相性(新・必殺仕置人)

新・必殺仕置人 第14話「男狩無用」(脚本:安倍徹郎、監督:渡邊祐介 (C) 松竹)より

吉原へ行ってスカンピンの念仏の鉄は正八とおていを使って、縁日で宣伝のための猿芝居を打ったのだが、客はさっぱりこなかった。

念仏の鉄「あれやると大抵、二、三人、引っかかるんだけどなあ。」

だが、その猿芝居を小夜(渡辺とく子)と志乃(戸部夕子)が観ていた。小夜は大垣藩戸田家の姫君で志乃は奥女中。小夜は志乃に命じて、鉄のところへ行かせた。その気配を察して

念仏の鉄「烏が来やがった。鴨だ。隠れろ。」

と正八とおていに言って、隠れさせた。治療かと思いきや、志乃の用件は

志乃「いいえ、治療ではございません。あの。」

何かを渡して志乃は立ち去った。

念仏の鉄「なんだ、あれ?」

と思って渡されたものを見てみると、それは手紙。

念仏の鉄「今宵戌の刻、下谷金杉戸田様下屋敷まで。他言無用。」

ニヤリと笑う鉄。二両の金が入っていたので正八とおていに分けてやった。

そして鉄が刻限に行ってみれば門番には話が通っており、すんなり中へ入ることができた。そして奥へと通され、志乃がやってきて、風呂に入れられた。そして志乃が鉄の体を洗いながらこう言った。

志乃「これからある方の夜伽を務めさせていただきます。」
念仏の鉄「夜伽?」
志乃「そうです。」
念仏の鉄「夜伽っていうと、おばさん抱いて?」
志乃「それもお役目の一つです。」
念仏の鉄「他に何か?」
志乃「お分かりにならないのですか、それくらい。」

ニヤリと笑う鉄だったが、ある事に気がつき、念の為に確かめた。

念仏の鉄「ちょっと待ってくれよ、俺は親の遺言で後ろの方はお断りしているんだよ、前だけ。ね。殿様ダメ。勘弁してよ。」

それに対する答えは

志乃「誰が殿様だと言いました。」
念仏の鉄「いや、だからさあ、え?」
志乃「お相手は御息女の小夜様です。」

喜ぶ鉄。

念仏の鉄「そうかよ。御息女かよ。そうか。」

そして体を洗った後、鉄は小夜の寝所に通された。待ちながら

念仏の鉄「(心の声)夢見てんのかなあ。話がうますぎらあ。美野大垣十万石のお姫様を。待てよ。ひょっとして身の毛のよだって人相がお化けってんじゃねえだろうなあ。何構うことはねえ。明かり消しちまえばブスもおかめも女は女だ。来たあ。」

小夜がやってきた。着物を脱ぐのを見て

念仏の鉄「(心の声)当たりだ。こいつはとんでもねえ当たりだ。」

だが寝所には志乃と新三郎(森下哲夫)もいたのだが

念仏の鉄「では、お言葉に甘えまして、未熟ながら…」

その時、鉄は二人の存在に気がついた。

念仏の鉄「なんだい、こいつら。や。これ見物がいたんじゃ気が散っちゃうなあ。なんとかなんねえかね、この二人。ああ、びっくりした。」
小夜「二人ともお下がり。」

一応、二人は出て行った。

念仏の鉄「では、精魂込めて相手になります。

そして情事が始まるのであったが、二人は部屋のそばに控えているのであった。