取り違え(あまちゃん)

あまちゃん 第21週「おらたちの大逆転」第123,124話(脚本:宮藤官九郎、演出:梶原登城 (C) NHK)より

潮騒のメモリー』の主役オーディションの二次選考にアキ(のん)は臨んでいた。明らかに前のめりの鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)に対して太巻こと荒巻太一(古田新太)は小野寺薫子(優希美青)を残したがっていたのだが、鈴鹿ひろ美の演技指導(だと思う)に合わせてアキが言うのを観ていた太巻はアキの姿がこう見えていた。

天野春子(有村架純)「母ちゃん、私、しんすけさんが好き。だから島を出ます。」

隣を観ると

鈴鹿ひろ美「好きにすりゃ良いべ。さっさと行げ。」

そして前を見直すと

天野春子「親不孝ばかりでごめんなさい。」

飛び出す「春子」を見て思わず太巻は立ち上がり

荒巻太一「ちょっと待って。」

と叫んでいた。だが「春子」はそのまま出て行った。呆然とする太巻。鈴鹿ひろ美が左を観ると太巻は呆然として立ち尽くしていた。

鈴鹿ひろ美「監督。」

これで太巻は我に返った。観たのは幻影だったらしい。太巻は取り繕ってこう言った。

荒巻太一「良いんじゃないですか。」

そして選考結果を決める段取りになった。天野アキを残そうという声が他の選考者からあがった。

島耕作(マギー)「監督!」

そう言われた太巻は、また選考中の事を思い出し、立ち上がりながらこう言った。

荒巻太一「ちょっと待って。」

天野アキの写真をホワイトボードに貼ろうとした河島は動きを止めてしまった。

荒巻太一「なんだ?」
島耕作「いや、ちょっと待てって言ったんで。」

それを聞いて慌てたのか、こう言い出した。

荒巻太一「確かに、(水口が挨拶しに入ってくる)天野は素材としては良いと思います。ただヒロインは荷が重い。例えば『伊豆の踊り子』の山口百恵、『野菊の墓』の松田聖子、それに映画オリジナルの鈴鹿さん然り。ああいう映画はヒロインの鮮烈なデビューによって記憶に残る。そういう意味でインパクトが天野春子にはない!」

え? 水口は太巻の取り違えに気がついた。鈴鹿ひろ美も気がついたようだが、話は先へ進んでしまった。

荒巻太一「天野春子にない物が他の候補者にあるかどうかは未知数です。じゃあ、例えば、小野寺薫子なんかは表現力こそ天野春子には及ばないが独特のムードがあります。芸歴も若い。(河島に)天野はいくつだっけ?」
島耕作「(怪訝に思いながらも)四十…」

太巻は河島が持っていた天野アキの写真を手に取り

荒巻太一「18じゃないか。」

写真を河島に返したが

島耕作「天野アキはそうです。」

驚く太巻。

鈴鹿ひろ美「ずーっと、春子って言ってるから、ねえ。」

目を丸くする太巻。河島は「ええ」と言うだけ。

鈴鹿ひろ美「誰、春子って?」

この質問の意図は不明。春子と鈴鹿は面識がある。質問の意図はどうとも取れる。だが、これ以降、太巻は何も言えなくなってしまった。他の選考者は「残しましょうよ」と改めて言い、鈴鹿ひろ美はニヤリと笑った。ここで水口が

水口拓磨「(天野アキの予定は)空いてます。」

と話に割って入った。太巻きと河島以外の選考者に挨拶し、

水口拓磨「もちろん、次も空けて待ってましたんで。」

と言うわけで

鈴鹿ひろ美「じゃ、そう言う事で。」

となり、太巻はガックリするのであった。こうして天野アキは最終選考まで進んだのであった。それにしても何故太巻は大事な選考会議で取り違えを起こしたのだろうねえ。