ドキュメント(あまちゃん)

あまちゃん 第18週「おら、地元に帰ろう!?」第106,107,108話(脚本:宮藤官九郎、演出:井上剛 (C) NHK)より

太巻(古田新太)には密着取材がついていた。後日、その取材内容は『ドキュメントA』という番組として放送された。その内容を簡単に書こう。我ながら狡いタイトルだが、こうなっているから仕方がない。その番組の…ナレーターは…田口トモロヲ…だったので…『プロジェクトX』が…元ネタだと…思うかもしれないが…作風は明らかに…『仕事の流儀』…が元ネタである。

さて太巻はGMT5のために自分が作詞作曲した曲「地元に帰ろう」のレコーディングに「立ち会って」変更を加えた。その変更内容とは

A.H.さん「こんなのうちの娘の声じゃないもの。」

つまり、天野アキ(のん)の部分だけ「音声を変えて」いたのである。番組では「*プライバシー保護のため」顔をぼやかして更に「音声を変えています」という措置が取られて抗議する天野春子(小泉今日子)の姿が流された。

田口トモロヲ「スタッフに緊張が走った。」

取材クルーが入っていることに気がついた春子はサングラスをかけて顔を隠したが、この部分が使われたかどうかはわからない。最終的にこの部分の処理が引き金となり、自分の過去(鈴鹿ひろみ(薬師丸ひろ子)の代役を務めた)件も持ち出し

天野春子「歌番組、どうするの? 得意の口パクですか?」

と言う恐ろしい言葉も飛び出して

天野春子「うちの娘を鈴鹿ひろみと一緒にしない!」
荒巻太一「(取材クルーに)止めろ、止めろ、止めろ。」

と言う戦慄すべきやりとりが飛び出し、ここから先は放送されていないに違いないのだが、無視して話を続けよう。

荒巻太一「(取材クルーに)今の絶対、使うな!」

と厳命する事態となり入間しおり(松岡茉優)がアキに

入間しおり「鈴鹿ひろみって何? どういう事?」

と尋ねたが答えられるわけもなく

荒巻太一「この女、素人が土足で現場にズカズカと入ってきて偉そうに。慈善事業ちゃいまんねん。商売やってまんねん。どうせ売れんもんに要らん金使いたくないねん。」

この言葉を聞いた入間しおりは衝撃を受けたが

荒巻太一「売れへんよ。はっきり言ってGMTは企画倒れ。せやからこうやってテレビ使うて(ここで水口(松田龍平)の表情が凍りつく)回収できるところから回収しとんねん。君らみたいのもんが、デビューできるだけでもありがたいと、せめて親御さんには思うてもらわんとな。」

関西人が聞いたら怒るでえ、この乱暴な口調。その結果

天野春子「(アキに)帰るね。」

と驚愕の事態へと発展してしまった。両者とも引っ込みがつかなくなったのだろう。春子はアキを辞めさせることまで口に出し

天野春子「どこまで器ちっちゃいの。普通にやって普通に売れるもの作りなさいよ。」

やはり脳裏に浮かんだのは昔の自分の姿である。荒巻もそうだったのかもしれないが。アキを連れ出す春子。それを追いかけるGMTのメンバー、そして水口。最初、帰るのを拒否したアキだったが、GMTのメンバーの慰留の言葉を聞くうちに春子の真意を悟り、

天野春子「あんたが自分の娘でなければこういう形でもいいのかもしれない。でもママ、嫌なの。どうしても許せないの。」

それを聞き、アキは辞めることを決断。

天野アキ「太巻さんさ、伝えてけろ。オラは今日で辞めるが頼みがある。GMTのデビューは取り消さないでけろ。オラのせいでみんながデビューできないのは困る。悲しい。ただでさえ一回流れてるし。頼む。みんなを見捨てねえでやってけろ。早く奈落から外さ出してやってけろ。」

水口は無言でそれを聞いた。

天野アキ「元々オラは40位の繰り上げ当選だ。オラの代わりなんてなんぼでもいるで。」

なおも水口は無言。実は違う意見だというのが後でわかるが、先へ進もう。

天野アキ「頼む。(土下座して)この通りだ。GMTデビューさせてやってけろ。」

春子も衝撃を受ける中

水口琢磨「わかった。伝えておく。」

そしてアキは春子に連れられて立ち去った。

だが話はこれで終わりではない。

天野アキのナレーション「そして水口さんはオラの伝言を伝えに行き」

事務所に入った。ここからは『ドキュメントA』で流れたようだ。さて荒巻と河島(マギー)がアキの代わりを探している最中で色々な人に関する書類を手にしていたが

水口琢磨「天野の代わりはいません。」

と断言してしまった。荒巻の表情が変わった。

水口琢磨「ビジネスとしての意見です。天野がいなかったらGMTは売れません。そんなこともわからないんでしたら、社長、ちょ、ちょっと勘が鈍ったんじゃないんですか。」

すると荒巻はこう反論した。

荒巻太一「絶対だな。」
水口拓磨「はい。」

荒巻は身を乗り出して水口のネクタイを掴もうとしたのだが、水口がそれを察して少し後ろに下がったので荒巻の右手は虚しく何度も空を切った。そして

荒巻太一「おし、カメラ回せ。」

ここから荒巻の演説が始まった。

荒巻太一「天野がいなかったら、絶対、売れないんだな。」
水口拓磨「はい。」
荒巻太一「絶対か!」
水口拓磨「(カメラを気にした後)絶対です。」
荒巻太一「面白い。わかった。じゃあ、俺が売ってやるよ、GMT。俺が本気出したら一万じゃ済まない。十万枚売ってやるよ、水口。(水口の表情が凍りついた後)お前如きが俺にビジネス語るとは。目にもの見せてくれるわ。」

というわけでCDは予定通り発売されることになった。歌は差し替えられないのでアキの声はそのまま。それを純喫茶アイドルで水口から聞き

天野アキの心の声「声だけか。ママと一緒だ。」

ちなみにこの話をしている頃、水口は自らの去就を迷っていたのであった。