フィクションなどから拾う情報処理用語? その184 インシデントの隠蔽(暗闇仕留人)

暗闇仕留人 第5話 「追われて候」(脚本:猪又憲吾、監督:田中徳三 (C) 松竹)より

「なりませぬ」が口癖(?)の妙心尼(三島ゆり子)が村雨の大吉(近藤洋介)にこんなことを言っていた。なお巷では大福講なるマルチ商法で金を騙されるものが続出していた。

妙心尼「お母様(中村せんのこと)が大福講で2両損したって言ったでしょう。」

大吉は適当に相槌を打った。

妙心尼「中村の家の井戸は少し日照りが続くと水の上がりが悪くなるの。だから、それを今年こそは掘り返そうと兄さん(中村主水のこと)の株代を削って姉さん(中村りつのこと)と2人で貯めていたものなのよ。」

それで大吉も話を理解した。

大吉「りつ姉さんに内緒で銭を使ったってことか。」

妙心尼が理由を話した。

妙心尼「あや(糸井貢の妻でりつと妙心尼の妹で病弱)に何か精のつくものでも食べさせてあげたいと思ったんですって。魔が差したのねえ、お母様。すっかりしょげちゃって誰にも言えないで困っちゃってるのよ。」

そうとは知らない中村りつ中村主水がお金を使ったと思って中村せんの前で主水を問い詰めた。主水が知るわけがない。りつがあまりにも主水をしつこく責めたので、流石の主水も怒り出した。すると

中村せん「りつ、もう良いではないですか。」
中村りつ「だって、母上。」

この後、とんでもないことをせんは言い出した。

中村せん「男には一旦外へ出れば女にはわからぬ金の使い道があるもの。」

中村主水は唖然としながらせんを見た。

中村せん「それを無理矢理問い詰めると言うのは酷と言うものです。」

涼しい顔をして言うせんに対して

中村主水「え?」

さらにこんなことまでいうのであった。

中村せん「2両のお金が主水殿のお役に立てば安いもの。そうではありませんか、りつ。のう、婿殿。」

笑うせん。りつは渋い顔をして主水を見たまま。どうすれば良いのかわからない、可哀想な主水であった。

さてこの話は更に続きがあった。事後、「大福講の元締の妻と娘が死んだそうですね」とせんは知り、主水に尋ねたのだったが

中村せん「騙された人のお金は戻ってこないのでしょうね?」
中村主水「そうですな。」
中村せん「(落胆して)そうですか。」

すると何故か主水はぼやいて独り言。

中村主水「あなた(中村せん)はたったの2両。(座り込んで)それに引き換え、私は大枚10両。」

なんと。主水も別口で買っていたのだ。そこへやってきて即座に

中村りつ「10両?」

と訊かれて

中村主水「10両もあれば、お前と母上に着物の2、3枚でも買ってやれるなあ、と、そう思っただけですよ。」

と誤魔化して、この話自体が終わったのであった。