『必殺からくり人』第8話『私ハ待ッテル一報ドウゾ』(脚本:早坂暁、監督:蔵原惟繕、(C) 松竹)より。
全14話を全て早坂暁が脚本担当の予定で始まった『必殺からくり人』だったが、実際は全13話に終わり、しかも、そのうち3本を他の脚本家(中村勝行が2本、保利吉紀が1本)が書く事態に陥った。更には前の作品である『必殺仕業人』を2話延長して開始をずらすと言う事態にも陥った難産の作品だった。
それでも早坂暁が書いた話はどれも完成度が高かった。その中で一番後味が悪い話を取り上げよう。
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第8話「私ハ待ッテル一報ドウゾ」1976.9.17
行方不明の子を求める親心につけこみ、ニセモノを送り込んで富商乗っ取りを企てる悪辣な集団。過去を暴かれぬため罪も無い娘も始末してのける非道さ。赤子を負った母という己をも利用する冷血の女でも母は母、藤兵ヱを人殺しと叫ぶ少年の悲痛な声が耳に残る。
ロケ地
・本所本石町の橋たもとにある尋ね石、中ノ島橋下手南岸に祠セット。
あらすじを簡潔にまとめると上記の通りになるのだが被害者にも加害者にも親子の絆というテーマが隠されているのが大きなポイントだ。
さて主な配役は次のとおりだ。
- 新兵ヱ - 早川保
標的。最終目標は越前屋の身代乗っ取り。時次郎に倒される。
- ふゆ - 高田敏江
被害者。富商越前屋の奥方。35歳。彦市という息子がいたのだが、6歳の時に行方不明となっていた。そしてそれから10年後、15歳になった「彦市」が先月見つかり戻ってきた。「彦市」が偽者である事に最終的には気づくのだが、その段階に至っても仇吉(と藤兵衛)に
もし、彦市がほんとうの彦市でないとしても、やっぱりあの子は、わたしたち夫婦の息子です。新しく授かった彦市です
と言い切った。だが最終的には殺されてしまう。
- せん - 西崎みどり
被害者。彦市の幼馴染兼とんぼの友達。彦市が幼い頃に船から落ちて死にかけた話をするのだが、「彦市」は覚えていなかった。その疑念をとんぼにも話すが口封じのために殺されてしまう。この件がきっかけでからくり人が始動する。
- ヤス - 荒砂ゆき
標的。赤ん坊をおんぶしている。藤兵衛に始末されるのだが…
- 天斎 - 梅津栄
闇医者。一味に襲われた藤兵衛を治療するのだが、腕のあざも偽造可能である事を仇吉達に示唆する。
- 彦市 - 前田俊和
加害者一味のメンバーだが広い意味では被害者か? 年齢15歳。彦市になりすますよう命令されて任務を遂行するが段々とその任務遂行に疑問が生じてくる。その矢先に藤兵衛が彼の目の前でヤスを始末するのだが、なんとヤスは彦市の母親でおんぶしていたのは彼の弟。なので
彦市「嫌な男と組んで、オレに悪い事をさせるんだ。だから、死んだほうがいいんだ。」
とか
彦市「弟だって、今に、オレと同ンなじことをさせられるんだ」
とか言うのだが、藤兵衛から「オレのところへ来い。花乃屋だ、深川の」と言われても
彦市「おっ母さんを殺した奴のところへなんぞ、行くもんか」
とキッパリ拒絶し、立ち去ってしまった。
なんという後味の悪い展開なのだろうか。この話では3組の家族が描かれているのだ。
越前屋、彦市一味、そして花乃屋。彦市を息子にと願った越前屋のふゆは殺され、藤兵衛も拒絶された。悪い奴だと分かっていても彦市が選んだのは実の母だったのである。
そしてドラマは、それでも藤兵衛が彦市の行方を探している事が語られて終わるのである。