フィクションなどから拾う情報処理用語? その120 副業(暗闇仕留人)

暗闇仕留人 第1話「集まりて候」(脚本:國弘威雄、監督:工藤栄一 (C) 松竹)より

 

黒船が来航。吉岡以蔵こと糸井貢(石坂浩二)は妻のあや(木村夏江)と(おそらく)浦賀で黒船を観ていた。

あや「あれがアメリカの船なんですね。それなのに幕府は高野長英先生を処刑して先生を匿ったあなたを3年の間、捕まえようとして。」

貢は江戸にあやと一緒に帰ることにした。上記のセリフで貢の境遇はわかるだろう。

あや「私、嬉しいんです。だって何もかもあなたの仰る通りになった。これからだってきっと、みんなあなたの仰るように。」

だが、あやは体の調子が悪いのか倒れてしまった。

糸井貢「あや。あや。さ、さ。」

貢はあやをおぶって立ち去るのだった。ずっとかかる「旅愁」は名曲だ。

その夜。夜鷹狩りが行われていた。夜鷹から上前はねてこっそり逃がしていた北町奉行所の同心中村主水を糸井貢は三味線のバチで襲撃。結果は相撃に終わったが、お互いにその腕前に驚いた。なおそれと前後して中村主水は同心を殺した大吉と遭遇したが目溢ししてやった。

後日。糸井貢が三味線弾きをしていた芝居小屋で糸井貢は大吉そして中村主水と遭遇。3人は驚くべき話をするのであった。なんと金で人殺しを請け負って殺そうというのである。発案者は中村主水。大吉は二つ返事で請け負ったが、糸井貢は渋った。十手持ちの主水を信用できなかったからである。

そしてまたしばらく経ったある日、おその(今出川西紀)という髪結が殺された。彼女の父弥助(佐山俊二)は大吉が以前した話もあって盗みも働いて5両の金を作った。そのお金は三味線を弾いている最中の糸井貢の懐に入れられてしまった。否応なく、糸井貢は殺しの仕事をせざるを得なくなったのである。

仕方がなく糸井貢は中村主水、大吉、さらに主水の仲間だった鉄砲玉のおきんとおひろめの半次と会って金を分配した。

糸井貢「弥助さん髪結床からおそのさんの嫁入り道具を売り払ったが、足りなかった。だから盗んででも、この金。」

殺しに大吉は乗り気だったが

中村主水「(扇子で糸井貢の右肩を叩いて)あんたもやるんだな?」
糸井貢「断る。」

単細胞の大吉は興奮して貢の胸ぐらを掴んだが貢の決意は変わらない。

糸井貢「これは前にも言ったはずだ。俺は奉行所の十手持ちは信用できん!」

果たしてそれだけなのだろうか?

さて中村主水は大吉と一緒に殺しの現場へ向かっていたが、糸井貢は跡をつけていた。どうも迷いがあるようだ。そして貢は観た。近江屋(浜田寅彦)を大吉が殺した後、中村主水が与力 高畑(今井健二)を殺したのを。逃げる家老 湯川(西山嘉孝)の前に現れたのは

糸井貢「八丁堀(中村主水のこと)、観たぞ、証拠は。」

そして主水は三味線のバチ(後に山田五十鈴が演じた役が使用するものとは若干違った仕掛けが施されているもの)を使って家老 湯川の喉を切った、のだが、その表情は複雑なもの。まだ迷いがあるようなのだ。流れる「旅愁」は名曲だ。工藤栄一監督の演出も光る。これが後々の伏線で最終回へと繋がっていく。こうして糸井貢は本業とは別に副業も行なうことになったのだ。

そして中村主水、大吉、そして糸井貢の間には別の因縁があるのだが、それは翌日判明するのであった。