コネ(あまちゃん)

あまちゃん 第19週「おらのハート、再点火」第111話(脚本:宮藤官九郎、演出:吉田照幸 (C) NHK)より

水口(松田龍平)がハートフルからスリージェープロダクションに転職して天野アキ(のん)のマネージャーになったものの、やはり彼の営業努力だけではアキを売り込むのには限界があった。GMT5のデビューもあり、アキは本来なら自分もメンバーとして舞台に立っているはずなのにという愚痴を春子(小泉今日子)にぶつけてしまった。アキはユイが袖が浜の駅でトンネルに向かって「アイドルになりたーい」と叫んだ事を思い出し、東京都(ただし世田谷区ではなくて港区にある)愛宕山のトンネルに向かって

天野アキ「オラもアイドルになりたいぞー。」

と叫んでいた。

さてその頃、春子は最終兵器を発動する事にした。荷物の奥に閉まっていた古ーい名刺入れを探し出して取り出す春子は帰ってきた正宗(尾身としのり)にこう言った。

天野春子「一か八か、本気出してみようか、さあ。」

正宗にはただの名刺にしか見えなかったのだが、その中身はというと

天野春子「そ。あたしに影武者やらした奴らの名刺。」

流石に正宗の顔色が変わった。

天野春子「いざという時の切り札になると思って、ぜーんぶ捨てずに取っといた。まずはこいつから。『潮騒のメモリー』のチーフディレクター。柏木誠司。」

当然、面会する場所は純喫茶『アイドル』である。

天野春子「ミレニアムレコードの制作本部長さんなんですねえ、今は。」

柏木の笑みはひきつっていた。

天野春子「ご立派になられて。」

水口も名刺を渡した。肩書きは「チーフマネージャー」である。嘘はついていない、一人しかいないから。ここから恐ろしい会話が交わされるのだ。

柏木誠司「あ、まだあ、この業界にいたんだねえ。」
天野春子「ええ。」

愛想笑いをする春子と柏木。

柏木誠司「で、どう言った御用件で?」
天野春子「私じゃなくて娘を。」
柏木誠司「娘?」

思わず横に控えているアキを見る柏木。アキは一礼した。

天野春子「アイドルになりたくて岩手から上京してきたんですよ。」
柏木誠司「歌唱力は?」
天野春子「そんなの別の人に歌わせちゃえば良いのよ!」

出たあ。これは効いた。苦笑いする柏木。

柏木誠司「冗談きついなあ。」

こんな感じでハッタリブラフ攻撃を春子はありとあらゆる人にかけまくった。彼女のセリフだけ挙げていこう。

天野春子「(対関東テレビ馬場健一郎プロデューサー)ここだけの話ですけど、柏木さんが気に入ってくれて、ミレニアムでCDデビューが決まっているんですよ。」

だの

天野春子「(対毎朝テレビ桂啓介チーフ・プロデューサー)馬場さんのところで女優デビューすることに決まってるのう。レギュラーだったら、向こう、蹴りますけど。よろしくお願いします。私が果たせなかった夢、娘に叶えて欲しいんです(と泣き出す)。」

だのと言う「復讐劇を観ているようでした(天野アキ談)」を重ねて、ついに9本くらいの仕事が入ってきたのであった。

天野春子「ざーっとこんなもんよ。演技は素人だと言ってあるしさ。」

正宗も無邪気に喜んでいた。

黒川正宗「これパパの大好きな番組。温泉周る奴。」

複雑な思いを抱くアキであった。