費用(新・必殺仕置人)

新・必殺仕置人 第12話「親切無用」(脚本:松原佳成、監督:高坂光幸 (C) 松竹)より

さて寅の会。

吉蔵「それでは、本日の挙句をご披露させていただきます。この件、二十両より競り落としていただきます。
南町
中村主水
行末や
虎漫筆」

流石に念仏の鉄の顔色が変わったのだが最終的には

念仏の鉄「十両。」

と言うわけで

虎「中村主水の命、十両にて落札。」

となった。え?

さて絵草紙屋の地下室。巳代松がやってきた。鉄の他、正八とおていが将棋を指していた。

巳代松「ごめんよ、遅くなっちまって。八丁堀まだか? 今度は誰をやるんだ?」

と無邪気に聞いた。鉄が答えた。

念仏の鉄「びっくりするなよ。驚くなよ。今度殺す相手は南町奉行所同心中村主水だ。」

驚く巳代松。鉄は将棋の駒をぐちゃぐちゃに掻き回し、将棋盤の上に十両を置いた。

念仏の鉄「どうだい、びっくりしただろ、ざまあみろ。」
巳代松「鉄、それ本気かい、おい。」
正八「仲間やっちゃうの?」

本気で鉄はこう言った。

念仏の鉄「他の奴の手で殺させようって言うのか?」

おていがこう言った。

おてい「誰かに恨み買うような悪い事やってるのかねえ、ホントに。」

巳代松は正八に鳴門屋の一件を確認した。

念仏の鉄「あの野郎、また俺達に隠れてこそこそとやりやがったな。おい、正八。お前みてえな野郎が儲けそうな話、黙って見過ごすはずがねえ。え。いくら貰った?」

正八のピンハネもばれてしまい、

念仏の鉄「八丁堀、呼んで来い。」

答えがないので

念仏の鉄「八丁堀、呼んで来い。」

仕方なく、皆、お金を分けた。

さて寺のお堂で主水を待つ一同。正八とおていは外で待ち、鉄と巳代松は中で待った。

巳代松「なあ、鉄、本気でやるつもりか。」
念仏の鉄「当たり前じゃねえか、あの野郎。」

と言った途端に何かを察した巳代松と鉄は立って移動。だが

巳代松「違うよ。」

そして二人とも元の場所に戻った。

念仏の鉄「あの野郎、ぶっ殺さなければ俺達がぶっ殺されるんだぞ、虎に。」
巳代松「だがよ、八丁堀の言い分も聞いてやろうじゃねえか。」
念仏の鉄「おい、松。」

鉄は自分の喉元に刃が突き立てられているのに気がついた。

巳代松「八丁堀。いたのかよ、お前。」

主水は鉄に刃を突き立てたままこう言った。

中村主水「おていから話は聞いたぞ。俺の命はたったの十両かい。」

鉄は何も言えない状態だ。

中村主水「俺の殺しを頼んだのは鳴門屋かい。」
念仏の鉄「ああ、聞いた、聞いた、聞いたよ、正八から。ちょっと八丁堀、これどけてくれ、冗談じゃねえぜ、危ねえじゃねえかよ。」

だが主水は刃を突き立てたままこう言い放った。

中村主水「くどくど弁解するのは俺の柄じゃねえ。だが間違った恨みで消されるのは俺は嫌だぜ。」
念仏の鉄「そうなんだよ。だからよ、だから俺も、次の寅の日までまだ日にちがあるだろうからな、それまでにお前が決着をつけるように。」

主水が刀の刃で鉄の顎をあげてしまった。これは効いた。

念仏の鉄「決着をつけなければいけないって心配してたんだよ。」

主水は刀を鉄の喉元から放すと背中を峰打ちした。しばらく睨み合う鉄と主水だったが、鉄は立ち去った。今度は主水が巳代松に刃を向けそうになったので

巳代松「よせよ。やめろよ。」

やっと主水は刀を収めた。

巳代松「わかったよ。間違った仕事はしたくねえよ。」

それにしても、このやりとり、死神は見ていなかったのだろうか? 彼は一体何をしていたのだろうか?