フィクションなどから拾う情報処理用語 その8 なりすまし (仮面ライダー)

仮面ライダー 第26話「恐怖のあり地獄」(脚本:伊上勝、監督:折田至、技斗:高橋一俊、(C) 石森プロ、東映)より

ここは立花レーシング倶楽部。
テレビのニュースであちこちの道路で謎の陥没事故が起きていることを報じていた。
それを五郎、立花藤兵衛、一文字隼人、そして滝和也の4名が観ていた。

立花藤兵衛「うーん。だいぶ臭うなあ。」
一文字隼人「でしょ、親父さん。」
藤兵衛「うん。」
滝「素人の調査じゃショッカーの尻尾は掴めっこねえ。」

振り返った五郎がこう言った。

五郎「わかった。そこでお二人の活躍ってわけだねえ。」

というわけで一文字隼人と滝和也…だけではなく、なんと空手初段(というだけ)のユリの3人がオートバイを走らせていた。巧みなカメラワークで誤魔化しているが、この中でオートバイの免許を持っていたのは(当時)千葉治郎のみかもしれない。それが証拠に滝和也のみがノーヘルでオートバイを運転し、滝のみオートバイをちゃんと運転する場面が映っている。それは兎に角、滝は多摩川の堤防の上に着いた。

滝「やれやれ。この辺りは何にも起こりそうもねえや。一休みするか。」

滝はオートバイから降りて伸びをしたが、それを隠しカメラが撮っているのに気づいていなかった。
そこへ一文字隼人とユリが通りかかり、オートバイを「停めた」のである。ただ3人とも上半身しか映っていないので隼人とユリが実際にオートバイを運転していたかどうかは不明である。閑話休題

滝「おう。そっちはどうだ。」
隼人「いや、ダメだ。」

先ほどの隠しカメラがまた映った。

隼人「じゃ、ドライブインでも行くか。」
滝「おう。」

3台のオートバイは発進したが素顔がわかるのは滝のみである。
オートバイが立ち去ったのを観て

赤戦闘員「イー!」

先ほどの隠しカメラを持って立ち上がった。

さてドライブインでは

ユリ「あー、うー、うーん。つまんないなあ。あたし折角スリルを味わえると思ってドッキリコンだったのにー。」

何しに来たのだろうか、この人は。呆れて一文字隼人がこう返した。

隼人「何がドッキリコンだ。何もないのが一番さ。さ、戻ろうか。」

なおもユリは不満そうだったが3人とも立ち上がった。

滝「(お金を)ここに置いとくよ。」

ウエイターがやってきて礼を述べたのだが、彼の目的はそれだけではなかった。
ウエイターは一文字隼人と滝和也がオートバイを発進させるのをしっかり観た。
佐々木剛はオートバイを運転できるようになったようである。
それに対してユリはオートバイを発進させるのに手こずっているようである。
ウエイターは隠しマイクを回収した。

さてウエイターは中に入った。すると部屋の中にはゾル大佐と(おそらく)先ほどの赤戦闘員がいた。

ウエイター「ゾル大佐。滝和也の声をテープで録音しました。」

滝の写真を手にしたゾル大佐は言う。

ゾル大佐「滝の写真。そして声。この2つが揃えば完璧だ。敵の中に味方を潜入させる。そのやり方で俺は中近東におけるショッカーの邪魔をことごとく破ってきた。この俺が日本に来た以上、必ずショッカーの敵仮面ライダーを始末。」

ただ滝が写っているのは両腕から上の部分だけ。そして滝の声は

滝の声「ここに置いとくよー。」

だけである。それだけでゾル大佐は滝和也そっくりに変装してしまった。アルセーヌ・ルパンや怪人二十面相顔負けの変装術である。余談だがゾル大佐を演じる宮口二郎は天知茂の弟子。天知茂が土曜ワイド劇場の美女シリーズで変装術を披露するのはもう少し後の話である。閑話休題

さて近くの道路が通行禁止になっていた。
そこを「滝和也」の乗るオートバイが無視して突破。
当然、その場にいた警官がパトカーと白バイで追いかけた。
「滝和也」はいつもの造成地(と思っていたけど稲城付近の採石場)までオートバイを走らせて止まった。白バイとパトカーが止まり、「滝」を捕まえようとしたが、「滝」はそのままオートバイで警官2名をはねてしまった。残りの警官2名とも「滝」は格闘。しこたま殴って倒してしまった。「滝和也」は「俺の顔をよーく観ておけ。」と顔を見せつけた。そして逃げていく「滝」を見て

警官「ちくしょう。」

と悔しがるのであった。

一方、そんなことが起きたとは知らない一文字、滝、ユリの3人。雷が鳴ったので停まった。

滝「雲行きが怪しくなったな。」
隼人「雲行きばかりじゃなさそうだぜ。」

すると

ユリ「雨が降ってきたのかと思ったら、砂よ。」
滝「ホントだ。」

そこで一文字隼人はこう言った。

隼人「滝、引き返して、向かってくる車をストップさせるんだ。」
滝「よし。」

すると

ユリ「交通整理ね。あたし一度でいいからやって見たかったんだ。かっこいいもん。」

一文字隼人の言葉が傑作である。

隼人「この呑気なお嬢さんをお連れして早く戻れ。」

それはないだろうと滝は聞いた。

滝「隼人、お前は?」
隼人「何が起きるか、この目で確かめてくる。」

こうして隼人は滝とユリと別れた。
さて滝とユリは交通整理をしていた。そこへやってきたのは先ほどのパトカーだ。

警官「君、こんなところで勝手に何をしている?」

やたらと高圧的な警官である。

ユリ「この先は危険よ。おまわりさんだって通行禁止よ。ねえ、滝さん。」
滝「この2キロ先で道路の陥没があったんです。」

滝、なぜそんなことがわかるのだ?
まあ紙面の関係で端おったが仮面ライダーが確かに地獄サンダーと戦闘をしていたのでウソはついていない、結果的には。
だが顔が傷だらけの警官は滝を見て気がついた。

警官「き、貴様!」
滝「俺…ですか!?」
別の警官「殺人および公務執行妨害で逮捕する。」

なんと逮捕令状なしで滝を連れ出そうとしていた。

ユリ「あー。」
滝「なんだよ。何すんだよ。」
警官「白々しい。とぼけてもダメだ。」
ユリ「何したって言うのよ。」
別の警官「先で我々に暴行した犯人だ。」
滝「何かの間違いだ。俺は関係ない。」
警官「黙れ。取り調べればわかる。署に連行する。」
滝「本気で俺を捕まえる気か?」
警官「抵抗するのか。」
滝「何かの間違いだ。よし。調べればわかることだ。行きましょう。」
ユリ「滝さん。」
滝「隼人に伝えてくれよな。へっちゃらだよ。」
警官「来るんだ。」

滝を乗せてパトカーは立ち去った。

ユリ「あーん、待って。あーん。」

果たして滝の運命やいかに。続きは映像で。