フィクションなどから拾う情報処理用語? その111 収賄(必殺仕置屋稼業)

必殺仕置屋稼業 第5話 「一筆啓上 幽鬼が見えた」(脚本:安倍徹郎、監督:松野宏軌 (C) 松竹)より

 

これが情報処理用語かどうかは微妙に思うかもしれないが、営業で何がしかのものを送り、それが度を過ぎてしまうと言うのもよくある話。実際、私もそう言う事例を見てしまった。もっとも、贈収賄をしていないと私は言い切れるけどね。

さて、中村家に贈り物が届いていた。同心にも来るのである。

りつ「あなた、昨日、本町の鶴屋の番頭が挨拶に見えまして、近々横山手に店を出しますので今後ともよろしくとのことでした。」

そこへやってきたのは

せん「なんですか。羊羹ですか。」

と言うわけで開けてみると

りつ「饅頭ですわ。」

すると

せん「饅頭だけですか?」

りつが確認してみると、おや、饅頭10個ずつ2種類だけ…かと思ったら、何か仕掛けがある模様。饅頭の下に大きな紙が敷かれていたのでめくってみたら、小判が2枚入っていた!

せん「気の利くこと。」

さてここからが見ものである。長くなるが書いていこう。

りつ「鶴屋は亡くなった父上の代から面倒をみてまいりましたから。」

せん「そうです。私共が安泰に暮らせるのも全て御先祖様のおかげ。婿殿、あなたも果報者ですよ。」

と白々しい言葉を聞いた中村主水は何か考えついたらしく、こう言った。

中村主水「これは、鶴屋に返しましょう。」

呆気に取られるせんとりつ。

中村主水「南町ではたとえ1両の賂を受け取っても即刻お役御免が建前です。そんな物騒なもの開けてられません。」

と閉じてしまった。

せん「婿殿。」

りつ「あなた。」

せん「人間、そう片一方では世の中は通りませんよ。人間は清濁合わせ飲むと言う大きな器がなければ出世は叶いませぬ。」

りつ「これは賂ではありません。町人の納める冥加金ではございませぬか。現に他所でもみんな…」

だが主水の決意は固かった。

中村主水「よそはよそです。南町の勤めをそう甘くみてもらっては困るなあ。」

そういえば中身には甘い饅頭が入っていた。なおこの頃の主水は甘党という設定が残っていた。おや?

中村主水「万一役所にバレたら詰腹を切らされるのはこの私だ。冗談じゃありませんよ。」

というわけで中村主水は亀吉を連れて返しに行くことにした。その道すがら

亀吉「何も突き返すことはねえと思いますがねえ。みんな適当にやっているじゃないですか。表は表、裏は裏。なんです、たった2両ぽっちの端金。」

おや?

中村主水「おめえ、これがどうして2両とわかった?」

ここぞとばかりに主水は直球勝負。これを投げられて亀吉はこう返すしかなかった。

亀吉「実はね、この旦那、鶴屋に催促したのはこのあっしなんですよ。これでも心配してるんですよ、お宅の台所まで。」

と聞くや否や主水は亀吉をぶん殴った。そして曰く

中村主水「亀吉、余計なことしやがると十手召し上げるぞ。」

これは効いたらしく

亀吉「そんな。」

ダメ押しとして主水は蹴飛ばし、

中村主水「早く行け、馬鹿野郎。」

亀吉は何故か慌てて退散した。さて中村主水は亀吉がいなくなったのを確認しつつ、後に赤井剣之介が斬られた川を渡る橋の上で何かを始めた。なお先ほどと饅頭の配置が違っていることに突っ込むのは野暮である。まず、饅頭をほとんど懐に入れ、一つだけ、茶色い饅頭を口に咥え、さらに箱からしっかり2両の小判を入手して懐に入れ、箱を川に捨てたのであった。ネコババしたのである。偉いこと抜かした割にはせこいのねえ、中村さん。