出勤日(新・必殺仕置人)

新・必殺仕置人 第14話「男狩無用」(脚本:安倍徹郎、監督:渡邊祐介 (C) 松竹)より

ついに寅の日の朝になったのだが、鉄は自分の家には帰ってこなかった。巳代松、正八、おていは鉄の家にいた。

正八「でもさあ、寅の会すっぽかしたら必ず殺されるよ。」
巳代松「奴が死ぬようと生きようと俺の知ったこっちゃねえよ。仕事にありつけないのが困るんだよ。これなきゃよ、これ(竹鉄砲)の火薬代払えねえだろ。」

本末転倒のような気がするが

巳代松「(正八の首をぶら下がっていた横棒で押さえつけ)どうしてくれるんだよ、おめえ。」
正八「俺に聞いたって知らないじゃない。おー、もーちょっと待ってみよう。鉄ぁんが寅の会、忘れっこないでしょう。」

正八に言っても仕方がないとは思うのだが。

さてその頃、鉄は例の戸田家の下屋敷にいて朝食を食べていた。

念仏の鉄「いやあ、実をいうとなあ、あの時、狐か狸に騙されているかと思っちった。目覚ましてみたら、田んぼの肥溜めの中だったってよ。」

盃を飲み干した後、

念仏の鉄「いやあ、極楽だなあ、極楽。極楽はあの世のものと思いしに下谷金杉にこの世にもありなんて、つい歌なんか詠んじゃったりして。」

鉄はこの日が何の日か気づかず、こう志乃(戸部夕子)に聞いた。

念仏の鉄「だけどよ、お志乃ちゃん、俺一つ、気になることがあんだけどなあ。」
志乃「なんですか。」
念仏の鉄「戸田家のお姫様ともあろうお方がなんでこんな男狂いなんか始めちまったんだ?」

だがこの問いははぐらかされた。

志乃「そんなこと聞いてどうするんです?」
念仏の鉄「どうもしねえよ。どうもしねえが気になるのが当たりめえだろ? それにあの、目つきが変なあの男だよ。なんであんな輩が、あんな奴がどうしてお姫様の寝屋にまで出入りできるんだ? こいつはおめえただ事じゃねえ。」
志乃「余計な事に口を出すんではありません。」
念仏の鉄「ただ黙って枕のお相手勤めるのも。」
志乃「それで不満ですか?」
念仏の鉄「正直言って飽きが来たなあ。ええっと、ここへ来てから、ひい、ふう、みい、よう…」

ここで鉄はある事に気がつき、聞いた。

念仏の鉄「あれ、今日、何の日? 丑の日?」
志乃「いいえ、寅です。」

ハッと我に返る鉄。

念仏の鉄「寅!」

さあ、この後どうなるのかは映像で確認してほしい。

念仏の鉄「寅!」