フィクションなどから拾う情報処理用語 その14 電源 (仮面ライダーV3)

仮面ライダーV3 第48話「見た! デストロン首領の顔!!」(脚本:海堂肇、監督:折田至、(C)石森プロ、東映))より

また前回の続きになってしまうが、長くなるので細部は省略しよう。
脚本を書いた海堂肇の正体は平山亨プロデューサーと阿部征司プロデューサーである。

さて舞台は代々木の体育館。最初の東京オリンピックが催された場所である。
そこにデストロン首領がやってくるという情報を首領自身から聞いたライダーマンはV3とともに潜入したのだが、紆余曲折の末、落とし穴に落とされた。罠だったのだ。そしてV3とライダーマンはそのまま別々の部屋に閉じ込められてしまった。

ライダーマン「あ、気圧が下がる。これは。」
ヨロイ元帥「お前達の最大の弱点は空気のない状態だ。
仲間のV3のダブルタイフーンも真空では何の力も出せない。」

頭を抱えて苦しむライダーマン。V3は壁を叩いてこう言った。

V3「結城。ライダーマン。無事か。」

ライダーマンは我に返った。

ライダーマン「V3。無事か。」
V3「ライダーマン。」
ライダーマン「すまん。俺は迂闊だった。罠とは知らなかった。許してくれ。」

ライダーマン、気持ちはわかるが、大事なのはそれではなかろう。

V3「わかっている。大丈夫か?」
ライダーマン「大丈夫だ。携帯酸素ボンベがあるから、しばらくは行ける。君は。」

ライダーマンは携帯酸素ボンベを咥えた。
確かに呼吸はなんとかなるかもしれないが、露出している顔の下半分は大丈夫なのだろうか?
謎である…がそこまで考えて、この脚本を書いてはいないのだろう、多分。

V3「俺はラングの酸素で平気だが、真空ではエネルギーの補充が効かない。」

ライダーマンは携帯酸素ボンベを離して、また繰り言を言い出した。

ライダーマン「君に疑われても仕方がない。すまん。」

また咥えた。
大真面目にこういうやりとりをしているのである。

V3「ライダーマン。気を落とすな。私は君を信じているぞ。」

歴戦の勇士V3はそう言ったのだが、またライダーマンは携帯酸素ボンベを離して話し始めた。

ライダーマン「V3…」

と言うやりとりが行われている、ちょうどその頃、何故か立花藤兵衛は電気工事員に化けて代々木体育館横のマンホールを開けて地下に潜っていた。どうやってその場所を突き止めたのかは謎なのだが、まあ、それは置いといて。これは一応、後の伏線ではある。

ライダーマンの心の声「真空の中では声を出しても聞こえないが、これなら通じるはずだ。」

真空になったらしい。ライダーマンは壁を叩き始めた。

ライダーマンの心の声「酸素がなくなる。俺の右腕はドリルになっている。これを使って脱出しよう。」

そんなものがあったのなら、最初から使えば良かったと思うのだが、気が動転して出てこなかったのだろう。ライダーマンの意図をV3も理解した。モールス信号をお互いに知っていたのだろうが、ライダーマンが叩く音は単調な響きな気がするのは気のせいか? 他にもツッコミどころはあるが、兎に角、V3も壁を叩いた。

V3の心の声「頼むぞ、ライダーマン。」

その音が立花藤兵衛にも聞こえた。立花藤兵衛が壁に近づいた。
ライダーマンは右腕にドリルアームをセットして、ドリルを回そうとしたのだが…

ライダーマンの心の声「回らない! バッテリーがない!」

あっちゃあ。ライダーマンは周りを見回して電線を見つけ、なんと左手で触ったが

ライダーマンの心の声「切れてる…」

絶句した。もっとも今まで喋ってはいないが。再び、ライダーマンは壁を叩き始めた。

ライダーマンの心の声「5000Vの電気が必要だ。ここにはない。」

繰り返し書くが、これは大真面目に作っているのだ!
科学考証が適当なのは明らかだが、その知識がない人が制作したのだから仕方がない。
兎に角、ライダーマンは窮した。
V3は辺りを見回した。

V3の心の声「ここにもない!」

あったとしても役には立たないが…
だが

立花藤兵衛「5000Vか。あ。よーし。」

なーんと藤兵衛のいる所に電源スイッチがあった!
なんという奇跡だろうか。と思ったら

藤兵衛「2500Vか。2500Vじゃダメか?」

それでも藤兵衛はスパナを取り出し、壁を叩き始めた。
ライダーマンはその音に気がついた。

ライダーマンの心の声「試してみよう。」

そう。試す事が大事なのだ(そうか?)。
立花藤兵衛は線の存在に気がついた。

立花藤兵衛の心の声「細い線の片割れがそちらにないか?」

あるのである、一応。

ライダーマンの心の声「ここにもある。」

藤兵衛は頷いた。藤兵衛は線を繋いだ。
V3もライダーマンと藤兵衛のやりとりに気がついた。
ライダーマンの結線が完了した。

ライダーマンの心の声「電気、送れ。」
藤兵衛「よーし。すぐ送ってやるからなあ。」

藤兵衛の方も結線を始めた。

藤兵衛「もうすぐだ…よーし。」

スイッチオン。
ライダーマンのドリルアームのドリルが回り始めた。
5000V必要のはずなのに2500Vでも回ったのである!
名場面なので辻褄が合わないのはこの際無視しよう!

ライダーマン「あ、回った。」

ライダーマンはまずV3と自分の部屋との間に穴をあけた。

ライダーマン「今度は外だ。」

藤兵衛も穴があいたのに気がついた。
ライダーマンは倒れてしまったが

ライダーマン「空気だ。空気だぞ。V3、空気だ。」

V3の両目が点滅した。ダブルタイフーンが回転した。

V3「よし。ライダーマン。これで戦えるぞ。」

V3は壁をパンチ。壁は破れ、V3はライダーマンと合流した。

ライダーマン「パワーアーム。」

V3と一緒に外への壁を破壊。かくしてV3とライダーマンは立花藤兵衛と合流し、脱出に成功したのであった。

めでたし。めでたし。

ふと思ったのだが、最初からパワーアームを使えば良かったのではないだろうか?