フィクションなどから拾う情報処理用語? その128 スポット対応(必殺仕掛人)

必殺仕掛人 第16話 「命かけて訴えます」(脚本:早坂暁、監督:大熊邦也 (C) 松竹)より

 

この話、殺しをするのは冒頭だけで後は専ら甲州16ケ村の窮状を老中に訴えるべく選ばれた青年たちを手助けするのが話の中心となってしまう。一応、藤枝梅安も西村左内も登場して活躍をするのだが、一番美味しい仕事をするのが、血を見るのも嫌いだと言って仕掛人にならなかった、あの男なのが意外なのである。

さて本題。色々あって青年達の上訴は失敗。心中ものとして扱われてしまった。弥んぞこと弥造(松橋登)といね(梓英子)の墓の前に集まるのは音羽屋半右衛門、藤枝梅安、西村左内、そして岬の千蔵。

岬の千蔵「これじゃあ、可哀想過ぎるよ。」
藤枝梅安「収まらねえか?」
岬の千蔵「ああ。収まらない。」
藤枝梅安「じゃあ、どうする? おめえが訴状を持って訴え出るかい?」

この問いに岬の千蔵はこう答えた。

岬の千蔵「ああ。そのつもりだ。」

なんと、今回、上訴というか仕掛けを行なうのは岬の千蔵なのだ。藤枝梅安はニヤリと笑いながらこう言った。

藤枝梅安「おい。」

そして

岬の千蔵「左内さん、もう一度、あの訴状を書いてもらいてえんだ。」

驚く左内は立ち上がった。

岬の千蔵「あんた、金貰ってるんだからねえ、そのぐらいしても良いんだ。」

はて。勝算はあるのか?

西村左内「千蔵、お前、死にに行く気か?」

こう聞くのには訳があり、上訴は重い罪に問われるのが御定法だったからである。それに対する答えは用意されていた。

岬の千蔵「死なねえよ。死にたかねえよ。捕まってから、どっかで逃げ出すつもりだ。できねえかもしれねえけどよ。」

ニヤニヤしながら藤枝梅安がこう言った。

藤枝梅安「千蔵、おめえ、いっぺん、伝馬町の牢、破ってんだってな。」

そう。それがあるから千蔵がああ言い出したのである。

岬の千蔵「でも、あれは若い時の事だからよ。」

かくして

音羽屋半右衛門「千蔵、これは手金だ。頼まれた仕事はまだ果たしてねえんだ。うちの信用にも関わるからな。頼む。」
岬の千蔵「へい。」

というわけで作戦は実行された。岬の千蔵は上訴に成功。

藤枝梅安「あいつ、とうとうやりやがった。」
西村左内「あいつを見直したよ。」
藤枝梅安「なあに、百姓に化けられるのはあいつだけだからね。」

そういう理由もあったのだ。そして岬の千蔵は屋根から伝馬町の牢を脱出。屋根の上で藤枝梅安と西村左内が出迎えるのであった。さて上訴の結果は

西村左内「甲州代官は首。甲州はしばらく老中酒井が直轄するらしい。」

大喜びする岬の千蔵。

藤枝梅安「さあ、河豚鍋河豚鍋。」

3人は引き揚げるのであった。