炎上(暗闇仕留人)
暗闇仕留人 第18話「世のためにて候」(脚本:播磨幸治、監督:倉田準二 (C) 松竹)より
第18話「世のためにて候」1974.10.26
世のため人のためを標榜し人気の瓦版、よろず評判。罪人の親族の所在を書き立て民衆を扇動し、係累を地獄のどん底に叩き落す。しかし裏では「書くぞ」と脅し大金を毟り取り、金を出さなかった者のプライバシーを暴き立てていた。そのうち、貢が得物にする「丈夫な」簪を買った小間物屋が標的となり、毅然として対応したためいいように書き立てられ店は潰れ、その後も執拗な追跡は続き遂に夫婦は自死を遂げるに至る。そして瓦版に乗せられいちばん騒いでいたおきんが、小間物屋からくすねていた櫛を頼み料として置くのだった。
ロケ地、牢にいる兄に面会後、蔦屋夫婦が聖古堂の手先に脅される、相国寺大光明寺南路地。蔦屋の婿養子が雇ったヤクザが聖古堂の主人に手を引けと迫る、中ノ島橋上~橋たもと堰堤脇。蔦屋のおゆきが聖古堂のどら息子に差し出され、のち夫婦とも自死を遂げる待合、錦水亭。仕置後、三人が佇む橋、中ノ島橋(下流側から見上げ、橋下に堰堤の落水が白く光る)。
*貢の得物が変更。ぶっとい簪を研ぎ上げたもので、喉輪を刺す。
今回の標的は瓦版屋のよろず評判である。入った情報を元に強請りたかりを働き、応じなかったものについてはスキャンダルを盛大に書き立てて民衆を煽動して表稼業で儲けるという手法で阿漕に稼ぎまくっていた。要するに炎上させて儲ける手法だ。最近のSNSでもよく見かける現象だ。
そんなある日、姿をくらませていた糸井貢が簪を物色しているのをおきんは発見。貢は丈夫な簪を物色していた。前回の事件を引きずっているようだ。その時に簪を物色した小間物屋の蔦屋がよろず評判の標的になった。婿養子の政吉(平井昌一)の義母の息子が島流しになったことをネタに弥七(上野山功一)が五百両も強請ってきたのだ。政吉はヤクザを雇って聖古堂の僭兵衛(成瀬昌彦)に強請を辞めるように迫ったが、それが火に油を注いでしまった。聖古堂はもっとつよ〜い恐い男道玄(有川正治)を差し向けてヤクザにお礼参りし、よろず評判に盛大に書き立てた。よろず評判で悪評を煽り立てられた蔦屋には群衆(貢と主水は距離を置いたがおきんと大吉は見に行く始末)が押し寄せ商売どころではならなくなり、店を閉める羽目に陥った。
それからしばらく経ったある日。政吉の義母は薬も売ってもらえなくなった事もあって死に、政吉も小さな小料理屋を開いて何とか生活を続けていた。貢は常連になっていた。だが今度は僭兵衛の息子の与之吉(伊吹剛)が政吉夫婦を見つけ出し、さらには政吉の妻おゆきを食い物にしてしまった。おゆきはそれを口にして政吉の目の前で舌を噛んで死んでしまった。
主水調べでよろず評判の悪どさもわかったこともあり、この件を仕事にすることになった。
糸井貢「どこにでもいる、仲の良い普通の夫婦だった。」
というわけで弥七を大吉がやり、与之吉と道玄を主水が斬った。そして残る僭兵衛は
和泉屋僭兵衛「なんだ、お前は。」
貢が簪でブッ刺したのだが、どうも事後の表情は得物が替わっても変わりがないような気のする複雑な感じ。
事後、三人で橋の上から川を眺めた後、大吉、主水は去っていったが、貢はいつまでも川を眺めるのであった。