教え(あまちゃん)

あまちゃん 第15週「おらの仁義なき戦い」第85話(脚本:宮藤官九郎、演出:西村武五郎 (C) NHK)より

さて谷中にある合宿所には黒川正宗(尾身としのり)と小野寺さとみ(石田ひかり)が来ていた。

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そして水口に二人の親は話を始めた。国民投票には当然反対である。

水口拓磨「国民投票やめさせろとお母さん(小野寺さとみ)、ブログに書いてましたよねえ。」
黒川正宗「観てんの?」
水口拓磨「ええ。マネージャーとして当然でしょう。」

そりゃそうだ。小野寺さとみが話を続けた。

小野寺さとみ「理不尽です。こんなの体のいいリストラでねえですが。ろくな芸能活動してねえ。」
水口拓磨「なるほど。」
小野寺さとみ「未だ15歳ですよ。高校受験も控えてます。クビになったら、親子共々路頭に迷うんです。」

なおも必死さをアピールする小野寺さとみ。しばらく話すうちにこう言い出した。

小野寺さとみ「こんな中途半端な形で解雇だなんて納得いがねえ。」

すると水口はこう反論しだした。

水口拓磨「41位以下ならね。」

思わず小野寺さとみは聞き返した。それに応えて

水口拓磨「その代わり20位以内に入ればレギュラーに昇格します。」

この反論に対して

小野寺さとみ「まーさか。」

と返す母だったが水口の反論はなおも続いた。

水口拓磨「まさかってなんですか? いくら可愛い娘さんでもそこまで可愛くないと思うんですか?」

興奮した正宗は「おい!」と叫んで立ち上がったが

水口拓磨「41位以下、すなわち解雇になるという前提で抗議にいらっしゃったんですか?」

正宗はぐうの音も出なくなった。

水口拓磨「そんなの徒競走の順位を発表すんなと言ってる親と一緒じゃないですか。小学校の運動会じゃあるまいし、芸能界はそんなに甘いところじゃないんです。」

正宗は座り込んでしまった。

水口拓磨「ウチのやり方が気に食わないなら辞退してもらっても構いません。」
黒川正宗「辞退?」
水口拓磨「ええ。参加しないでください。そしたら他の子にチャンスが回りますから。」
小野寺さとみ「それは田舎さ帰れって意味ですか?」
水口拓磨「あるいは、もっと生ぬるいプロダクションで飼い殺しにされるかですね。」

小野寺さとみの心にこの言葉がグサリと突き刺さった。

水口拓磨「飼い殺しにされるかですね。」

もちろん水口の真意は違う。

水口拓磨「すいません。僕も初めはフェアじゃないと思いました。アメ女と同じ土俵と戦うのは。経験値も知名度もなさすぎる。でも、だからこそランクインしたら、『こいつ、誰?』ってなるわけですよ、ねえ。ねえ。田舎者で訛ってる無名の新人が揃って上位に食い込んだら面白いだろう、なあ、なあ。なあ。」

思わずアキは立ち上がった。

天野アキ「はい。」

それを正宗はしっかり観た。だが他のGMTのメンバーは無言。

天野アキ「あれ? ジェ。今の『はい』は合いの手だと思ってください。」

と座ってしまった。さらに

水口拓磨「わかった。じゃあ、この中から一人でも首になる奴が出たら俺も一緒にやめる。」

これは効いた。GMT全員、驚いた。

水口拓磨「責任とって、俺も解雇にしてもらう。(座って)どうですか、お母さん。6人全員40位以内に入れるように自分も死ぬ気で頑張りますから。」

小野寺さとみは無言。圧倒されたようだ。

天野アキのナレーション「知らなかった。水口さんがそこまでオラ達に賭けてたなんて。無表情でわかり辛えけど、そごそご、熱い人なんだ。」

アキが正宗と別れた後、アキは水口の部屋に入った。水口はイベントの会場を探していた。

水口拓磨「お父さんの前であんなこと言っちゃったけど、クビになって一番困るのは俺だし。」

さらに水口はこう言い出した。

水口拓磨「なんかさあ、途中から勉さんに言われたことを思い出しちゃったよ。」
天野アキ「琥珀の?」
水口拓磨「そう。琥珀の勉さん。俺の師匠。」

琥珀に興味がなかったはずの水口の部屋には琥珀があった。そして思い出すのはあの言葉。

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水口拓磨「ようやくピンと来たっていうか、俺は今、6つの原石を持ってるんだなって。それを勉さんみたいに磨いて磨いて宝石にするのが俺の仕事なんだなって。」

それを聞き

天野アキ「それ、言えば良かったのに、みんなの前で。」
水口拓磨「言えねえよ。」

水口はベッドに寝転んでこう言った。

水口拓磨「ダメだ。どこも高いわ。」

するとアキは路上でのイベントを発案。初めは否定的だった水口もアキの意見を採用するのだった。