フィクションなどから拾う情報処理用語? その37 データ圧縮 (科学戦隊ダイナマン)

実を言うと科学戦隊ダイナマンは(まさに)大人の事情もあって本放送を観ておらず、隙を突いて夏休みの再放送をたまに観ていたのでさほど知識はない。ただ、最初の放送時間は毎週土曜18:00 - 18:30(JST)で1983年4月9日放送分(第10話)から18:00 - 18:25(JST)に変更された。つまり大人の事情でデータ圧縮を余儀なくされてしまったのだ。その苦労は壮絶なものだっただろうと思う。それについて、鈴木武幸プロデューサーが自著「夢を追い続ける男」で語っているので引用しよう。

実はこの『ダイナマン』は4月から放送時間が短縮されて25分枠になったことにも苦労させられました。オープニング、エンディング、予告を除くと本編は正味18分くらいなのです。これは厳しいと、メインライターの曽田博久さんに、物語に極力影響がないような脚本にしようと相談したのですが、どうやっても影響が出るに決まっています。曽田さんもこんなに短い脚本は書いたことがないと困っていました。そこで起承転結の「承」の部分を減らして、名乗りのシーンを短くして乗り切ろうという話になったのですが、なにしろ突然の枠変更だったのでお互いに大変な思いをしました。

でもこの逆境から、よりスピーディーなアクション演出が確立したのも事実です。たとえばジャンプするにしてもきちんとひとりずつ、1、2、3、4、5人と続けてジャンプさせて各キャラクターを見せるわけです。名乗りのシーンやアクション、特撮シーンもある部分ではテンポを上げて見せることによって一気に畳み込むスーパー戦隊シリーズ独自の演出手法というのが出来上がったのがこの『ダイナマン』だったといえます。5分短いのをプラス思考に変えたことでスーパー戦隊の演出パターンが確立できたのだと思います。この25分枠は以降、14年くらい続くことになりましたが、時間枠が30分に戻ったときには逆になんだか間延びがしたような気がしてしまったものです。

でこないだ映画版のダイナマンをたまたま東映チャンネルで放送し、観たのと元々鈴木武幸プロデューサーの自著「夢を追い続ける男」を読んでいたことから思いついたネタもとい記事である。具体的なデータ圧縮のアルゴリズム(我ながら大仰な表現)は上記が全てを物語っているのだと思う。そう言う目で番組を観ると確かにそう言う作りになっているのが面白い。ただ私は未だ科学戦隊ダイナマンを全話観ているわけではないので所々つまみ食いして感じた感想に過ぎないので実際にどうなのかは映像で確認してほしい。