情報漏洩 その2(あまちゃん)

あまちゃん 第22週「おらとママの潮騒のメモリー」第129話(脚本:宮藤官九郎、演出:吉田照幸 (C) NHK)より

映画『潮騒のメモリー』の主題歌『潮騒のメモリー』を誰が歌うのかについてハートフルの荒巻太一(古田新太)と河島耕作(マギー)およびスリージェープロダクションの水口拓磨(松田龍平)とで話し合いが持たれた。話の内容については割愛しよう。太巻が折衷案と称して次の案も含めたものをいくつか出して話し合われたのである。水口がやり難いと感じた事だけ書いておこう。

なおスリージェープロダクション社長の天野春子(小泉今日子)はその頃、スナック『梨明日』にいた。水口は北三陸観光協会にその案をファックスで送った。そのファックスを北三陸観光協会の職員である足立ヒロシ(小池徹平)は春子に渡した。送られて来た案を観た春子は場所を北三陸駅待合室に移して水口にガラケーで電話した。納得できない言葉が書かれていたからだ。春子が噛み付いたのは

天野アキfeat. GMT & アメ女

と書かれている部分。

水口拓磨「featuringですね。」

即座に次の字幕が挿入された。

【featuring】
特定の人物などを際立たせること
音楽では「ゲスト出演」の意味で使用

そして水口は説明した。

水口拓磨「アメ横女学園かGMTをバックに。」
天野春子「(即座に)絶対ダメよ。落ち目のアイドルと抱き合わせなんて絶対ダメ。」
水口拓磨「(困り果てて)いや、いや、でも、社長、太巻さんプロデュースって事は…」
天野春子「(即座に)巻かれない! あんなダンサー崩れの踊りヤクザに、うちの娘は死んでも巻かれない!」

水口のすぐそばには太巻と河島もいた。春子の声がガラケー越しに聞こえていた。水口は針の筵である。

天野春子「だいたいさあ、featuringとかandとかさあwithとかさあreturnsとかさあ、(ここでユイが通りかかって立ち止まってしまう)余計なもんでお腹いっぱいにするようなさあ、ラーメンライス的な発想、そういう安物の根性が気に入らないのよう。」

それが聞こえてしまい

島耕作「もういいぜ、水口。」

と言ったのだが春子の勢いは止まりそうにない。

天野春子「水口さあ、あんた、どっちの味方よ。」

ここで電話の相手は水口からこの男に替わった。水口では埒が明かないと考えたのだろう。

荒巻太一「お電話かわりました。踊りヤクザでございまーす。」

思わず春子の表情が変わったが

荒巻太一「そちらさんの言い分はようわかりました。こっちもねえ、ボランティアちゃいまんねん。年頃の娘さん、四、五十人から集めて商売してまんねん。お宅のお嬢ちゃんがなんぼになるか、もういっぺん、よう考えてみますわ。ほなな。」

電話は切れてしまった。春子が文句を言って、さらにファックスをくしゃくしゃに丸めて捨てようとした時、ユイが立ち聞きしていた事に春子は気がついた。さて、前置き(第1弾かな)が長くなってしまったが、ここからが本題(第2弾かな)とも言うべき場面である。挨拶を交わした後

天野春子「いつから?」
足立ユイ「ラーメンライスくらいから。」
天野春子「やだもう、恥ずかしい。」
足立ユイ「いえ、かっこよかったっすよ。」

その会話は元スケバン同士のものであった。さてユイの話は続いた。

足立ユイ「まあちょっと過保護って思ったけど。でもママに守られて彼氏に守られて、アキちゃん羨ましい。」

ん? 天野春子はユイが言った言葉を一字一句聞き逃してはいなかった、少なくともこの辺りまでは。

天野春子「ユイちゃん?」
足立ユイ「うちは1回捨てられたから、おかげで強くなれたけど。アキちゃん、ずっと守られてるのに強いもんね。多分、春子さんの可愛がり方が荒っぽいからだよ、きっと。」

即座に春子は尋ねた。

天野春子「彼氏?」

あ!

天野春子「聞き逃そうとしたけど、気になりすぎて、その後の話、全然、耳に入って来なかった。ねえ、何、彼氏って?」

まずい。

足立ユイ「やばい(逃げようとしたが)」
天野春子「(即座にユイを捕まえて)もう遅い。もう遅い。もう遅い。何、何、何。アキ、彼氏いんの? 彼氏いるの? 誰? 誰? 誰? 誰?」

ついにユイは観念したのか立ち止まった。

天野春子「ねえ、もしかして、板前?」
足立ユイ「板前? (気がついて)あ、板前、板前。」

話してしまった。

天野春子「冗談じゃない。契約違反。重大なペナルティーよ、これ。」

春子は水口のガラケーに電話をかけたが

天野春子「留守電、留守電。」

水口はガラケーの電源を切ってしまったらしい。大荒れ必至な展開だが、続きは映像などで御確認を。