ソーシャルディスタンス?(新・必殺仕置人)
新・必殺仕置人 第7話「貸借無用」(脚本:大和屋竺、監督:松野宏軌 (C) 松竹)より
脚本を担当した大和屋竺さんは浦沢義雄さんの師匠に当たる人なのだ。
さて本編。寅の会の挙句は次のとおり。
浅草や
博徒政五郎
羅漢かな
頼み料は五十両。標的は浅草に屋敷を構えるヤクザの親分の羅漢寺の政五郎(須賀不二男)で、政五郎の変態バカ息子の重吉(平野康)が犯した殺人を同心の村上兵之進(草薙幸二郎)にもみ消してもらっていて、村上殺しも付句として依頼されていた。
さてこの前段で村上に殺人の濡れ衣を着せられて捕まった仙太(松本龍幸)の姉お袖(片桐夕子)から正八が「仕置人に頼んでくれ」とたったの二両を託された話を聞いて
念仏の鉄「馬鹿野郎。バカ。」
と大声で怒るほど、政五郎は大物だった。何しろ下谷から浅草にかけて勢力に治めて百人くらいも三下がいるのだ。この後、正八は政五郎の部下にフルボッコされ、おていの機転でなんとか危機を脱する一幕があった。そんな大物がセリにかかったのだ。皆、ビビりまくって誰も競り落とそうとしなかった。
吉藏「お声ございませんか? ございませんか?」
とその時、競り落とそうとしたものがいた。
念仏の鉄「五十両!」
皆、唖然とする中
念仏の鉄「五十両。」
かくして
虎「この命、五十両にて落札。」
そして絵草紙屋の地下室。巳代松がやってきた。これで中村主水以外の全員集合。標的が政五郎と聞いて巳代松も驚いた。
念仏の鉄「嫌なら降りても良いんだぜ。」
ここで鉄が気がついた。
念仏の鉄「八丁堀の野郎、どうしたんだよ。」
その頃、中村主水は風邪をこじらせ、高熱も出ていて布団の中で寝ていた。ハナがかなり出るらしく、塵紙も枕元に大量に用意されていた。だが
中村せん「たかが風邪ぐらいで何も大袈裟な。」
と言い出し、それから母上の嫌味が炸裂。普段の昼行灯ぶりやら、仮病じゃないかとか、先代の話まで持ち出され、仕方なく主水は外出。本当に辛そうである。そして向かった先は
中村主水「俺だ。」
絵草紙屋の地下室。咳をしまくる主水。皆、遠巻きに見ているだけ。一番近いところに座っていたおていは主水がくしゃみをした時は露骨に顔を背け、ついには奥へ引っ込んだ。
主水も驚いた。
巳代松「それもたったの五十両だってよ。」
咳をした後、主水はこう言った。
おていと巳代松は顔を見合わせた。鉄の演説が始まった。
念仏の鉄「聞いたか。八丁堀はやるそうだ。まあ羅漢寺が相手で五十両は安い。ホントは初めは受ける気はなかったんだが、セリで羅漢寺の名前を聞いた途端にどいつもこいつも尻込みしやがってなあ、それ観ているうちになんとなく引き受けちまった。縄張りや百人の身内がなんだってんだ。ぶっ殺してやる。正直言って今度の仕事は俺のわがままだ。嫌だったら遠慮なくおりろ。」
巳代松も、フルボッコされた正八も、おていもやると言った。すると主水は咳が止まらなくなった。
念仏の鉄「大丈夫か、おい?」
それでも咳が止まりそうにないので
念仏の鉄「もういい、もういい、もう。もう兎に角お前は帰れ。」
というわけで主水は一旦引き上げた。
その後、正八は政五郎に仲間に入れてほしいと直訴。これが認められ、甲斐甲斐しく働きながら隅から隅まで政五郎の屋敷を偵察した後、その構造を報告。その要塞堅固ぶりに
おてい「へえ、用心深いんだねえ。」
巳代松「よっぽど肝っ玉の小さい野郎なんだなあ。」
鉄は言った。
念仏の鉄「なんか良い手はねえもんかなあ。」
すると
中村主水「俺に良い考えがあるんだ。ちょっと寄せてくれ。」
と手招きした。皆、主水のところへ集ま…ろうとしたのだが
中村主水「ヘックション!」
たちまち蜘蛛の子を散らすようにバラバラに散る「仲良し五人組」であった。