フィクションなどから拾う情報処理用語? その140 無作為抽出?(必殺仕掛人)

必殺仕掛人 第18話 「夢を買います恨みも買います」(脚本:國弘威雄、監督:長谷和夫 (C) 松竹)より

牛込(今の新宿区にあり、以前、フジテレビの社屋があった辺り)にある蓮華寺が胴元となっている富籤のからくりは大流行り。藤枝梅安にぞっこん(なにしろ嫉妬するとお仕置きすることさえあるし「おぎんさんは良い人だ」と言っていたと知ると大喜びするのだ。なんか私も似たような感じの憂き目にあったことがありますが気のせいなんですかねえ。)の芸者のおぎん姐さんも夢中になっていた。今回の標的は富籤絡みの仕掛けとなった。この富籤は富箱の中に入っている木札を目隠しした坊主がヤリみたいなもので突いて選ぶという仕掛け。

武宮源之丞「10人に1人は2朱が当たる仕掛けになっているのに、余程心掛けが悪かったのですね。」

これなら無作為抽出の筈なのだが、そうではなかった。富箱に仕掛けがあるようで、富箱の製作者が殺害され、彼の娘が頼み人となった。そして仕掛けを請け負った西村左内に蓮華寺の用心棒を務める武宮源之丞(近藤正臣)が富箱を前にこんな会話をしているのだ。まず左内が富箱に触りたいというので武宮は案内してやった。ここには書いていないが武宮と左内は既に会っていて、気心も知れていた。そして後でわかるが武宮は左内に共感さえ抱いていたようである。

西村左内「ほう、なるほど、これですか。」
武宮源之丞「この中から、千両の一の富が引き出される。何十万倍のうちの一枚。」

武宮は一枚の札を突いて取り出して左内に渡した。

西村左内「この札にはたくさんの人のゆえが託されていたんでしょうな。」
武宮源之丞「そう、恨みもね。」

驚いたのか左内は武宮の方を見た。

西村左内「恨みも?」
武宮源之丞「だってそうでしょう。千両は当たると思って当たらなければ誰だって恨みが残りますよ。それに第一、こういうものは胴元が儲かるようにできているんです。特に坊主丸儲けと言いましてな。」

笑う2人だったが、そこへ僧正の鉄幹(守田学哉)がやってきて、止めたので左内は戻ろうとしたのだが

西村左内「これだけ大きな箱ならば何か仕掛けができるのではないかと思いましてな。」

この直球勝負に敢えて武宮は応じてしまった。しかも僧正や他の用心棒もいる前で。

武宮源之丞「ほう、たとえば?」
西村左内「いや、それは…」
武宮源之丞「たとえば、当たり札に細工をするとか。そういう事ですか。」

僧正は流石に咎めたが武宮は笑いながら続きを話した。

武宮源之丞「そう思われても仕方がありませんよ。何せ一の富は千両。大金ですからなあ。金の恨みは恐ろしい。いや、女の恨みの方が恐ろしいですか?」

図星を刺されたが左内は武宮と笑い合った。

その帰り。西村左内は竹林(多分ロケ地は嵐山)で武宮達に襲われた。

武宮源之丞「西村さん、困ったことになった。あなたが何者かを調べて来いという事になってね。こんな事をすればするほど私達の方が怪しいという事になるんだが申し訳ありませんが、もう一度寺の方へ戻ってはいただけませんか。」

それに対する答えは

西村左内「それはよろしいが、もし断ったら。」

というや否や武宮以外の浪人は武宮の制止も聞かずに襲いかかったが一蹴され、西村左内は撤退に成功…したかに見えたのだが、水車の近くで

武宮源之丞「西村さん、私がお相手する。あまり気は進まんが、これも用心棒の仕事でしてなあ。」

というわけでしばらく斬り合ったが、やはり互角という感じ。水車が臼をつく音だけが聞こえた…と思ったら、浪人達が乱入。しかし

武宮源之丞「手を出すな。」

と浪人達を止め、自分は

武宮源之丞「やめた。俺はまだ命の方が惜しいからな。」

結局、左内は立ち去ることになった…と思ったら、武宮源之丞は西村左内と一緒におぎんのところへ行く事になった。今度は左内を同志にしようというのだ。武宮達はクーデターを考えていたのだ。だが左内はその話は乗らなかった。さらにはこう言った。

西村左内「はっきり言おう。私の仕事はあなた方の富箱を奪うこととそれに富箱を作らせた上、殺した人間を突き止めることだ。」
武宮源之丞「突き止めてどうすると言われるのかな?」
西村左内「斬る!」

この物騒なやり取りを聞いて流石におぎんも止めたのだが武宮は笑みさえ浮かべていた。そして笑った後、こんなことを言い出した。

武宮源之丞「じゃあ、西村さん、私も本当のことを言いましょう。私達は事を起こす。そのためには膨大な金が必要だ。だから、元浪人蓮華寺僧正鉄幹と図って寺社奉行に鼻薬を効かせて、あの富籤興行の許しを得ました。でもね、千両の大金ミスミス他人に渡すバカはないでしょう。だから根津片町大工利兵衛に頼んであの富籤を作らせた。」

流石に物騒な話になってきたので左内はおぎんに席を外すように頼んだが、武宮は逆に制止。凶悪なやりとりの後、おぎんは外へ出て、外にいた藤枝梅安とともに武宮が話すのを聞く羽目となった。もちろん中には西村左内がいたままである。

武宮源之丞「西村さん、お察しの通り、あの富箱はからくりだ。二の富百両までは普通の箱だが、千両からは富箱振りが箱を振ります。」

富箱を振る時に出ている木を押すと仕掛けが作動し、今まで入っていた木札の上に別の木札がとってかわるという仕掛けになっていたのだ。

武宮源之丞「あんなものに騙されるのは騙される方が悪い。それに我々にはやらねばならぬ事がある。そのために多少の手段をこうじることはやむを得ません。だからこそ、あの富箱を作った利兵衛を殺す理由が我々にはある。西村さん、利兵衛を殺したのは私だと言ったら、私を斬るかな?」

左内は無言。この後の凶悪なやり取りなどは映像で確認してほしい。なお藤枝梅安の相手は鉄幹など。最後は西村左内と武宮源之丞との斬り合いだが、そこまでの流れも大きな見どころである。