お勤め(必殺仕置人)

必殺仕置人 第2話 「牢屋でのこす血のねがい」(脚本:國弘威雄貞永方久、監督:貞永方久 (C) 松竹)より

一応、第1話からせんとりつは登場するけれども、これは第2話でのやり取り。中村主水の登場回数自体が少ないので中村家のやり取りが登場することはもっと少なくなるのだが、後のものより凶悪になっている。

さてある日の朝。中村せんとりつは不機嫌だった。中村主水のお勤めが良くなかったからだ。

中村りつ「あなた、ご挨拶を。」
中村主水「いや、母上には先ほど。」

ところが主水は忘れていた。

中村りつ「お父上です。」

すると

中村せん「そうですか。まだ済んでないのですか。連れ合いが亡くなって三年も経つと大層婿殿も横柄になるもの。夫も草葉の陰でさぞ良い養子殿を迎えたものと。」

仕方なく

中村主水「いやあ、申し訳ございません。つい盆栽に気を取られて。」

主水は立ち上がって仏壇へ向かったのだが

中村せん「盆栽。そうですか。ご挨拶よりも盆栽の方が大事なのですね。」

チンと鳴らす音が聞こえた。主水は手を合わせたのだが

中村りつ「お父上の御存命中は少しは先祖様の御冥福も祈り、お役目に精出す方だと思っておりましたのに。全くお父上のメガネ違いでございました。」

そして食事が始まったと思ったら

中村主水「(お椀を差し出して)これは?」
中村りつ「(すまして)おすましです。」
中村せん「お豆が高くなったせいか、お味噌、お醤油、お豆腐までが5倍の値で高くなりました。ですから、当分、おすましです。」

これで納得すればよかったのだが主水の気は収まらず、余計な言葉を口に出してしまった。

中村主水「しかし、お前(りつ)もよく知ってるじゃないか。私が豆腐の味噌汁が大好物だってことを。あれをたっぷり飯にかけてしゃぶしゃぶっと。」

すると

中村りつ「おやめなさい。汚らしい。そんなことだから出世できないのです。母上もおっしゃたじゃありませんか。お豆がびっくりするほど高くなり何もかも5倍の値は高くなっているのです。あなたも5倍の上は扶持米を多く頂かないとお豆腐は食べられなくないんです。」
中村せん「それはとっても無理ですね。何しろ婿殿はずっとずっと平同心のままなんですから。」

黙って中村主水はおすましを飲むしかなかったのであった。

さて何故豆の値段が上がったのか。その理由は映像で確認してほしい。