フィクションなどから拾う情報処理用語 その17 切り戻し (イナズマンF)

イナズマンF 第10話「ウデスパー兄弟の挑戦状!!」(脚本:上原正三、監督:田口勝彦、技斗:高橋一俊、(C)石森プロ、東映)、第11話「美しいサイボーグ! 暁に分身す!!」(脚本:島田真之と峰沢脩、監督:塚田正煕、技斗:高橋一俊、(C)石森プロ、東映)より

ウデスパー兄弟誕生の経緯は既に述べたが、今回はその後の話である。

ここは奥多摩の山の中(実際のロケ地は沼津市辺りらしいが)。東映生田スタジオ作品ではよく登場する滝の辺りでハイカーがデスパー軍団のジシャクデスパー(声:野島昭生)とウデスパーα(声:渡部猛)に襲われた。一人が銃殺された後

ウデスパーα「渡五郎を連れて来い。お前達の生き延びる道はそれしかない。」

そう聞くや否や、ハイカーの一員だった原陽子が川沿いに降りて駐在所に駆け込んだ。

陽子「渡五郎さんを呼んでください。」

駐在所のお巡りさんは老人である。

お巡りさん「渡五郎?」

突然そう言われても困るよなあ、と思うのだが

陽子「お願いします。とても急ぐんです。渡五郎さんに会わせて下さい。」

呆気に取られながらも

お巡りさん「渡五郎ねえ。」

と画面が切り替わると渡五郎がライジンゴーに乗っていた。そう。駐在所に来たのである。お巡りさんがどうやって報せたのかが謎だが、荒井誠がインターポールの秘密調査員だから、多分、警視庁の上層部を通して連絡が行ったのだろう、知らんけど。

陽子「あなたね。」
五郎「渡五郎です。」
陽子「ジローが死にそうなんです。一緒に来て下さい。そうでないと仲間もみんな殺されてしまいます。」

なお、人造人間キカイダーとの関係は当然ない。閑話休題。そう言われても事情がよくわからない五郎は

五郎「え!?」

だが陽子は相当前のめりである。押し切られる形で五郎は陽子と一緒にあの滝へ向かった。そして滝に着いた。途端に銃殺されるハイカー仲間。

陽子「けいこ。もりやまくん。ごとうくん。」

立って泣き出す陽子を置いて(?)、五郎はハイカー達の死体に駆け寄った。そして全員の死亡を確認した。

五郎「デスパー。若者達のパーティーを人質に俺を呼び出すとは卑怯だぞ。出てこーい。」

と即座にジシャクデスパーとデスパー兵士2名が御登場。

ジシャクデスパー「渡五郎。待っていたぞ。」

渡五郎は立ち上がった。

五郎「罪もない若者達をよくも。」
ジシャクデスパー「渡五郎、もう一人の人質が死んでもいいのか。」

途端に慌てる陽子。

陽子「ジロー、ジローはどこなの?」

そういえばいなかった。なお目の前にいるのはジローでなくて演じる俳優が同じ(ではないが、この話では)渡五郎である。

ジシャクデスパー「渡五郎、大人しく着いて来い。それ。」
デスパー兵士「ディー!」

こうして渡五郎は鎖で縛られてしまった。もう一人のデスパー兵士は陽子を拉致。

五郎「ジローくんのところへ案内しろ。」
ジシャクデスパー「よかろう。行け!」
デスパー兵士「ディー!」

余談だがデスパー兵士の掛け声は「ディー」だ。デスパー軍団の頭文字Dから取ったのであろう、知らんけど。

陽子「いやん。」
五郎の心の声「ジローくんだけでも助けられたら。」

そして連れてこられたのは

デスパー兵士「あの小屋だ。」
陽子「ジロー。」

陽子は小屋の中に入ってしまった。だがジローもジシャクデスパーに殺害されてしまった。高笑いしてジシャクデスパーがほざいた。

ジシャクデスパー「デスパーは甘くないぞ。」
陽子「ジロー、死んじゃいや。」

何故か五郎も小屋の中に連れてこられた。

五郎「ジローくん。」

そしてまた五郎は外に連れ出された。何の意味があったのかは不明だ。そして待っていたのはウデスパーα。

ウデスパーα「自由にしてやれ。」
デスパー兵士「ディー!」

え?
だがそれなりの理由があった。

ウデスパーα「お前達、手出しをするな。」

ジシャクデスパーが頷いた。

ウデスパーα「俺は1対1の勝負がしたい。」

と言うや否やウデスパーαは拘束を解かれた渡五郎を回し蹴りした。
顔にまともに食らった五郎は倒れてしまったが即座に立ち上がった。

五郎「望む所だ。剛力、将来!」

五郎はサナギマンになった。即座に

サナギマン「超力、将来!」

速えよ。

イナズマンチェースト!」

空中一回転して着地した。

ウデスパーα「行くぞ!」

暫く戦うイナズマンとウデスパーα。だがそこへ割って入ったものがいた。

ウデスパーβ(声:岩名雅記)「ケケーン

ウデスパーβがイナズマンを2発も回し蹴り。
速えよ。
ところがこの加勢をウデスパーαは気に入らず、ウデスパーβを止めた。ウデスパーβは攻撃はやめたが。

ウデスパーβ「イナズマン、私もこのチャンスを待っていたぞ。ウデスパーα、クロスハリケーンイナズマンを粉砕する。」

この提案にウデスパーαは乗らず、かえって怒り出した。

ウデスパーα「待て。この勝負は俺がつける。」
イナズマンの心の声「兄弟でクロスハリケーンをやられたら、俺に勝ち目はない。」

だが

ウデスパーβ「(ウデスパーαを殴った後)イナズマンは我らデスパー軍団の敵だ。私闘で決着をつけるべきではない!」
ウデスパーα「(イナズマンに近づこうとするウデスパーβを止めて)ええい、やめろ! こいつは俺一人で十分だ!」
ウデスパーβ「イナズマン退治の功を独り占めしようと言うのか? ずるい奴だ。」

これを聞いた単細胞のウデスパーαは当然プッツン。ウデスパーβの腹に何発もパンチを入れた。ウデスパーβは悶絶したが立ち上がってウデスパーαを蹴り、喧嘩を始めてしまった。この様子をガイゼル総統はモニターテレビで観ていた。毎回思うのだが、映像の送受信はどうやっているのだろうか?

ジシャクデスパー「(ウデスパーαとウデスパーβの間に割って入って)やめて下さい。お願いです、やめて下さい。」

だがジシャクデスパーはウデスパーαとウデスパーβに同時に蹴られ

ウデスパーα「どけ!」

ガイゼル総統は思わず目を背けてしまった。

ガイゼル総統「なんという、馬鹿者め。」

相当お怒りのご様子だ。
イナズマンはウデスパーαとウデスパーβの喧嘩を眺めているだけである。

さて大事な場面があって本来はそちらが話のテーマなのだが、この記事のテーマから外れるので省く。上原正三さん、すみません。それは兎に角、それから(本当に)色々あってイナズマンと陽子はウデスパークロスハリケーンの攻撃を受けてしまった。バレーを踊る、もとい、嵐でくるくる回る陽子。

陽子「助けてえ。」
イナズマン「ウデスパー兄弟のクロスハリケーンだ。」

イナズマンはピンピンしてそう言ったのだが、段々風が強くなった…と思ったら

イナズマン「竜巻が止まった。」

と思ったら崖の上にウデスパー兄弟がいる。いつの間にか陽子は人質にされていた。

ウデスパーα「どうだ。手が出ないだろう。」
イナズマン「どうした?」
ウデスパーβ「この娘を殺されても良いというのか?」
ウデスパーα「どうした、イナズマン。」

ウデスパーαは陽子の頭を掴んでいた。

するとイナズマンはこう返した。

イナズマン「兄弟揃って弱い者いじめか。卑怯者のウデスパー兄弟らしいやり方だ!」

これにプライドを傷つけられたウデスパーαは怒った。

ウデスパーα「ええい。俺は卑怯者ではないわい!」
イナズマン「だったら、その娘を自由にしてやれ。」
ウデスパーα「ん! よし。よかろう。さあ、行け。」

ウデスパーαは陽子の背中を突き飛ばした。こうして陽子は解放された。ちなみにウデスパーβは終始無言で陽子の腕を掴んでいただけである。

イナズマン「さあ、逃げなさい。」

イナズマンは陽子を逃した。
近寄ってくるウデスパー兄弟とイナズマンは戦うこととなった。
なおウデスパーαがウデスパーβより前に並んで近づいている。
これも彼らの性格を表しているといえよう。

イナズマン「来い、ウデスパー。二人揃わなければ何もできない、半人前!」

プッツン! という音が聞こえてきそうな感じである。

ウデスパーα「何! 半人前だと!」

対するウデスパーβは

ウデスパーβ「待て。ウデスパーα。此奴の口車に乗るな。我らがクロスハリケーンが恐ろしいのだ。」

その通りなのだ。冷静なウデスパーβはイナズマンの魂胆を見抜いていた。

ウデスパーα「へへー。のこのこと出てきたのが運のつきだあ。イナズマン、行くぞ。」

自分達の方から近づいておいてウデスパーαはそうほざいた。単細胞なので勢いでそう言ったのだろう。

ウデスパーβ「行くぞ、クロスハリケーン。」

こうしてウデスパー兄弟はクロスハリケーンを放った。イナズマンはひとたまりもない。その様子を逃げたはずの陽子が観ていた。戻ってきたのである。これはこの話の大事な伏線で上原正三が描こうとしたテーマは陽子の行動なのだが、残念ながらこの記事の本題ではないので書けない。上原正三さん、ごめんなさい。それは兎に角、ウデスパー兄弟は高笑い。

イナズマン「このままではバラバラにされる。」

♪チャーチャチャチャチャチャチャーン、チャチャッチャチャッン
CM
♪チャーチャチャチャチャチャチャーン、チャチャッチャチャッン

だがガイゼル総統は満足していなかった。

ガイゼル総統「まずい。まずい、まずい。」

ガイゼル総統はここから無茶苦茶なことを配下に命じるのである。

ガイゼル総統「ウデスパーα、βを合体ウデスパーにしろ!」

白衣をきたデスパー兵士はこう言った。

デスパー兵士「合体ウデスパーは未だ設計の段階です。」

だがガイゼル総統はこの答えに納得しなかった。

ガイゼル総統「みろ。二人の心がバラバラのため、クロスハリケーンの威力も半減してしまっている。このままあの二人を放っておくわけには行かん。」

イナズマンは苦しんでいたが

ウデスパーα「なぜ粉々にならん?」
ウデスパーβ「行くぞ。」
ウデスパー兄弟「超強力クロスハリケーン!」

もっと威力のある超強力クロスハリケーンというのがあったようだ。これは効いたようで、ウデスパー兄弟は高笑いしたのだが、それでもイナズマンはバラバラにならない。とそこへジシャクデスパーが走ってきた。

ジシャクデスパー「ガイゼル総統閣下からの緊急集合サインです。」
ウデスパーβ「わかった。運のいい奴だ。」
ウデスパー兄弟「ストップハリケーン

こうしてイナズマンは危機を脱した。当然、バラバラにはなっていない。

さてガイゼル総統は設計図を観ていた。

ガイゼル総統「これが合体ウデスパーか。成功すれば無敵のロボット戦士が誕生するぞ。」

ガイゼル総統は笑いが止まらなかった。さて手術室ではウデスパー兄弟はベッド(?)に拘束されていた。

ウデスパーα「はなせ。はなせ。ガイゼル総統、総統! お考え直しを。」

ウデスパーβは無言。彼は合体手術を受け入れたようだ。

デスパー兵士「ガイゼル総統のご命令です。」

なおも暴れるウデスパーαだったが、それを無視して合体手術は強行された。そして誕生したのは

合体ウデスパー(声:和田周)「ええいやー!」

ガイゼル総統ご満悦。大笑いである。

ガイゼル総統「ジシャクデスパー、お前はかねて計画の大都市空爆作戦を実行するのだ。イナズマンめを翻弄してやるのだ。」
ジシャクデスパー「わかりました。」

こうしてジシャクデスパーはイナズマンと戦ったのだが色々あって

イナズマン「よし、今だ。ゼーバーイナズマンフラッシュ!」

倒された。なおここまで荒井誠が出てこないと思うかもしれないが、荒井誠はデスパー軍団の火薬工場を陽子の助けもあって破壊していた。陽子の行動がこの話のテーマなのだが、この記事の本題とは関係ないので割愛する。上原正三さん、ごめんなさい。いつもの造成地で陽子を連れて立ち去る荒井誠を見送るイナズマンは地響きを聞いた。工事中の武蔵野線高架(稲城駅付近)を走るイナズマン。彼に襲いかかったのは合体ウデスパーである。

イナズマン「何者だ?」

合体ウデスパーはイナズマンを圧倒。イナズマンは全くはが立たない。

村越伊知郎「合体ウデスパーに苦しめられるイナズマンイナズマン危うし。」

そして次回になった。
ガイゼル総統がモニターを観ていると突如合体ウデスパーが苦しみ出した。戦闘どころではない。

ガイゼル総統「どうしたのだ?」
デスパー科学者「は。動力回路が異常に加熱しております。このままでは自爆します。」

あちゃー。設計段階なのに実装を強行したので致命的な初期故障が起きてしまったのである。

ガイゼル総統「元通りのα、βに分けろ。急げ。」
デスパー科学者「は、はあ。」

合体ウデスパーはアジトに戻された。非常に元気がない。2名のデスパー兵士に両腕を抱えられて連れてこられたが自力で歩くこともできないようだ。

ガイゼル総統「大至急、合体ウデスパーの分離手術を開始しろ。」
デスパー兵士「ディー!」

デスパー科学者も分離手術に向かおうとしたが

ガイゼル総統「待て。」

デスパー科学者は立ち止まり、振り返った。

ガイゼル総統「失敗の罪は重い。」
デスパー科学者「はあ。申し訳ございません。この失敗の原因を徹底的に突き止めて今度こそ。」
ガイゼル総統「だーめだ!!」

ガイゼル総統はデスパー科学者の答えに満足せず、続けてこう言い放った。

ガイゼル総統「過失を犯した者は責任を取る!」

ガイゼル総統はデスパー科学者を突き飛ばした。デスパー科学者は床に倒れ、最終的には何故か首チョンパの状態になってしまったのである。
こうして切り戻しが行なわれ、合体ウデスパーはウデスパーα、ウデスパーβに戻されたのであった。うーむ。ガイゼル総統にも相当に問題があるとは思うのだが独裁者ガイゼル総統閣下のご命令は絶対のものだったのである。