要員配置 その2(新・必殺仕置人)

新・必殺仕置人 第8話「裏切無用」(脚本:野上龍雄、監督:高坂光幸 (C) 松竹)より

というわけで念仏の鉄はかねみ屋庄次郎(五味龍太郎)殺しを競り落とした。かねみ屋の手代は殺されていたため、中村主水は同心の石部(亀石征一郎)とともにその事件を追う羽目に陥っていた。偵察に行った正八は店には庄次郎一人しかいないと言った。じゃあ、簡単な仕事だと喜ぶ巳代松だったが、念仏の鉄は浮かぬ顔。実は手代が殺されたのは警動の日。岡場所は閉まっているはずなのだが鉄はこっそり岡場所で遊んだ上に手代殺しの様子を目撃していたのだ。しかも警動の日の見回り担当は主水と石部だった。思案している最中、鉄は手代を斬った金見庄兵ヱ(伊達三郎)がかねみ屋に入って行くのを見かけた。

念仏の鉄「八丁堀、呼んでこい。」

そして絵草紙屋の地下室。

中村主水「そうか。それは良い事を教えてくれたなあ。その野郎ならかねみやの兄貴だ。」
念仏の鉄「兄貴かあ。それじゃあ、相手は侍崩れだな。」
中村主水「どうも臭えなあ、その店は。美人丹なんて仰々しい看板あげてやがるが、この江戸じゃただの一つも売っちゃいねえ。」

売ってる場所はというと

中村主水「田舎の方だ。陸奥とか但馬の山奥とか。ま、兎に角、江戸と名がついて値段がはりゃあ、馬の糞でもありがたがって飲む人里離れたところだ。」

しばらく薬の話やら頼み人の詮索の話やらが続いた後、念仏の鉄は本題に入った。

念仏の鉄「おい、八丁堀。お前、この蔵でぼやぼやしてねえでよ、早いとこ、庄兵衛とかいう浪人、召取った方が手柄になんじゃねえか?」

ところがそうは問屋が卸さなかった。

中村主水「お縄にするには証人がいらあなあ。殺しの現場を見ましたって奴がな。」

即座に

念仏の鉄「それは無茶だよ。」

主水は鉄の真意には気づかず(本当は気づいていたかもしれないが)

中村主水「何もお前を証人にするとは言ってねえや。おめえみてえな埃だらけの体叩かれたら、こっちが危なくてしょうがねえ。」

利害が一致した鉄と主水はある人物に目を向けた。

中村主水「そうだろう、正八?」
正八「なんで俺にきくの?」

しばらく考えた後、正八は鉄と主水の思惑に気がついた。

正八「冗談じゃないよ。こんなこと見ましたって申し出てみろ、そしたら警動の日に女郎とちちくりあってたのバレちゃうじゃない。」
念仏の鉄「せいぜい百叩きだ。我慢しろい。」

なおもごねる正八に

巳代松「良いじゃねえか、五両の4分の一もらえるんだから。」

だが

中村主水「違うぞ。五分の一だ。」

この正に計算外の事態に念仏の鉄も唖然とした。

巳代松「かねみ屋をやるのか、おめえ。」

主水はこう力説した。

中村主水「うん。え、町方としては、手代殺しをふん捕まえればそれで良いんだ。かねみ屋がどうなろうと俺は知ったこっちゃねえ。」

それを聞いて正八は

正八「俺は何もうんなんて言ってないよ。」

だが巳代松が竹鉄砲を向け、鉄がポキポキ鳴らすなどしたので

中村主水「よし。これで決まった。」

そして去ろうとしたのだが

中村主水「鉄、おめえなんで俺に下手人を教えてくれた?」
念仏の鉄「いや、俺、友達に親切なんだもん。」
中村主水「そうかな。庄兵衛はよっぽど腕が立つんじゃねえのか? 兄貴の方、俺が召とりゃ、後の始末は楽だからなあ。」

主水が去った後

おてい「大丈夫? そんな拗ねなくたって八丁堀、怪我すんじゃないの?」
念仏の鉄「そんな玉か、あいつが。」

さて主水は石部にかねみ屋の手代殺しの下手人が金見庄兵ヱでかねみ屋に潜伏している事を伝えた。手柄は石部に譲って自分は後方支援に回るという。早速捕り方を繰り出して出動する石部と主水、それを遠巻きに見ながら追いかける鉄達

だが鉄も主水にも計算外の事態が起きた。なんとあの闇の重六(名和宏)もかねみ屋の仲間だったのだ。屋根の上にかねみ屋、金見庄兵ヱ、さらに闇の重六がいるのを観て驚く鉄。闇の重六の投げた鉄球が石部に当たり、石部はパリーンと割れてしまった。すごい映像(?)だ。主水も唖然。巳代松も鉄も唖然。逃げる重六達を死神が見ていた。

当然、主水は奉行所で叱責を受けた。

主水の上司「南町の面目にかけても必ず捕えろ。」

これが後の主水の災難の始まりでもあった。