なりすまし(必殺仕置屋稼業)

必殺仕置屋稼業 第26話「一筆啓上 脅迫が見えた」(脚本:保利吉紀、監督:松野宏軌 (C) 松竹)より

今回の標的は岡っ引の弥七(山本麟一)とその子分で蔵破りを働く鉄吉(高峰圭二)。弥七達は益田屋(西川ヒノデ)の蔵を破ろうとしていた。印玄は牢に入って頼み人の富蔵(美川陽一郎)から話を聞き、その後、百叩きの刑を受けたので殺しはお休み。ところが仕置を始める段になって一騒動起きた。主水が南町奉行所で夜勤で宿直をする日になって、弥七達がその日、四つの鐘が鳴る時に仕事をした後に上方へ即座に高飛びすることがわかってしまった。紆余曲折の末(ここまでの展開は長くなるので省略)、捨三は南町奉行所に入って主水と会う事には成功したのだが、厠の中で主水が捨三にこう言った。

中村主水「よし、わかった。じゃ、俺がここへ戻ってくるまで、ちょっと臭えが、おめえ、ここで頑張ってくれ。」

え!?

捨三「冗談じゃありませんぜ。ここ?」
中村主水「しょうがねえだろ、それより。え? ましてやまだ道中だって行って小半刻はかかるぜ。それに宿直は仕事上外出は一切禁じられているんだ。さっきの奴(同心の水村(唐沢民賢)のこと)に悟られないように腹くだりがいいや。うんうんここで唸ってくれ。」
捨三「弱っちまいましたねえ。」
中村主水「俺になりすましてな。」

仕方なく、捨三は主水になりすまして「腹を下して厠でうんうん唸る」を実践し続ける羽目に陥った。主水は門番にも

中村主水「腹痛くて我慢できねえんだ。すまねえが、うち行ってきて熊の胆とってきてくんねえか。」
門番「でも門番は。」
中村主水「俺が代わりに立ってやる。」

と出まかせを言って追い払うことに成功。その隙に主水は南町奉行所を脱出した。四つの鐘が鳴った。走る主水。南町奉行所の厠では

水沢「おい、中村。どうした、中村?」

と言ったので捨三がうんうん唸る羽目に陥った。鉄吉は市松が仕置。主水が走る間、また水沢が厠へやってきた。

水沢「中村。中村。(戸を叩いた後)下痢か? (また戸を叩いた後)じゃあ、門番に言って医者、呼ばせようか。」

そんなことされたら大変だ。咄嗟に

捨三「いー。」

これを聞き

水沢「いい? あ、そうか。」

水沢は去ってなりすましがバレる危機も去った。

さて益田屋から弥七が出たところへ主水がうまい具合に駆けつけて弥七を仕置。

中村主水「俺は忙しいんだ。速く成仏するといい。」

なんとか戻った主水は捨三に

中村主水「今だ、門番いねえ。」

こうして捨三は厠、そして南町奉行所から脱出し、仕置は完了したのであった。