交換(新・必殺仕置人)

新・必殺仕置人 第23話「訴訟無用」(脚本:松原佳成、監督:高坂光幸 (C) 松竹)より

この話は脚本を書いた松原佳成会心の作だという。

さて辻屋仙蔵(入川保則)は婿養子だったが妻のみよ(北川めぐみ)盗癖の後始末などに苦慮していた。正八の絵草紙屋からもみよは勝手に絵草紙を持って行ってしまっているのだが、正八はいつも後から仙蔵から代金を受け取っているので「ありがたい」という感じ。だがそれを瓦版屋の伝次(沼田曜一)が聞きつけて辻屋に強請りに来たところから歯車が狂ってきた。

隠居の善兵ヱ(須藤健)はみよの弟の与吉(津山栄一)がもう二十歳になったので彼に店を任せ、みよを田舎、具体的には板橋の辺りに移そうという話を仙蔵にした。とりあえず「はい」と答える仙蔵だったが、奉行所へ行こうと店の外へ仙蔵が出ると伝次が待っていた。伝次は仙蔵に公事師の長十郎(城所英夫)を紹介した。

長十郎はまず、おみよに関する調書を奉行所から持ち出すことに成功し、仙蔵に渡したのだが

仙蔵「お待ちください。今ひとつ、お頼みしたいことがございます。」

そして夜になった。与吉は仙蔵からの使いで長十郎のところへやってきたのだが、そこで気絶させられてしまったのだ。そして与吉は気がついたら閉じ込められていた。

その頃、長十郎は牢屋に来ていた。明日、市中引き回しになる丑松(美鷹健児)に話をしていた。なんと長十郎の構える店は市中引き回しの経路上にあった。そこで

長十郎「そこに差し掛かったら、お前は厠へ行きたいと言え。そうすればお前は馬から降ろされる。後は私に任せておけば良い。」

なんと丑松の命を助けてやるというのだ。当然、丑松は承知した。

そして翌日。丑松は市中引き回しとなっていた。与吉は薬で眠らされてしまった。市中引き回しの様子を巳代松と正八も見ていた。そして市中引き回しの丑松が長十郎の店の前に来た、その時

丑松「お役人様。すみませんが、厠へ行かせてください。」

長十郎の計画通り、丑松は下ろされた。そして

引廻しの同心(松尾勝人)「すまんが、どなたか厠を貸してくれんかのう。」
長十郎「手前のところをお使いくださいませ。」

長十郎の計画通り、丑松は長十郎の店の中へと入っていった。その様子を仙蔵も見ていた。そして丑松は厠の中に入り、囚人服を脱ぎ、長十郎の店から出てきたのは与吉である。こうして丑松は長十郎の店で与吉と入れ替わった。

長十郎「誰一人、疑う者はいなかったでしょう。」
仙蔵「後ほどお礼に参上いたします。」

一応、疑われないように看板越しに会話が行なわれた。仙蔵は与吉の始末を長十郎に依頼したのだ。さらに伝次は丑松の女房を身売りさせて大金を得ていた。その大金で通行手形を買って丑松を逃せと長十郎は伝次に命じた。このやりとりの最中に正八は通りかかった。この時、正八は何も気づかずに仙蔵からお金を受け取った。その後、与吉は磔獄門となった。辻屋の身代は仙蔵のものになったのだ。

ところが仙蔵は長十郎から身代の半分を報酬として要求されてしまった。ここから更に歯車が狂っていった。仙蔵は何食わぬ顔をして応じる…ふりをして店に戻り、寝込んでいる隠居の善兵ヱにこう言った。

仙蔵「与吉さん、獄門晒し首になりました。」

驚く善兵ヱは起き上がった。仙蔵は市中引き回しの男を観たと言い、その男が与吉だったと言い、更に

仙蔵「公事師の長十郎と瓦版屋の伝次に謀られたのです。」

と言った。丑松と与吉を交換したことまで仙蔵は話した。ここまでは嘘は述べてはいない。だが自分の依頼だというのは隠したのだ。

かくして寅の会。

吉蔵「長十郎
伝次と死出
口惜しく
虎漫筆」

頼み料は二十両。最終的には

念仏の鉄「十二両」

で落札した。今回もおていは出ない。

そして正八がサングラスをかけて調査に乗り出した結果、最終的に仙蔵と長十郎と伝次がグルだということまで判明してしまった。店に入ったみよが伝次にはめられて簪を万引きした事にされてしまい、茅場町の大番屋に連行されてしまった。そこへ入ろうとする善兵ヱを呼び止め、正八はこう言った。

正八「辻屋の御隠居さんでしょ。あんたんとこの若奥さんねえ、あれ、はめられたんだよ。」

悪い事はできないねえ。正八の耳打ちにより、善兵ヱは全てを察した。仙蔵はおよねを追い出そうとしていたのだ。

かくして念仏の鉄のところに死神がやってきて、付句と金が追加された。付句は

念仏の鉄「辻屋仙蔵、風の灯火や」
死神「依頼人ハ同ジダ。」

長十郎と彼の店の番頭(北見唯一)は念仏の鉄が仕置。雨降る中、傘をさして巳代松は伝次を仕置。仙蔵は元御家人なので腕が立つという事で主水が斬ったのであった。