エージェント?(あまちゃん)

あまちゃん 第20週「おらのばっぱ、恋の珍道中」第120話(脚本:宮藤官九郎、演出:桑野智宏 (C) NHK)より

映画『潮騒のメモリー』がリメイクされる情報が種市浩一(福士蒼汰)から天野アキ(のん)もとい天野春子(小泉今日子)に伝わった。スポーツ紙にも主役を一般公募すると言う記事が出た。リアスでもその話で持ちきりになった。

そんなある日。水口(松田龍平)は河島(マギー)と純喫茶『アイドル』で待ち合わせをした。後でわかるが、どうやら河島の方から話を持ちかけたようである。世間話に見せかけて、応募者の人数を確認する水口。さらに

水口拓真「うちの天野アキも出しますから、書類、ダメ元で。」
島耕作「あ、そ。」

それにしても甲斐(松尾スズキ)のところには何故かこういう恐ろしい情報が集まるよねえ。

水口拓真「例えば、演技経験ゼロの子でも可能性あるんですか?」
島耕作「何、お前、ホントに一般公募だと思ってるの?」
水口拓真「え? だって…」

河島は笑いながら水口の甘い考えを一蹴した。

島耕作「お前、素人じゃねえんだから。」
水口拓真「出来レースか。」

水口はスポーツ新聞を放り投げた。

水口拓真「まあ、どっちみち、天野は太巻さんに盾ついてやめたんだから、200%あり得ませんよね。」

ところが

島耕作「それがそうでもないんだなあ。」

その理由は

島耕作「こっから本題なんだけどう、小野寺ちゃん、金槌なんだわ。」

水口もそれは知っていた。

島耕作「天野は泳げるだろ。海に潜ってウニとってたんだろう。」
水口拓真「ああ、それで呼び出したんすか、なるほど。」

河島は頷いた。つまり、この話はハートフルからスリージェープロダクションに持ちかけた話だったのである。さて本当の要件はおおよそ察しがつくとは思うが

島耕作「水ん中さあ、背格好は違うけどわかんないと思うんだよね。」

水口は無言。

島耕作「と言う事で、そういう前提で書類審査は合格すると…」
水口拓真「(即座に)吹替要員ならお断りします。」

本当に甲斐のところには危険な情報が集まるよねえ。河島は頭を抱えてしまった。水口はたちあがった。

水口拓真「バカにしないでください。ずっと奈落に押し込められてようやく陽の当たるところに出てきたら、何が悲しくてシャドウやらなきゃいけないんですか。しかも昔の仲間の。」

河島は二の句が告げなくなった。

水口拓真「この話、聞かなかった事にします。」

と立ち去ろうとした、その時

河島「ちょっと待てよ、水口。」
甲斐「(ほぼ同時に)お金、お金。」

これもあったのだが、水口が外へ出ようとした瞬間、出入口に現れたのはなんと

甲斐「うわあ。太巻さん。懐かしい。」
荒巻太一「ご無沙汰しております。」

水口は気圧されて外へ出られなかった。

甲斐「彼ねえ、ここの元定連だったの。25年くらい前かなあ。」

暴走が止まらない甲斐を放置して(?)太巻は水口を睨みつけた。

甲斐「年は?」
荒巻太一「51です。」
甲斐「うわあ。あれ、俺いくつだっけ? 65だわ。どうなってるの?」

自分の年齢を忘れるのかなあとは思うのだが、そんなのは置いといて、水口はカウンターに逆戻り。太巻は水口を説得にかかった。

荒巻太一「『潮騒のメモリー』は俺にとっては起死回生のカードだ。」

前と言っている事が変わった気がするが、それは置いといて

荒巻太一GMTをトップアイドルにするために是非とも小野寺で行きたい。」
甲斐「良いよね。小野寺ちゃん、熱いよね。」

甲斐の頭の中にはアイドルの事しかないようである。微妙な空気になったので

甲斐「ごゆっくりどうぞ。」

太巻は話を続けた。

荒巻太一「だが、鈴鹿さんの出した条件はオーディションでヒロインを選ぶこと。その真意は天野にチャンスを与えるためだと言うのは明白だ。」

ここで太巻は水口を方を向いた。

荒巻太一「つまり、これは折衷案だ。どちらも立てるためにこうするしかないんだよ。」

だが水口は尋ねた。

水口拓真「うちの天野を影武者として使う事は折衷案ですか?」
荒巻太一「『潮騒のメモリー』は俺と鈴鹿さんが出会った作品だ。」
水口拓真「天野春子もですよ。」
荒巻太一「黙れ。今から、その話をする。」

なぜこう言う恐ろしい情報が甲斐のところに集まるのだろうか。荒巻はついに本音を話し始めた。

荒巻太一「落ち着かねえんだよ。鈴鹿さんが天野を可愛がっているのを見ると、なんかこう罪滅ぼしをしているみたいでねえ。」

水口は恐る恐る尋ねた。

水口拓真「で鈴鹿さん、ご存知ないんですよねえ。春子さんの歌ってことを。」
荒巻太一「俺の前ではそう言う事にしている。でもわかるだろう、普通。声、全然違うし、片や絶対無理音感だぞ。知ってて騙されたフリ続けてるんだ、25年間も。タチ悪いよ。罪滅ぼしなんかしなくて良いんだよう。悪いのは全部俺なんだからさあ。」

過去を思い出して無言の太巻。そんな話を聞かされてどうすれば良いのかわからぬ甲斐。水口は何も言えなかった。太巻が次の仕事に向かって出て行く時間になってしまった。

荒巻太一「ま、と言うわけだから。お前の方から、天野親子の説得頼む。悪いようにはしないから。」

こう言って太巻と河島は立ち去った。

甲斐「『悪いようにしないから』かあ。なんか聞いた事があるなあ。あ、春ちゃんか。」

甲斐は25年前の太巻と春子のやり取りを思い出し

甲斐「『悪いようにしないから』って悪い奴のセリフだよねえ。」

数日後、スリージェープロダクションには書類選考通過の合格通知が届いた。初めは無邪気に喜ぶアキだったが、

天野アキ「だってママと太巻さんはハブとマングースだべ?」

と謎の言葉を吐いて疑問に思うのであった。一応、春子は「天敵」と言いたいと理解はしたのだが。