入社(あまちゃん)

あまちゃん 第22週「おらとママの潮騒のメモリー」第132話(脚本:宮藤官九郎、演出:吉田照幸 (C) NHK)より

純喫茶『アイドル』では鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)がスリージェープロダクション社長の天野春子(小泉今日子)、そして黒川正宗(尾身としのり)と会っていた。鈴鹿ひろ美のファンの甲斐(松尾スズキ)の様子からも後でわかるが鈴鹿ひろ美は初来店である。その用件は

鈴鹿ひろ美「ですから、スリージェープロダクションに所属させていただきたいのです。」

当然、驚くこの人達。

天野春子「鈴鹿ひろ美が!」
甲斐「(コーヒーを出していたのだが)鈴鹿ひろ美? (鈴鹿ひろ美をみて)うわあ! 鈴鹿ひろ美!!」

慌てて甲斐はカウンターへ戻った。なお正宗は目を見開いて話を聞いていた。話は続く。

鈴鹿ひろ美「はい。私、鈴鹿ひろ美、つまり、あたくしを。」

思わず春子と正宗はお互いを見合った。

天野春子「どう言うこと?」
黒川正宗「君にわからないこと、僕にきいてもわかるわけないだろう。」

そりゃそうだ。鈴鹿ひろ美が説明した。

鈴鹿ひろ美「ハートフルから独立して個人事務所でやってきたんですけど、限界感じてしまって、ずーっと探してたんです、事務所。誰かいい人いないかしらって。」

さて甲斐は『潮騒のメモリー』のシングルのジャケットを右手で磨いていた。マジックペンも用意していた。サインしてもらうためである。

天野春子「あたし、良い人じゃないですよ。」
鈴鹿ひろ美「そこが良いのよ。あなた、押しが強いでしょ。」

正宗は深く頷いた。さて甲斐は磨き終わって鈴鹿ひろ美のところへ行こうとしていた。

鈴鹿ひろ美「業界の常識や悪しき風習に正面からこう、いてまえみたいな、(正宗がまた頷く)いてこませみたいな、行ったらんかみたいな。」

おや? 誰か(太巻)に影響されたのか?

天野春子「あたし、関西人じゃないですよ。」

甲斐はカウンターを出た。以後、鈴鹿ひろ美越しに甲斐も映り、色々と表情を変えながら鈴鹿ひろ美に近づくのだが、残念ながら文章では表現しきれない。

鈴鹿ひろ美「娘をアイドルにしたじゃない。長いものにも太いものにも巻かれず、御自分の夢を娘に託して、それを貫いて。ご立派よ。」

ここでアングルが切り替わり、正宗が春子をじっと観て、春子が考えている様子が映った。春子は尋ねた。

天野春子「太巻さんは御存知なんですか?」
鈴鹿ひろ美「良いから。あたしとおんなじで限界感じてる筈だから。」

はて? そしてついに

鈴鹿ひろ美「夫としては良いけれど、仕事のパートナーとしてはとっくに切れてるの。無理無理。」

唖然として口をパクパクさせるような感じの甲斐がアップになり、同じく驚いて口を開けている正宗がアップになった後、二人の考えている事は当然違うが、

鈴鹿ひろ美「よろしくお願いします。」

これは正式には移籍ではないねえ。兎に角、鈴鹿ひろ美はスリージェープロダクション所属の女優となったのであった。