緊急対応 その2(あまちゃん)

あまちゃん 第21週「おらたちの大逆転」第125話(脚本:宮藤官九郎、演出:梶原登城 (C) NHK)より

アキ(のん)の発言と留守番電話に残っていた記録との差異からアキが自宅で怪しい事をしている事を検知した春子(小泉今日子)は即座に水口(松田龍平)に連絡。水口は無頼鮨に種市(福士蒼汰)がいなかった事から何が起きているかを瞬時に理解。急遽予定を変更し、「スリージェープロダクション事務所」に正宗と一緒に「戻る」ことにした。そして水口は事務所外の廊下に辿り着くとガラケーで事務所に電話。

水口拓磨「もしもーし。なんで電話に出ないのかなあ。いないのかなあ。アキちゃーん。」

と言うや否や、ドアを開けて事務所に突入。

水口拓磨「あ、靴が二つありますね。」

それを聞き、即座に突入する正宗。正宗は玄関そばにある部屋のドアを小刻みにノックした。この時点で水口はまだ玄関で靴を脱いでいない。

黒川正宗「種市君、いるのはわかっているんだぞ。」

この時点で水口が靴を脱いで玄関をあがった。

水口拓磨「入るよ。入るからね。服着てなかったら待つけど。」

そこまで想定していたのである。そう言った筈なのに返事がなかったからか、即座に水口はこう言った。

水口拓磨「いいね。入るよ。」

そこはアキの部屋だったが、中には誰もいなかった。最悪の事態は避けられていたようだ。それを見て

黒川正宗「あのガキ。」

頭に血が上った状態の正宗は居間へ向かった。水口は比較的冷静である。そして正宗と水口は種市が台所で玉子焼きを作り、アキが一緒にいるところに出会した。

その後、種市が作った玉子焼きを食べようとするアキであったが

黒川正宗「ママには最終選考に備えてセリフ合わせをしていたと言うことにしておく。」

テーブルに座っているのは手前左側がアキ、手前右側が種市、そして奥の左側が正宗で水口はこの時は座っていなかった。種市はアキとは違って畏まっていた。正宗は鬼の形相で腕組みをしている。それにしてもアキは呑気すぎる。正宗は鬼の形相のまま話を続けた。

黒川正宗「いいね。」

二人とも頷いた。そこへ春子への報告を済ませた水口が戻ってきた。

水口拓磨「一応、納得してくれたみたいです。」

そして椅子に座る直前に

水口拓磨「にしても、油断も隙もねえなあ、一般男性はよう。」

アキは種市を庇うつもりだったのだろう。こう言った。

天野アキ「おらが誘ったんだ。先輩は悪ぐねえです。」
種市浩一「(小声で)アキ…」
天野アキ「女優である前に、アイドルである前に、おら、18歳の女子だ。好きな人がいて、一緒にいてえと思った。その人のために仕事がんばっぺっと思うのは悪い事か?」

腕組みしたまま水口がこう言った。

水口拓磨「いや、悪くはない。(椅子に座りながら)そして、誰にも見られない、ここを選んだ事は考えたなあと思う。(複雑な表情でチラッと正宗が水口を見た後、腕組みし直して)要するに君にとって種市君がアイドルなんだな?」
天野アキ「ああ、そうかもしんねえ。」
水口拓磨「そのアイドルにもし好きな人がいたら、どうする?」

鋭い指摘である。

天野アキ「やんだ。」
水口拓磨「そのアイドルがもし他の誰かに夢中で自分の事が見えてなかったらどうする?」

図星だったのか、アキは大声でこう言った。

天野アキ「なんだ。その設定、リアルすぎて超やんだ。」

アキは席を立ってしまった。そしてどこかへ行こうとした。

水口拓磨「ユイちゃんで経験済みだもんな。」

と水口もアキを追いかけようとして立ち上がったのだが

種市浩一「ちょっと水口さん。」

図星を刺された種市も立ち上がった。そしてアキは応接用のソファに座っていたので水口もそこへ移動しながら

水口拓磨「失恋だよ。(アキの座っているソファの反対側のソファに座って)要するにアイドルが一人の男と恋愛すると100万人のファンが失恋するんだ。それがアイドルなんだ。」

すると種市がソファにやってきてこう言った。ここから話の流れがおかしくなるのである。

種市浩一「それがどうした! 俺が一人で100万人分、幸せにしてやる! 100万倍の男になる。」

このピンボケな反論に水口は冷静にこう指摘した。

水口拓磨「うるせえし、論点ズレてる。なんだ? 100万倍の男って? バカ?」

このドラマに出てくる北三陸の人達はほぼ全員こういうバカだったねえ。

種市浩一「あ、すいません。」

ここで水口は正宗に尋ねた。

水口拓磨「どうします、お父さん?」

ところが正宗は虚をつかれたのか怪訝な顔。何か別のことを考えていたらしい。

水口拓磨「いや、黙っているから何か考えているのかなあと思って。」

ここで正宗は自分が考えていた事を話し始めた、それが水口(と春子)の考えていた事と合っているかどうかは別にして。

黒川正宗「うん。全然違うこと考えてたよ。僕と春子さんがつき合ったのはねえ…」

と言いながら、水口と入れ替わりにソファに座ろうとする正宗。種市はアキの隣に座っている。明らかに変な方向へ進みそうになったので

水口拓磨「ちょっと。全然違います。今、話すことですか?」
黒川正宗「ごめん。」

と正宗は引き返そうとしたのだが

種市浩一「聞きたいです。」

と言ったので、またソファに戻って話し始めた。水口は明らかに困惑していた。

黒川正宗「僕にとってはあ、春子さんがアイドルだったんだ。」

そして話したのは春子と出会って結婚するまでの経緯だ。

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正宗が春子のファン第1号として春子を引き留めたところまで聞き、種市は感動して泣いてしまった。

種市浩一「いや、お父さん、かっこいいなあって思いました。」

水口は呆れ顔。アキは「お父さん、かっけえんだ。」と言い、正宗も誉められて無邪気に喜んだ。握手する正宗と種市。なお正宗は右手を出したのだが、種市は両手で握っている。握りながら

種市浩一「俺なんか100万倍の男なんか言って結局、なんもしてねえなあって。玉子焼き作ったけど、もう冷めてるし。」
黒川正宗「食べようね。」

正宗が玉子焼きを取りに行くと今度はアキがこう言った。

天野アキ「そんなことねえよ、先輩。先輩もおらの事勇気づけてくれたべ。」

そして思い出したのは種市が言った、この場面。

種市浩一「ここが踏ん張りどころだぞ。一人ぼっちでつれえのはわかる。でも、今逃げちゃダメだ。海の底さいる天野に、空気送り込むの、自分しかいねえべ。」

それを正宗も聞き

黒川正宗「良いこと言うじゃないか、君。」
種市浩一「いや、言っただけで自分、何もしてねえし、なんか、応援するとか言って、家族のいる部屋さ、上がり込んで、それごそ、言ってることとやってること、全然違うし。」
黒川正宗「違って良いんだよ。言ってることも、やってる事も、どっちも本当なんだよ、それが男なんだよ。」

いつの間にか『南部ダイバーの歌』の歌のメロオケが流れ出した。アキは無邪気に玉子焼きを食べていた。正宗の言葉に励まされたのか、種市はハッとした表情。正宗と種市は意気投合したようである。水口は置いてけぼりの感じである。アキは美味いと言い、正宗は「どれどれ」と玉子焼きを口に入れる始末。ついに我慢しきれなくなった水口が口を挟んだ。

水口拓磨「お父さんも。」

それに対して

天野アキ「水口さんも先輩も喋ってねえで食え。」

水口はこう言うより他はなかった。

水口拓磨「兎に角、当分の間、会うのはお寿司屋さん(無頼鮨)だけにしてください。あと、メール。そこまでは目を瞑ります。と言うことで。」

そこまで言って玉子焼きを食べる水口であった。