フィクションなどから拾う情報処理用語 その10 完全一致 (仮面ライダー)

仮面ライダー 第93話「8人の仮面ライダー」(脚本:伊上勝、監督:山田稔、技斗:岡田勝、(C) 石森プロ、東映)より

時は1973年の正月。
ショッカーは滅んでゲルショッカーになっていた。
だが「ショッカーからゲルショッカーに変わってもご都合主義は健在。ライダー世界を律する法則は不変であった。」と言うのは『仮面ライダー大研究』で月村了衞さんが仮面ライダー 第81話「仮面ライダーは二度死ぬ!!」(脚本:伊上勝、監督:山田稔、技斗:岡田勝、(C) 石森プロ、東映)を評して述べた言葉。
当然の事ながら作風もぶれなかった。
閑話休題

さて番組も佳境に入っていた。
ゲルショッカーと戦うアンチショッカー同盟が登場し、ショッカー首領の正体に関するテープの攻防戦が行なわれていた。アンチショッカー同盟は立花藤兵衛と滝和也に協力を求め、彼らもそれに応じて協力していた。そこにショッカーライダーが紛れ込んでいたのを、藤兵衛も滝もアンチショッカー同盟の皆さんも気づいていなかった。
ところで組織名はゲルショッカーになったのに何故「アンチショッカー同盟」だったり「ショッカー首領」だったりするのかは「ショッカーからゲルショッカーに変わってもご都合主義は健在。ライダー世界を律する法則は不変であった。」と言う名言が全てを物語っているので突っ込んではいけないお約束だ。
でショッカーライダーは仮面ライダーになりすましてアンチショッカー同盟のコンピュータで偽テープを読ませた。
するとコンピュータは爆発した。
なぜテープを読ませたら爆発するのかが謎だが「ご都合主義は健在」だからだろう。
建物の外に避難した藤兵衛、滝、アンチショッカー同盟の皆さんは「仮面ライダー」が無事かどうかを案じたが

ショッカーライダー「私は無事だ。」
藤兵衛「おう。無事だったか。」

視聴者は皆、藤兵衛がこんなことを言うのかを不審に思うかもしれないが、これも無理はないと思う。
ショッカーライダーは本郷猛と同じ声を出せる(単にアフレコで藤岡弘、が声をあてているだけだが)し、ヘルメットの色は同じ。線も2本。パッと見は本郷猛が変身した仮面ライダーに見えてしまうのだ。ただしマフラーや手袋やブーツの色は黄色だし、目も黒い縁取りが入っている。映像で見ても肩越しの後ろ姿はマフラーしか差分がないのである。部分一致して誤認してしまうのも無理はない…かもしれないねえ。

ショッカーライダー「何も知らずにスイッチを入れていれば一人残らずやられていた。」
滝「ライダー、一体、本物のコンピューターテープはどこなんだ?」

と言うや否や、その質問に意外な人物が答えた。

一文字隼人「本物はこれだ。」

滝と藤兵衛が後ろを振り向くと、そこに帽子とサングラスをかけて革ジャンを着た男がやってきた。思わずアンチショッカー同盟の木暮が言った。

木暮「あなたは。」

一文字隼人はゆっくり近づいた後、サングラスを取りながらこう言った。サングラスは不要だったのではないのか?

隼人「南米のアンチショッカー同盟が俺を選んだ。」
滝「一文字!」
藤兵衛「隼人!」

思わぬ再会に喜ぶ滝と藤兵衛。ショッカーライダーは無言だ。

隼人「正月くらいは生まれ故郷で過ごしたいんでね。」

そう。放送日は1973年1月6日である。

滝「いやあ。びっくりさせるな。」

それはショッカーライダーも同様である。
動揺を抑えるため直立不動である。
隼人、滝、藤兵衛の3人はしばらく笑った。
その後、

隼人「木暮さん、これを。」

隼人は木暮にテープが入ったトランクを渡そうとした。

木暮「ありがとう。」

その時、ショッカーライダーが割って入った。
声は本郷猛と同じままである。

ショッカーライダー「それを俺が預かろう。」

だがショッカーライダーをジッと見た一文字隼人はこう指摘した。

隼人「ライダー、いつから、そのマフラーを?」

そう、一文字隼人はショッカーライダーの姿が仮面ライダーの姿と完全一致していないことに気づいていたのである。
それを聞いて滝も藤兵衛も気づいた。

滝「そういえば。」
藤兵衛「お前、まさか。」

だが時既に遅し(?)
ショッカーライダーはトランクを奪い、逃げた。

隼人「待て!」

待てと言われて待つようなショッカーライダーではない…と思ったら滝が飛びついた。
振り返ったショッカーライダー相手に身構える一文字隼人と滝和也。
ショッカーライダーは本来の声でこう言った。

ショッカーライダー「少しばかり気づくのが遅かったぞ。一文字、はるばるの運び役、ご苦労。ショッカーライダーが頂戴したぜ。」
隼人「ショッカーライダー、それをむざむざと渡すわけにはいかん!」

果たして本物のテープはどうなるか。そしてショッカー首領の正体は判明するのか。
それは映像で確認してほしい。
「ショッカーからゲルショッカーに変わってもご都合主義は健在。ライダー世界を律する法則は不変であった。」を体現する話なのであーる。