フィクションなどから拾う情報処理用語? その126 コネ(必殺仕置屋稼業)

必殺仕置屋稼業 第6話 「一筆啓上 怨霊が見えた」(脚本:國弘威雄、監督:蔵原惟繕 (C) 松竹)より

 

季節はお盆。中村家でもお経をあげることになった。いつものお経をあげるお坊さんが来られなくなり、中村主水が代わりのお坊さんを探す羽目にあいなった。思わず主水は位牌にこうこぼす。

中村主水「義父上、早くに亡くなられて、あなたは幸せですね。」

妙心尼の存在は忘れ去られたのかなあ。

さて中村主水はこの頃、仕置屋稼業を営んでいた。その仲間の変態破戒僧、そう、一応僧侶の印玄もお盆なので大忙し。今日もどこかの長屋でお経を読んでいたが、その仕事ぶりは適当で

お母さん「え、もうおしまいかね、印玄さん。」
小さい娘さん「母ちゃん、やっぱり坊主丸儲けだなあ。」

と言われる始末。ここでオチが見えてきてしまうけど、そうなのだ。適当な事を言って立ち去ろうとした印玄の目の前に中村主水が現れた。主水は印玄を連れ出し

中村主水「(かしこまって)一つお願いしたいことがございましてな。」
印玄「なんの御用かな。」

とまあ、もっともらしく取り繕ってはいたけれど実際の頼みは裏稼業(こちらはおこうからの依頼もあって捨三と市松にも話が行っている)の頼みと

中村主水「おめえ、本当にお経ができるのか?」
印玄「バカを言うな。門前、市をなして断るのに苦労しているんだ。」

それを一笑にふしながらも中村主水は話を続けた。

中村主水「長屋の連中、誤魔化すわけには行かねえぞ。ある高名な武家の屋敷でお経あげてもらいてえ。」
印玄「誰だ?」
中村主水「中村家。俺にだ。」

というわけで、この後、亀吉も乱入しての小芝居があったのだが、それは省略。中村家で印玄はお経をあげたのだが、やはりというか、ただ時間が長いだけの適当なもの。足が痺れて仕方がない。やっと終わって

中村せん「ありがとうございました。これで亡き夫、中村家の御先祖も。ではごしゃなりとどうぞ。」

ちなみに印玄の真後ろに左からりつ、せんの順に座り、中村主水はりつの後ろに座っていた。中村家の序列はそういう感じらしい。やはり婿殿の立場は弱いのね。義母上せんは立ち上がり、りつと一緒に印玄を見送ったが、主水は足が痺れて、立ち上がったが、座り込んでしまった。その後のやりとりが凶悪だ。

中村りつ「あなた、なんです。あのお勤めで足が痺れるなんてだらしがない。」

これはまだマシ。

中村せん「婿殿、なんです、あの坊主。何を唱えているのか唸っているのかさっぱり。お布施の20文でも包んで早く追い返しなさい。」

流石の主水もこう返した。

中村主水「そうは行かんですよ、母上。母上も江戸中の坊主が払底しているのはよく御存知のはずですよ。あたしはですね、1両払うから頼むから来てくれと頭を下げて来たんですからなあ。」

これを聞いて驚く中村せんとりつ。2人合わせて戦慄した。本当に名前の由来はそうだったのだが菅井きんさんも白木万理さんも気づかなかったという驚くべき逸話も残っている。

中村りつ「あなた、1両ですって!」

印玄の咳払いが聞こえたので

中村りつ「払っていただけるんですね、あなたのへそくりから。」

中村せんの顔も恐い恐い。

中村主水「1文でも高過ぎるよ。」

安直にコネに頼るとこうなるので気をつけましょうね。