綱紀粛正(必殺仕置屋稼業)

必殺仕置屋稼業 第10話「一筆啓上 姦計が見えた」(脚本:田上雄、監督:松本明 (C) 松竹)より

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第10話 一筆啓上姦計が見えた 1975.9.5

 峻烈な南町奉行が「綱紀粛正」係として着任させた用人・土方左馬之介は、ど助平の変態。
かつて八丁堀小町として名を馳せた人妻を嬲るのに、亭主を姦計に陥れるという悪行を働く。妻は夫を思い、夫は妻を案じ動く結果は心中立ての惨殺。夫婦と親しかった主水は土方に罠を仕掛け、仕置料も彼からとり、りつを餌に彼らを誘う。

 ロケ地、主水にたばかられたりつがお百度を踏む谷中・笹森神社の子授け地蔵、今宮神社境内の祠。餌につられやって来た土方を始末する主水、高倉脇の坂。殺しの際の台詞は土方への強烈な皮肉「奉行所心得その十三・部下に破廉恥なる行為を強要したる者即日切腹のこと」が傑作。
*初手から、子供達に竹トンボを作ってやる「優しいお兄さん」市松の姿が描かれる。たらい回しになった安田の遺児を引き取り「育てる」という市松だが、仕置から帰った彼が見たのは、自らの姿を真似て竹を削り串を作り、蜘蛛を刺す幼児の姿、手離すなら今という主水に力なく答える市松の演技が上々。お痛をした子の尻を叩く印玄にからむくだりは、「馬鹿が移るぞ」の名台詞に加え、印玄の木引っこ抜きとコミカルに進行し、クールでニヒルなキャラクターが仲間を認め人間性を回復するプロセスを積み上げてゆく。

この話のあらすじは上記の通り。綱紀粛正係が実際はやりたい放題やっているのである。さて配役は下記の通り。

まず安田家は下記の通り。

そして悪事を働くのは次の3名。

  • 土方左馬之介(伊藤孝雄)
    中村主水が仕置。りつを囮に使う。
  • 佐々木兵庫(波田久夫)
    市松が仕置。竹トンボを飛ばし、喉を切った後、竹串で刺す。
  • 瀬川一蔵(柳原久仁夫)
    印玄による屋根落とし。猿轡を咬まされたので声も出せずに屋根から落とされる。

さて主水が小太郎を朝の定食を食べるためにお初の店へ行くとそこに市松がいた。その後、色々あって市松が小太郎を引き取ったのだが因果応報を悟って「堅気に育てる」のを諦めて手放すのは大きな見どころ。市松は気づいていなかったが竹串を作るところを小太郎は寝床からしっかり観ていたのだ。

なお「バカが移るぞ。」は捨三が働く風呂屋の屋根にいる印玄が小太郎に屋根落としされた後、小太郎の尻を叩く印玄のところに竹串が飛んできて

市松「子供をいじめるもんじゃねえぜ。ボン、こっち来な。バカが移るぞ。」

というセリフを指している。この後、バカこと印玄は馬鹿力を出して大木を抜くのだが、大木が倒れて自分も倒れてしまい

印玄「もういや、こんな生活。」

というのであった。