入社(あまちゃん)

あまちゃん 第22週「おらとママの潮騒のメモリー」第132話(脚本:宮藤官九郎、演出:吉田照幸 (C) NHK)より

純喫茶『アイドル』では鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)がスリージェープロダクション社長の天野春子(小泉今日子)、そして黒川正宗(尾身としのり)と会っていた。鈴鹿ひろ美のファンの甲斐(松尾スズキ)の様子からも後でわかるが鈴鹿ひろ美は初来店である。その用件は

鈴鹿ひろ美「ですから、スリージェープロダクションに所属させていただきたいのです。」

当然、驚くこの人達。

天野春子「鈴鹿ひろ美が!」
甲斐「(コーヒーを出していたのだが)鈴鹿ひろ美? (鈴鹿ひろ美をみて)うわあ! 鈴鹿ひろ美!!」

慌てて甲斐はカウンターへ戻った。なお正宗は目を見開いて話を聞いていた。話は続く。

鈴鹿ひろ美「はい。私、鈴鹿ひろ美、つまり、あたくしを。」

思わず春子と正宗はお互いを見合った。

天野春子「どう言うこと?」
黒川正宗「君にわからないこと、僕にきいてもわかるわけないだろう。」

そりゃそうだ。鈴鹿ひろ美が説明した。

鈴鹿ひろ美「ハートフルから独立して個人事務所でやってきたんですけど、限界感じてしまって、ずーっと探してたんです、事務所。誰かいい人いないかしらって。」

さて甲斐は『潮騒のメモリー』のシングルのジャケットを右手で磨いていた。マジックペンも用意していた。サインしてもらうためである。

天野春子「あたし、良い人じゃないですよ。」
鈴鹿ひろ美「そこが良いのよ。あなた、押しが強いでしょ。」

正宗は深く頷いた。さて甲斐は磨き終わって鈴鹿ひろ美のところへ行こうとしていた。

鈴鹿ひろ美「業界の常識や悪しき風習に正面からこう、いてまえみたいな、(正宗がまた頷く)いてこませみたいな、行ったらんかみたいな。」

おや? 誰か(太巻)に影響されたのか?

天野春子「あたし、関西人じゃないですよ。」

甲斐はカウンターを出た。以後、鈴鹿ひろ美越しに甲斐も映り、色々と表情を変えながら鈴鹿ひろ美に近づくのだが、残念ながら文章では表現しきれない。

鈴鹿ひろ美「娘をアイドルにしたじゃない。長いものにも太いものにも巻かれず、御自分の夢を娘に託して、それを貫いて。ご立派よ。」

ここでアングルが切り替わり、正宗が春子をじっと観て、春子が考えている様子が映った。春子は尋ねた。

天野春子「太巻さんは御存知なんですか?」
鈴鹿ひろ美「良いから。あたしとおんなじで限界感じてる筈だから。」

はて? そしてついに

鈴鹿ひろ美「夫としては良いけれど、仕事のパートナーとしてはとっくに切れてるの。無理無理。」

唖然として口をパクパクさせるような感じの甲斐がアップになり、同じく驚いて口を開けている正宗がアップになった後、二人の考えている事は当然違うが、

鈴鹿ひろ美「よろしくお願いします。」

これは正式には移籍ではないねえ。兎に角、鈴鹿ひろ美はスリージェープロダクション所属の女優となったのであった。

なりすまし(必殺仕置屋稼業)

必殺仕置屋稼業 第26話「一筆啓上 脅迫が見えた」(脚本:保利吉紀、監督:松野宏軌 (C) 松竹)より

今回の標的は岡っ引の弥七(山本麟一)とその子分で蔵破りを働く鉄吉(高峰圭二)。弥七達は益田屋(西川ヒノデ)の蔵を破ろうとしていた。印玄は牢に入って頼み人の富蔵(美川陽一郎)から話を聞き、その後、百叩きの刑を受けたので殺しはお休み。ところが仕置を始める段になって一騒動起きた。主水が南町奉行所で夜勤で宿直をする日になって、弥七達がその日、四つの鐘が鳴る時に仕事をした後に上方へ即座に高飛びすることがわかってしまった。紆余曲折の末(ここまでの展開は長くなるので省略)、捨三は南町奉行所に入って主水と会う事には成功したのだが、厠の中で主水が捨三にこう言った。

中村主水「よし、わかった。じゃ、俺がここへ戻ってくるまで、ちょっと臭えが、おめえ、ここで頑張ってくれ。」

え!?

捨三「冗談じゃありませんぜ。ここ?」
中村主水「しょうがねえだろ、それより。え? ましてやまだ道中だって行って小半刻はかかるぜ。それに宿直は仕事上外出は一切禁じられているんだ。さっきの奴(同心の水村(唐沢民賢)のこと)に悟られないように腹くだりがいいや。うんうんここで唸ってくれ。」
捨三「弱っちまいましたねえ。」
中村主水「俺になりすましてな。」

仕方なく、捨三は主水になりすまして「腹を下して厠でうんうん唸る」を実践し続ける羽目に陥った。主水は門番にも

中村主水「腹痛くて我慢できねえんだ。すまねえが、うち行ってきて熊の胆とってきてくんねえか。」
門番「でも門番は。」
中村主水「俺が代わりに立ってやる。」

と出まかせを言って追い払うことに成功。その隙に主水は南町奉行所を脱出した。四つの鐘が鳴った。走る主水。南町奉行所の厠では

水沢「おい、中村。どうした、中村?」

と言ったので捨三がうんうん唸る羽目に陥った。鉄吉は市松が仕置。主水が走る間、また水沢が厠へやってきた。

水沢「中村。中村。(戸を叩いた後)下痢か? (また戸を叩いた後)じゃあ、門番に言って医者、呼ばせようか。」

そんなことされたら大変だ。咄嗟に

捨三「いー。」

これを聞き

水沢「いい? あ、そうか。」

水沢は去ってなりすましがバレる危機も去った。

さて益田屋から弥七が出たところへ主水がうまい具合に駆けつけて弥七を仕置。

中村主水「俺は忙しいんだ。速く成仏するといい。」

なんとか戻った主水は捨三に

中村主水「今だ、門番いねえ。」

こうして捨三は厠、そして南町奉行所から脱出し、仕置は完了したのであった。

情報開示(あまちゃん)

あまちゃん 第22週「おらとママの潮騒のメモリー」第131話(脚本:宮藤官九郎、演出:吉田照幸 (C) NHK)より

2010年の暮れ、天野アキ(のん)は映画『潮騒のメモリー』の主題歌『潮騒のメモリー』のレコーディングに呼ばれた。その場にいたのは太巻(古田新太)、河島耕作(マギー)。スリージェープロダクションからは水口拓磨(松田龍平)の他に社長の天野春子(小泉今日子)が来ていた。Take 1が録られたが、その時、春子は歌うアキの姿が若い頃の春子(有村架純)に見えていた。太巻はレコーディングの最中なのにガラケーをいじってばかり。そして1時間後。レコーディングの結果は微妙な感じで、河島の話も上の空という感じである。この態度に春子の怒りが爆発した。

天野春子「ちょっと、何よ、さっきから。しょっちゅう時計見たりメールしたり、どうでも良い? 早く帰りたいの? 次なんか入ってるの? ふざけないでよ。」

太巻は無言。その理由は後でわかるが先へ進もう。

水口拓磨「座りましょう。」

水口はとりなしたが春子の怒りは止まらない。

天野春子「初主演映画の主題歌なのよ。一生に一度の事なのよ。アキにとって人生を左右する大事な曲です。真面目にやって。」

すると太巻は真顔で、なおかつ冷静にこう言った。

荒巻太一「それじゃあ、もう一ぺん歌ってみますか。」

アキは返事したが、太巻の真意は違っていた。

荒巻太一「アキちゃんじゃなくて社長。」

この突飛な提案に春子は驚いた。河島も呆然としていた。

荒巻太一「この歌、歌えるでしょ。」
天野春子「冗談じゃない。なんであたしが?」
荒巻太一「冗談じゃないですよ、本気ですよ。歌唱指導は我々もできますけど、この歌のお手本示せるのはあなただけでしょう。」

真相を知らない河島は「流石に、それは。」と言ったのだが

天野アキ「おらも聞きてえ。」

思わず春子はアキの方を向き、水口は「アキちゃん…」と呟いた。

天野アキ「元々、おらの原点はママが歌った『潮騒のメモリー』だ。ママの歌聞けば、何か掴めるかもしれねえべ。」

この言葉が春子の背中を押した。太巻はどうぞという感じで手をスタジオの方へ向かせ、水口も春子の方を観た。春子は決断した。なお、後でわかるが河島は置いてけ堀である。

天野春子「観て。一回だけだからね。失敗してもやり直さないから。」

アキは頷いた。そして春子は歌い始めた。そしてそれからしばらく経った時、鈴鹿ひろ美がエレベータを降りた。

島耕作「似てるなあ。鈴鹿ひろ美そっくり。」

それを聞き

水口拓磨「え!? 河島さん、ご存知なかったんすか?」
島耕作「ん? 何が?」

と同時に鈴鹿ひろ美が調整室に入ってきた。

天野アキ「ジェジェ。」

水口は太巻のところに近づいたが

荒巻太一「良いんだ、水口。俺が呼んだ。」

それを聞き、驚く水口。鈴鹿ひろ美はサングラスを外して歌う春子を観た。太巻は鈴鹿ひろ美に打ち明けた。

荒巻太一「ずっと打ち明けられないまま、時が経ってしまいました。もう、とっくに御存知だと思うのですが、歌、歌を差し替えてしまいました。」

鈴鹿ひろ美は複雑な表情。ちょうどその頃、春子は鈴鹿ひろ美がいる事に気がついたのだろう。歌うのをやめてしまった。呆然とする春子。

荒巻太一「止めてください。」

伴奏は止められた。しばらく見つめ合う鈴鹿ひろ美と天野春子。そして鈴鹿ひろ美の表情が険しいものになり、カバンを置いた後、座ってしまった。春子はヘッドホンを外した。

鈴鹿ひろ美「どうして、今更?」

アキは鈴鹿ひろ美を見ることしかできなかった。

荒巻太一「わかりません。騙し通す事もできましたし、鈴鹿さんが騙され続ける事を覚悟する事も知っています。だから、墓場まで持って行こうと思っていました。この子(天野アキ)に会うまで。」

アキは驚いた。

天野アキ「ジェ。おらが?」

天野春子はレコーディングルームから出ようとしていた。

荒巻太一「そうだよ。(水口に)お前が天野をスカウトして俺に会わせるからこういう事になったんだ。」
水口拓磨「(小声で)すいません。」
荒巻太一「もうちょっと声はれ。」
水口拓磨「すいません。てか、鈴鹿さんは知ってたんですか?」

春子は調整室の中には入れなかった。鈴鹿ひろ美は無言。

天野アキ「知ってましたよね。」

思い出すのは春子と鈴木ひろ美が初めて顔を合わせた場面。

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天野アキ「いつからですか?」

ついに鈴鹿ひろ美が口を開いた。

鈴鹿ひろ美「ん? いつ? いつかしら。そう、ずーっと前のような気もするし、今のような気もするし。」

鈴鹿ひろ美は黙ってしまい、誰も口を挟むものはいなかった。春子も呆然としていた。そしてついに春子が調整室に入ってきた。

鈴鹿ひろ美「あ、(春子を指差し)私だ。」

立ったままの春子に鈴鹿ひろ美が少しずつ歩み寄り、こう言った。

鈴鹿ひろ美「ごめんなさいね。あたしのせいで表舞台に出られなかったんですよね。(頭を下げてお辞儀して)ごめんなさい。」

しばらく呆然としていた春子は我に返ってこう言った。

天野春子「やめてください。そんなんじゃないですから。」

続けて太巻がこう言った。

荒巻太一「俺が君に声をかけなければ。」

思い出すのはタクシーでのやり取り。

荒巻太一「申し訳ない、春ちゃん。」

太巻も頭を下げた。春子は影武者だった頃を思い出していた。太巻もそうだっただろう。春子はアキに声をかけた。

天野春子「歌いなさい、アキ。ママ、歌ったよ。今度はあんたの番でしょう。早く。」

そしてアキは歌い始めた。今まで録音したものとは違って迷いがなくなったような感じだった。全員座った。鈴鹿ひろ美は春子の左隣に座っていた。アキの歌を聴きながら春子は言った。

天野春子「感謝しなくちゃ。」
鈴鹿ひろ美「え?」
天野春子「アキのおかげで鈴鹿さんに会えました。」

鈴鹿ひろ美はこう返した。

鈴鹿ひろ美「良い娘さんね。」

天野春子は笑みを浮かべた。鈴鹿ひろ美の影武者を天野春子が務めていたという情報が開示され、関係者一同の胸のつかえが落ちたのであった。河島耕作がどう思ったのかは知らないが。

懲戒処分(あまちゃん)

あまちゃん 第22週「おらとママの潮騒のメモリー」第130話(脚本:宮藤官九郎、演出:吉田照幸 (C) NHK)より

ユイ(橋本愛)からアキ(のん)に彼氏がいて、それが「板前」つまり種市(福士蒼汰)だと聞いてしまった、スリージェープロダクション社長の春子(小泉今日子)。

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東京に戻り、アキのクランクアップ後にアキのマネージャー水口(松田龍平)を物陰に連れ込んだ。階段の一番下の階の物陰の奥に水口を立たせて自分は前に立ち、水口の退路を断つ春子。

天野春子「いいから、ちょっと、メガネ外してくれる。」

そう言われてキョトンとしながらもメガネを外した水口だったが、その途端に春子に顎を掴まれてしまった。

天野春子「あなたがついててどう言うことよ。」

流石、元スケバン。顎から手を離すと矢継ぎ早にこう言った。

天野春子「わかってるよねえ。来年の夏まで恋愛禁止という条件で予備校のCM受けたよねえ、ねえ。」

そして何度も水口の「ボディー」に春子はパンチ。

水口拓磨「でも。」
天野春子「(水口の頭をはたきながら)でもじゃねえんだよ。」

この時、水口の手からメガネが床に落ちてしまった。それに気づいたかどうかはわからないが水口は続けてこう釈明した。

水口拓磨「でも、二人はプラトニックですから。神に誓って。ジッちゃんの名にかけてプラトニックですから。」

この釈明を聞いて春子が納得する筈がなく

天野春子「ジッちゃんって誰だよ、ジッちゃんって。ジッちゃんって誰だよ。」

と詰め寄った。この時、水口はメガネを踏んづけて壊してしまった。なお「ジッちゃんの名にかけて」は漫画『金田一少年の事件簿』で主人公の金田一一が言うセリフが元ネタであろう。

その後、メガネをセロテープで応急修理して無頼鮨へ行った水口は種市に

水口拓磨「と言うわけでお母さんにバレたっぽい。」
種市浩一「ジェジェ。」

と話し、さらに

水口拓磨「と言うわけで何もないプラトニックで頼むわ。」

と頼んだのだが

種市浩一「ずぶん、キスしちゃいましたけど。」

当然の事ながら

水口拓磨「聞いてねえよ。」

なお、この日は種市が初めて板場に入り、板場の修行を始めた時。梅頭は

梅頭「よそ見すんな、たね!」

と注意し

水口拓磨「調子乗ってんじゃねえぞ、この野郎、たね。」

挙げ句の果てには

梅頭「たね、たね、言われてんぞ、このたね。」

と言われてひたすら

種市浩一「すいません。」

と言わざるを得ない、たねであった。

情報漏洩 その2(あまちゃん)

あまちゃん 第22週「おらとママの潮騒のメモリー」第129話(脚本:宮藤官九郎、演出:吉田照幸 (C) NHK)より

映画『潮騒のメモリー』の主題歌『潮騒のメモリー』を誰が歌うのかについてハートフルの荒巻太一(古田新太)と河島耕作(マギー)およびスリージェープロダクションの水口拓磨(松田龍平)とで話し合いが持たれた。話の内容については割愛しよう。太巻が折衷案と称して次の案も含めたものをいくつか出して話し合われたのである。水口がやり難いと感じた事だけ書いておこう。

なおスリージェープロダクション社長の天野春子(小泉今日子)はその頃、スナック『梨明日』にいた。水口は北三陸観光協会にその案をファックスで送った。そのファックスを北三陸観光協会の職員である足立ヒロシ(小池徹平)は春子に渡した。送られて来た案を観た春子は場所を北三陸駅待合室に移して水口にガラケーで電話した。納得できない言葉が書かれていたからだ。春子が噛み付いたのは

天野アキfeat. GMT & アメ女

と書かれている部分。

水口拓磨「featuringですね。」

即座に次の字幕が挿入された。

【featuring】
特定の人物などを際立たせること
音楽では「ゲスト出演」の意味で使用

そして水口は説明した。

水口拓磨「アメ横女学園かGMTをバックに。」
天野春子「(即座に)絶対ダメよ。落ち目のアイドルと抱き合わせなんて絶対ダメ。」
水口拓磨「(困り果てて)いや、いや、でも、社長、太巻さんプロデュースって事は…」
天野春子「(即座に)巻かれない! あんなダンサー崩れの踊りヤクザに、うちの娘は死んでも巻かれない!」

水口のすぐそばには太巻と河島もいた。春子の声がガラケー越しに聞こえていた。水口は針の筵である。

天野春子「だいたいさあ、featuringとかandとかさあwithとかさあreturnsとかさあ、(ここでユイが通りかかって立ち止まってしまう)余計なもんでお腹いっぱいにするようなさあ、ラーメンライス的な発想、そういう安物の根性が気に入らないのよう。」

それが聞こえてしまい

島耕作「もういいぜ、水口。」

と言ったのだが春子の勢いは止まりそうにない。

天野春子「水口さあ、あんた、どっちの味方よ。」

ここで電話の相手は水口からこの男に替わった。水口では埒が明かないと考えたのだろう。

荒巻太一「お電話かわりました。踊りヤクザでございまーす。」

思わず春子の表情が変わったが

荒巻太一「そちらさんの言い分はようわかりました。こっちもねえ、ボランティアちゃいまんねん。年頃の娘さん、四、五十人から集めて商売してまんねん。お宅のお嬢ちゃんがなんぼになるか、もういっぺん、よう考えてみますわ。ほなな。」

電話は切れてしまった。春子が文句を言って、さらにファックスをくしゃくしゃに丸めて捨てようとした時、ユイが立ち聞きしていた事に春子は気がついた。さて、前置き(第1弾かな)が長くなってしまったが、ここからが本題(第2弾かな)とも言うべき場面である。挨拶を交わした後

天野春子「いつから?」
足立ユイ「ラーメンライスくらいから。」
天野春子「やだもう、恥ずかしい。」
足立ユイ「いえ、かっこよかったっすよ。」

その会話は元スケバン同士のものであった。さてユイの話は続いた。

足立ユイ「まあちょっと過保護って思ったけど。でもママに守られて彼氏に守られて、アキちゃん羨ましい。」

ん? 天野春子はユイが言った言葉を一字一句聞き逃してはいなかった、少なくともこの辺りまでは。

天野春子「ユイちゃん?」
足立ユイ「うちは1回捨てられたから、おかげで強くなれたけど。アキちゃん、ずっと守られてるのに強いもんね。多分、春子さんの可愛がり方が荒っぽいからだよ、きっと。」

即座に春子は尋ねた。

天野春子「彼氏?」

あ!

天野春子「聞き逃そうとしたけど、気になりすぎて、その後の話、全然、耳に入って来なかった。ねえ、何、彼氏って?」

まずい。

足立ユイ「やばい(逃げようとしたが)」
天野春子「(即座にユイを捕まえて)もう遅い。もう遅い。もう遅い。何、何、何。アキ、彼氏いんの? 彼氏いるの? 誰? 誰? 誰? 誰?」

ついにユイは観念したのか立ち止まった。

天野春子「ねえ、もしかして、板前?」
足立ユイ「板前? (気がついて)あ、板前、板前。」

話してしまった。

天野春子「冗談じゃない。契約違反。重大なペナルティーよ、これ。」

春子は水口のガラケーに電話をかけたが

天野春子「留守電、留守電。」

水口はガラケーの電源を切ってしまったらしい。大荒れ必至な展開だが、続きは映像などで御確認を。

緊急対応 その2(あまちゃん)

あまちゃん 第21週「おらたちの大逆転」第125話(脚本:宮藤官九郎、演出:梶原登城 (C) NHK)より

アキ(のん)の発言と留守番電話に残っていた記録との差異からアキが自宅で怪しい事をしている事を検知した春子(小泉今日子)は即座に水口(松田龍平)に連絡。水口は無頼鮨に種市(福士蒼汰)がいなかった事から何が起きているかを瞬時に理解。急遽予定を変更し、「スリージェープロダクション事務所」に正宗と一緒に「戻る」ことにした。そして水口は事務所外の廊下に辿り着くとガラケーで事務所に電話。

水口拓磨「もしもーし。なんで電話に出ないのかなあ。いないのかなあ。アキちゃーん。」

と言うや否や、ドアを開けて事務所に突入。

水口拓磨「あ、靴が二つありますね。」

それを聞き、即座に突入する正宗。正宗は玄関そばにある部屋のドアを小刻みにノックした。この時点で水口はまだ玄関で靴を脱いでいない。

黒川正宗「種市君、いるのはわかっているんだぞ。」

この時点で水口が靴を脱いで玄関をあがった。

水口拓磨「入るよ。入るからね。服着てなかったら待つけど。」

そこまで想定していたのである。そう言った筈なのに返事がなかったからか、即座に水口はこう言った。

水口拓磨「いいね。入るよ。」

そこはアキの部屋だったが、中には誰もいなかった。最悪の事態は避けられていたようだ。それを見て

黒川正宗「あのガキ。」

頭に血が上った状態の正宗は居間へ向かった。水口は比較的冷静である。そして正宗と水口は種市が台所で玉子焼きを作り、アキが一緒にいるところに出会した。

その後、種市が作った玉子焼きを食べようとするアキであったが

黒川正宗「ママには最終選考に備えてセリフ合わせをしていたと言うことにしておく。」

テーブルに座っているのは手前左側がアキ、手前右側が種市、そして奥の左側が正宗で水口はこの時は座っていなかった。種市はアキとは違って畏まっていた。正宗は鬼の形相で腕組みをしている。それにしてもアキは呑気すぎる。正宗は鬼の形相のまま話を続けた。

黒川正宗「いいね。」

二人とも頷いた。そこへ春子への報告を済ませた水口が戻ってきた。

水口拓磨「一応、納得してくれたみたいです。」

そして椅子に座る直前に

水口拓磨「にしても、油断も隙もねえなあ、一般男性はよう。」

アキは種市を庇うつもりだったのだろう。こう言った。

天野アキ「おらが誘ったんだ。先輩は悪ぐねえです。」
種市浩一「(小声で)アキ…」
天野アキ「女優である前に、アイドルである前に、おら、18歳の女子だ。好きな人がいて、一緒にいてえと思った。その人のために仕事がんばっぺっと思うのは悪い事か?」

腕組みしたまま水口がこう言った。

水口拓磨「いや、悪くはない。(椅子に座りながら)そして、誰にも見られない、ここを選んだ事は考えたなあと思う。(複雑な表情でチラッと正宗が水口を見た後、腕組みし直して)要するに君にとって種市君がアイドルなんだな?」
天野アキ「ああ、そうかもしんねえ。」
水口拓磨「そのアイドルにもし好きな人がいたら、どうする?」

鋭い指摘である。

天野アキ「やんだ。」
水口拓磨「そのアイドルがもし他の誰かに夢中で自分の事が見えてなかったらどうする?」

図星だったのか、アキは大声でこう言った。

天野アキ「なんだ。その設定、リアルすぎて超やんだ。」

アキは席を立ってしまった。そしてどこかへ行こうとした。

水口拓磨「ユイちゃんで経験済みだもんな。」

と水口もアキを追いかけようとして立ち上がったのだが

種市浩一「ちょっと水口さん。」

図星を刺された種市も立ち上がった。そしてアキは応接用のソファに座っていたので水口もそこへ移動しながら

水口拓磨「失恋だよ。(アキの座っているソファの反対側のソファに座って)要するにアイドルが一人の男と恋愛すると100万人のファンが失恋するんだ。それがアイドルなんだ。」

すると種市がソファにやってきてこう言った。ここから話の流れがおかしくなるのである。

種市浩一「それがどうした! 俺が一人で100万人分、幸せにしてやる! 100万倍の男になる。」

このピンボケな反論に水口は冷静にこう指摘した。

水口拓磨「うるせえし、論点ズレてる。なんだ? 100万倍の男って? バカ?」

このドラマに出てくる北三陸の人達はほぼ全員こういうバカだったねえ。

種市浩一「あ、すいません。」

ここで水口は正宗に尋ねた。

水口拓磨「どうします、お父さん?」

ところが正宗は虚をつかれたのか怪訝な顔。何か別のことを考えていたらしい。

水口拓磨「いや、黙っているから何か考えているのかなあと思って。」

ここで正宗は自分が考えていた事を話し始めた、それが水口(と春子)の考えていた事と合っているかどうかは別にして。

黒川正宗「うん。全然違うこと考えてたよ。僕と春子さんがつき合ったのはねえ…」

と言いながら、水口と入れ替わりにソファに座ろうとする正宗。種市はアキの隣に座っている。明らかに変な方向へ進みそうになったので

水口拓磨「ちょっと。全然違います。今、話すことですか?」
黒川正宗「ごめん。」

と正宗は引き返そうとしたのだが

種市浩一「聞きたいです。」

と言ったので、またソファに戻って話し始めた。水口は明らかに困惑していた。

黒川正宗「僕にとってはあ、春子さんがアイドルだったんだ。」

そして話したのは春子と出会って結婚するまでの経緯だ。

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正宗が春子のファン第1号として春子を引き留めたところまで聞き、種市は感動して泣いてしまった。

種市浩一「いや、お父さん、かっこいいなあって思いました。」

水口は呆れ顔。アキは「お父さん、かっけえんだ。」と言い、正宗も誉められて無邪気に喜んだ。握手する正宗と種市。なお正宗は右手を出したのだが、種市は両手で握っている。握りながら

種市浩一「俺なんか100万倍の男なんか言って結局、なんもしてねえなあって。玉子焼き作ったけど、もう冷めてるし。」
黒川正宗「食べようね。」

正宗が玉子焼きを取りに行くと今度はアキがこう言った。

天野アキ「そんなことねえよ、先輩。先輩もおらの事勇気づけてくれたべ。」

そして思い出したのは種市が言った、この場面。

種市浩一「ここが踏ん張りどころだぞ。一人ぼっちでつれえのはわかる。でも、今逃げちゃダメだ。海の底さいる天野に、空気送り込むの、自分しかいねえべ。」

それを正宗も聞き

黒川正宗「良いこと言うじゃないか、君。」
種市浩一「いや、言っただけで自分、何もしてねえし、なんか、応援するとか言って、家族のいる部屋さ、上がり込んで、それごそ、言ってることとやってること、全然違うし。」
黒川正宗「違って良いんだよ。言ってることも、やってる事も、どっちも本当なんだよ、それが男なんだよ。」

いつの間にか『南部ダイバーの歌』の歌のメロオケが流れ出した。アキは無邪気に玉子焼きを食べていた。正宗の言葉に励まされたのか、種市はハッとした表情。正宗と種市は意気投合したようである。水口は置いてけぼりの感じである。アキは美味いと言い、正宗は「どれどれ」と玉子焼きを口に入れる始末。ついに我慢しきれなくなった水口が口を挟んだ。

水口拓磨「お父さんも。」

それに対して

天野アキ「水口さんも先輩も喋ってねえで食え。」

水口はこう言うより他はなかった。

水口拓磨「兎に角、当分の間、会うのはお寿司屋さん(無頼鮨)だけにしてください。あと、メール。そこまでは目を瞑ります。と言うことで。」

そこまで言って玉子焼きを食べる水口であった。

ハブ(コサキン)

コサキンが帰ってきた、ポッドキャストで。

www.tbsradio.jp

今回は第15回「ムーラン・ルージュは逆○○○○○○」の『おハガキ列島』『意味ねえ夏のイベント』で紹介された、取手市アルメニアの空さんから投稿されたネタを紹介しよう。

ハブとマングースショー
バスケワールドカップの前座として沖縄で行なわれるショー。将棋連盟新会長羽生善治さんが野生のマングースと将棋を指すというイベントです。先手を取ったマングースだったが将棋盤から身を乗り出して羽生を覗き込むだけで一向に指してこない。あわや中止かと思われたが、たまたま近くにいた具志堅用高の「(この部分は小堺さんがモノマネして読んでいるのだが、何度聴いても何と言っているのかわからないし、どうせ意味ねえので省略)」の鶴の一声で対局は急展開。つぶらな瞳で王将をかじり続けているマングースの勝利が絶対視される。しかし、よく観たら羽生は52の割に中学生だったため、まさかの逆転優勝。対局後のインタビューでは『理恵は僕が藤井聡太君よりもかわいいことを知ってますから』と意味深な言葉を残し、サトウキビにむしゃぶりついたのだった。

何回も書くけど、よくもまあ、こんなくだらない文章を長々と思いつくなあと感心してしまう。ところどころ小ネタが混じっているので「わかる人だけわかればいい(伊勢志摩談)」作風なのである。