コスト回収(暗闇仕留人)

暗闇仕留人 第19話「乗せられて候」(脚本:久札秀夫と安倍徹郎、監督:松本明 (C) 松竹)より

糸井貢は研究を重ねて得物を仕込み矢立に変更し、表稼業も絵師に商売がえした。そんなある日、貢は蘭学仲間の新島欣吾(蜷川幸雄)と再会した。旧交を暖める二人。新島は裏ルート(五十両必要)でオランダへ行きたいと言う。外国へ行った者から書状も届いているという。でも着ているものでわかる通り、そんな金があるわけがない。妻の八重(三浦真弓)も悩んでいた。

その頃、中村主水は三州屋に目をつけて調べ回っていた。三州屋隆右衛門(多々良純)が抜荷をしていたのに目をつけていた。

そして貢もオランダへ渡りたいと思い始めていた。大吉の家でそのことについて話す大吉、おきん、主水。主水は貢の性格を考え、貢の思いを叶えようと思い、三洲屋を強請ることを提案。五十両の大金を得ようと考えたのである。

だが主水の屋敷に三洲屋の手の者が乱入。せんとりつは縄で縛られた上に口に紙で貼られて口封じされた上に主水は拉致され、空井戸に落とされてしまった。井戸は深くて主水が上がってこられないようになっていた。

その頃、貢は八重が身を売るのを目撃。衝撃を受けた。相手はなんと三洲屋。仲介屋は三洲屋に八重の頼み事を話していた。

仲介屋「あの女の頼みなんですがね、少しまとまったお金を前金で欲しいって言うんですよ。」
三洲屋「いくらだ?」
仲介屋「それが、五十両。」
三洲屋「五十。」

少し考え、八重を覗き見た後、

三洲屋「良いだろう。」
仲介屋「本当によろしいんですか?」
三洲屋「いいとも、いいとも。使いでもやってすぐにでも取り寄せましょう。」

雨降る中、「旅愁」も流れる中、歩く貢と事後の八重が交互に映った。

そして八重が五十両を稼いできた(ただし新島にはそれを伏せて「四谷のおじ上から借りて参りました」と言った)ので新島はオランダへ渡ることにし、貢と酒を飲んだ。

新島欣吾「お前はどうする?」
糸井貢「俺はやめたよ。」
新島欣吾「どうして?」

もちろん、八重の様子を見てしまったからだが、そんな事は言えないので貢はこう答えた。

糸井貢「俺には金持ちの親類はないしなあ。五十両の金など、この急場には間に合わん。」

そして貢は三洲屋に頼んで新島が行く事を知ったのである。嫌な予感がする貢。

新島は三洲屋へ行き、五十両を渡した。

三洲屋「ふ。また帰ってきた。」

八重に五十両出したのはそれもあったのである。儲けはないように思うが、八重の体をただ同然で堪能できたので満足だったのだろう。そんなことなど知らない新島は怪訝な顔。三洲屋は誤魔化してお茶を勧めた。そしてオランダ行きの段取りを話す三洲屋。

新島欣吾「で、船はいつ出る?」
三州屋隆右衛門「いつになる、番頭さん。」
六蔵(市原清彦)「そうですなあ。風の具合によっちゃあ、明日の夕刻にでも。」
三州屋隆右衛門「明日? ちょっと早すぎやしませんか。新島さんにも色々都合があるだろうし。」
六蔵「その後となると半年後になるので。」

と言うわけで新島は明日でも構わないと即答してしまった。

翌日の夜。

新島欣吾「八重。これは本を売って作った金だ。」

とお金を渡し、新島は三洲屋へ行った。別れを惜しむ八重。結局、三洲屋へ行ってしまった。

その頃、貢は三洲屋を強請った主水が行方不明になった話を大吉から聞いていた。ピンときた貢も三洲屋へ直行した。

そして八重と貢は観てしまった。三洲屋で新島が「国抜け」の罪で大門弥三郎(田畑猛雄)に斬られ、さらに

三州屋隆右衛門「いつもながら見事ですな。」
大門弥三郎「また五十両の金が。」
三州屋隆右衛門「いやあ、今度は女一人、ただどりにしましたでなあ。」

と言う会話も聞いてしまった。悲嘆に暮れ号泣する八重。最終的に八重は包丁で自害。

新島八重「恨みを。夫の恨みを。」

貢達はこれを仕事にする事にした。

まず大吉は六蔵を殺した。主水は古井戸にいるところを大吉に見つけられた。

中村主水「大吉か。腹減ったあ。」

そのまま大門を主水が斬った後、三洲屋を貢、主水、大吉の三人が取り囲み、最終的には貢がぶっ殺した。主水は空腹が酷く、立っているのがやっとの状態。大吉の家でお釜から直接飯を食べる主水であった。