに最近は Java 単体での発表は聞きません。そのかわり、Rubyが台頭していますね。


最後に「【OSSと政府・自治体】脱 おんぶにだっこ」を取り上げましょう。こちらは技術者ではなく、ベンダーに発注する側である長崎県庁総務部理事の島村秀世さんの発表です。簡単に書くと、自治体でありがちな曖昧な内容の発注にするのではなくて発注者である自治体担当者が自分の頭で考えて発注書を書いて行くことによりコストも下がったし、地場IT産業の育成にもつながったということです。その基本は「小さい仕事は失敗しない」です。どういう事かというと、自分で出来る範囲のことをまずやり、出来ないことを業者に発注する、というものです。これはまさに Small is beautiful. ですね。仕事の進め方も3ステップあります。とりあえず「出来るところだけをやる」のが第一ステップで、ラフでもいいから自分なりに考えて書いてもらい、何をやりたいのかがわかるようにしてもらいます。それをレビューし、レビューを受けて他の人が補っていくのです。たとえば綺麗なデザインにするのはWebデザイナーの仕事になります。第二ステップは SE などに頼んで DB のテーブルフォーマットを設計してもらう段階です。委託に頼んでもいいけれど、丸投げではなくて、出来上がった結果はきちんとチェックするのが大事です。最後のステップでは画面デザインとDBテーブルが固まったので、SEに頼んで設計書(仕様書)を作成してもらいます。これを元に入札を行なうのです。これ、当たり前の事だと思いますが、今までの自治体では当たり前のことではなかったんですね。アタリマエのことが当たり前になることが一番大事だということがよくわかりました。


今回もあっという間に時間が経ってしまい、展示を見るのを忘れてしまいました。出来れば懇親会にも参加して意見を交換したりするのもいいのですが、今回はその時間を取れませんでした。次回以降はなるべく懇親会にも参加したいですね。あと、一人称で仕事をすることが本当に大事だということも再確認できました。福岡まで行ったかいがあったと思っています。