遮断設定 その4(あまちゃん)

あまちゃん 第22週「おらとママの潮騒のメモリー」第132話(脚本:宮藤官九郎、演出:吉田照幸 (C) NHK)と第23週「おら、みんなに会いでぇ!」第133話(脚本:宮藤官九郎、演出:井上剛 (C) NHK)より

足立ユイ(橋本愛)の元には次のチケットが天野アキ(のん)から届いていた。

天野アキ×GMT5 ファーストコンサート
東京EDOシアター A列13席
<日付>2011年3月12日
OPEN:18時40分 START:19時00分

アキもGMTのメンバーもレッスンに明け暮れていた。『潮騒のメモリー 』に合わせてコンサートを行なう事になったのである。まあ天野春子(小泉今日子)は妥協したのだろう。

そしてコンサート前日の3月11日。二つのAが舞台に飾られていた。天野アキからとって太巻(古田新太)が作ったものである。マネージャーの水口拓磨(松田龍平)も感慨深かった。その水口が気になっているのは

水口拓磨「ユイちゃん、明日来るんだって?」
天野アキ「んだ。8時に上野さ着くって。」

それを確認した後、安部ちゃん(片桐はいり)が作ったまめぶを3人で食べながら、水口は言った。

水口拓磨「今夜、天野の親友が上京します。」
島耕作(マギー)「え? 足立ユイちゃん?」
水口拓磨「はい。よかったら、会っていただけますか。」
荒巻太一「わかった。紹介して。」

ホッとする水口。なお種市(福士蒼汰)はコンサートに合わせて梅頭(ピエール瀧)から休みをもらっていた。

一方、北三陸。リアスにはユイを送るためなのか、大勢の人がやってきていた。小田勉(塩見三省)、磯野心平(皆川猿時)、今野あつし(菅原大吉)、今野弥生(渡辺えり)、菅原保(吹越満)、栗原しおり(安藤玉恵)、吉田正義(荒川良々)、大向大吉(杉本哲太)と言った面々。カウンターには熊谷美寿々(美保純)もいた。そこへ兄の足立ヒロシ(小池徹平)がやってきた。

足立ヒロシ「これ、西新宿のカレー屋のサービス券。あと一枚あればカレー一杯タダで食えるから。」

確かアキにもそれを渡そうとしていたのだが、ユイの答えは

足立ユイ「もう、その店ないよ。」

驚くヒロシに

足立ユイ「ネットで調べたら、とっくに潰れてた。」

その後、リアスを出たユイに父功(平泉成)と母よしえ(八木亜希子)がやってきた。通院して薬をもらいに行くところなのだという。

足立ユイ「なんか、やな感じ、みんな集まっちゃって。」

なお、天野夏(宮本信子)は自宅にいて、長内かつ枝(木野花)と長内六郎(でんでん)が天野家にいた。

小田勉「元気でな、ユイちゃん。」
足立ユイ「やめてよ、帰ってくるんだから。スムーズにバイト入れてるし。」
熊谷美寿々「辛くなったら、いつでも帰ってくるんだよ。」
足立ユイ「楽しくても水曜日に帰ります。」

そしてユイは列車に乗り、大吉も付き添う事にした。この場面からナレーションが天野アキから天野春子に替わるのだ。

天野春子のナレーション「ユイちゃんが本当に帰ってくるつもりだったのか、それとも東京で暮らす覚悟だったのか、それは誰にもわかりません。」

そして

天野春子のナレーション「それは突然やってきました。」

ユイの乗る列車は畑野トンネルの中で急停車。東京も揺れた。北三陸も揺れた。北三陸観光協会の部屋も被害が激しかったが、以後は保が作っていたジオラマを映して状況が説明される。

天野春子のナレーション「3月11日午後2時46分の時点で運行中だった北三陸鉄道リアス線の車両は2台。1台は海の方の高台で止まり、もう1台は畑野トンネルの中。乗客はユイちゃんの他に鈴木のばっぱ、親子連れが一組、部活帰りの中学生が2人。」

ユイは無事だった。

大向大吉「ごめんな、ユイちゃん。仙台さ、何時に着けば良いんだっけ?」
足立ユイ「5時半。」

大吉はガラケーで連絡をつけようとしたが

大向大吉「ダメだ、繋がんねえ。」

大吉もユイもトンネルの中で何が起きたかわからず、呆然としていた。さてアキもガラケーでユイに電話したのだが繋がらなかった。そして列車無線が繋がった。大吉が畑野トンネルにいると連絡すると吉田正義は「こちらから指示を出します。お待ちください。」と言ってきた。その間に余震が絶え間なく続いた。大吉は乗客を安心させようと声をかけたのだが

吉田正義「津波津波が来ます。大津波警報発令。避難します。」

ジオラマでその様子が映る。15:53のことだった。東京のテレビでも報じられていた。

荒巻太一「天野、お前の実家、海沿いだろう。」

端折ったが、太巻は震源地の宮城県出身の小野寺薫子(優希美青)にも労いの言葉をかけていた。安部小百合が漁協に電話を入れてみるが繋がらない。アキも天野家に電話をかけてみたが繋がらない。小野寺も実家と連絡が取れなかった。

そして16:30。

天野春子のナレーション「救助は来ない。いつまで待っても埒が明かない。ついに大吉さんは決断しました。」

大吉は乗客に告げた。

大向大吉「乗客の皆さん、あの、ちょっと、トンネルの外の状況を見てきます。ご心配なく。安全が確認できてから、皆さん、誘導しますんで、そのまま。あの、すぐ戻って来ますから、お待ちください。」

そして大吉は遠くに見える外からの光を頼りにトンネルの中を外へ向かって歩いて行った。運転士が列車のヘッドライトをつけた。大吉は『ゴーストバスターズ』の主題曲を歌いながら歩いていき、ついに外へ出た。唖然とした。後ろから誰かが歩く音が聞こえてきた。ユイである。それを察した大吉はこう叫んだ。

大向大吉「見るな。ユイちゃん。見てはダメだ。」

大吉は振り返ったのが、その時、ユイはもう外に出ていた。

足立ユイ「も、もう遅い。」

ここから映るのは実際に被災した場所を映したもの。大吉は居た堪れずに頭を下げてしまった。この状態から三陸鉄道北リアス線は復旧したのだが、その様子は

天野春子のナレーション「そこで二人が見た光景は言葉にできるものではありませんでした。」

ユイも大吉も立ちすくんでいた。

天野春子のナレーション「ただ一つ言えるのは、あの時、ブレーキをかけなければ、二人はその光景を見る事すら叶わなかったということ。もう一台の高台に停車した列車は津波の被害を逃れました。それは後に『奇跡の車両』と呼ばれ、復興のシンボルになったと。」

なお東京では小野寺の母親の安否を確認するため、河島、水口、太巻も会社に残って確認していた。そして

島耕作「小野寺、小野寺、お母さん、無事だったぞ。」

小野寺のファンがブログに書いた事により仙台の中央公民館に母親がいる事がわかったのだ。さらに

種市浩一「天野、いっそん(磯野心平)とつながったぞ。」

と知らせに来た。明るい兆しが見えたが、ユイとは未だ連絡が取れない状態。太巻は決断した。

荒巻太一「みんな、残念だが、明日のイベントは延期する。中止じゃなくて延期だ。な。だから今日は帰れる者は帰って、自宅待機。」

アキはがっくりと崩れ落ちた…のかと思ったら、机の下で

天野アキ「あった。」

アキがしていたミサンガが一本切れていたのだ。入間しおり達も歓声を挙げた。

天野アキ「大丈夫だ。みんな絶対無事だ。」

その頃、アキのガラケーには夏からメールが入っていたのであった。

それにしてもユイが東京へ行こうとすると何かが起きて行けないとはねえ。余談だが、ユイがチケットが届いたとアキと電話で話す場面、脚本では第131話の最後になっている。制作時に構成を変えたのは明らかである。