入社試験(あまちゃん)

あまちゃん 第19週「おらのハート、再点火」第109話(脚本:宮藤官九郎、演出:吉田照幸 (C) NHK)より

天野春子(小泉今日子)は天野アキ(のん)を所属タレントとし、黒川正宗(尾身としのり)を運転手とする会社スリジェープロダクションを立ち上げた。しかしマネージャーがいなかったので募集しては純喫茶『アイドル』で応募者と面接を繰り返していた。なお甲斐は無神経にも(?)

GMT5
デビューシングル
「地元に帰ろう」
FUTOMAKI PRODUCE

と左下隅に表示された番組をテレビで観ていた。そして更にアキと入れ替わりに入った人について

甲斐「ベロニカ(斎藤アリーナ)、熱いよねえ。山梨とブラジルのハーフなんだってさあ。地元の概念を変えたよね。」

と言い放っていた。アイドルの事しか考えていないのだろう。カウンターには水口(松田龍平)が座っているにも関わらずだ。さてテーブル席では

天野春子「では、おって連絡させていただきます。ありがとうございました。」

と応募者に告げ、応募者が出て行った後で

天野春子「はあ。覇気がないのよねえ。どいつもこいつもいい大学出てるくせにさあ。」

とほざいた。思わずアキはカウンターに座っている水口を見てしまった。そういえば水口はブラブラしているのにスーツ姿である。未だ籍はハートフルにあるようだ。アキは水口を指差したのだが

天野春子「ダメよ。」

その理由を述べようとしたらまたテレビにGMT5が映った。すると春子はカウンターに近づき、こう言った。

天野春子「すごいわねえ、GMT5。これだけスポット(CM)打つの、宣伝費いくら掛かっているのでしょうねえ。」

春子の顔は甲斐に向いているのだが、この言葉に水口が反応したようである。

天野春子「チャンネル、替えてください。」

その後、春子はテーブルに戻ったが

天野春子「一万枚売らなきゃ解散なんでしょう。油売ってていいの?」

明らかに水口に向けての言葉である。律儀に水口は訂正した。

水口拓磨「十万枚です。」
天野春子「え?」
水口拓磨「予算も十倍になりました。だから、俺なんかもう用無しなんです。」

そして水口はついに履歴書を春子に渡した。

水口拓磨「このままじゃ悔しいっす。太巻の奴を一緒に見返してやりましょう。」

しかし、その言葉に簡単に応じるような春子ではない。

水口拓磨「俺じゃダメっすか、マネージャー。」
天野春子「(即座に)ダメよ。」

その理由は

天野春子「たしかにうちとあんたは同じ敵と戦ってる。でも今、手を組んだら、こっちが引き抜いた事になっちゃうじゃない。」

となると太巻の圧力も大きくなるのは目に見えているのだ。だが水口の覚悟は本物だった。

水口拓磨「電話一本かけていいっすか。男として筋通します。」

スジですね(宇津井健談)。そんな言葉はどうでも良い。さてかけた相手が誰かと言えば

水口拓磨「もしもし。水口です。ユイちゃん、今、大丈夫?」

そう。北三陸駅待合室にいる足立ユイ(橋本愛)にかけたのだ。水口はアキと一緒にユイをデビューさせてあげられなかったことを詫びた。会社を辞める事にしたとも宣言。はっきりと「アキちゃんのマネージャーやる事にした」と宣言。もはや逃げ場は無くなった。

水口拓磨「ごめんね。元々は君を太巻さんに引き合わせてデビューさせる事が目的だったのに、こんなことになっちゃって。ホント、申し訳ない。」

ユイの返事はというと

足立ユイ「いいです、そんな。」

さて北三陸駅待合室に夏(宮本信子)もやってきた。

水口拓磨「よくないでしょ。だって、これで完全に君の夢が絶たれてしまったんだから。」

何かあるのを察した夏は立ち止まった。

足立ユイ「良いんです。とっくに諦めてるから。それよりアキちゃんのこと、よろしくお願いします。」

その答えに納得いかなかったのか水口はこう言った。

水口拓磨「僕は諦めてないよ。絶対いつかデビューさせる、アキちゃんと二人で。また『潮騒のメモリー』歌ってもらうから、お座敷列車で。いや、何なら満員電車で歌ってもらうから。その時は頼むよ。」

水口は電話を切った。帰ろうとする水口に

天野春子「合格。」

かくして水口はハートフルを退職してスリージェープロダクションに入社して、天野アキのマネージャーになったのであった。なぜか春子とアキだけでなく

甲斐「よろしくお願いします。」

と水口に言うのであった。実は甲斐が挨拶する場面は脚本には存在しない。