フィクションなどから拾う情報処理用語? その141 ルーティング(あまちゃん)

あまちゃん 第2週「おら、東京さ帰りたくねぇ」第8話(脚本:宮藤官九郎、演出:井上剛 (C) NHK)より

袖が浜漁協の組合長の長内六郎(でんでん)は漁協まで行こうと思って北三陸駅前(モデルは久慈駅でロケ地もそこ)に止まっていたタクシーに乗り込んだのだが、どうも様子が変。「自家使用」なる看板が前に窓ガラス越しではあるが掲示されているし、シートベルトもせずに岩手県の地図を一生懸命みている。

天野夏のナレーション「この運転手こそ、誰あろう春子の夫、つまりアキの父親なのであります。」

ここでこういう字幕が表示された。演じるのは尾身としのりだ。

アキの父親
黒川正宗

正宗は慌ててシートベルトをしたのだが

黒川正宗「お客様、漁協までは、あの、どのような道で…」

なんか怪しいこの男に六郎は呆れながらもこう言った。

長内六郎「ずーっと一本道だべ。」
黒川正宗「は、一本道ねえ。(と地図を見る)」

こんな感じでは頼りにはならないねえ。

長内六郎「6号線さ出て一本だべ。」
黒川正宗「6号線…(まだ地図を見る)」

だがこの言葉がドラマを思わぬ方向へと向かわせることになった。

長内六郎「バイパスさ出て、袖が浜方面へ曲がれば6号線だ。」
黒川正宗「(地図を見ながら)バイパスで、袖が浜を過ぎて…」

と言ったところで正宗の表情が一変。何かに気がついた様子だ。

黒川正宗「袖が浜!」
長内六郎「な、なんだよー。」

六郎にとっては馴染みのある場所で通り道に過ぎないのだが正宗にとっては重要な場所なのだ。

黒川正宗「袖が浜! 聞いたことあります?」
長内六郎「あるだろう、そりゃ。」
黒川正宗「海女さんのいるところですよねえ?」

そりゃそうだという感じで六郎は頷いた。

黒川正宗「やったあ。やっと行ける、袖が浜!」

どういうこと? 六郎は色々見て気がついた。この男は東京から来たんだ!

黒川正宗「すいません。だからお客さん、あのう、お代金はいただきませんので袖が浜まで連れてっていただけますか?」

六郎と正宗の利害が思わぬ形で一致し、結局、六郎が運転し、正宗は助手席に移って移動することになったのであった。これが思わぬ展開となるのは、六郎は未だ気づかなかったのであった。ところで漁協へ行くんじゃなかったの、六郎さん。