キックオフ(必殺仕置人)

必殺仕置人 第1話「いのちを売ってさらし首」(脚本:野上龍雄、監督:貞永方久 (C) 松竹)より

念仏の鉄、棺桶の錠、鉄砲玉のおきん、おひろめの半次、そして、中村主水はお咲(今出川西紀)の父松造(大滝秀治)をスケープゴートにした連中を仕置した。念仏の鉄が北町奉行 牧野備中守(菅貫太郎)の背骨を外した。その後、お咲の目の前で中村主水

中村主水「的場さん(近藤宏)、死んでください。浜田屋さん(大滝秀治)、あんたもだ。」

と言い、主水が浜田屋を斬り、棺桶の錠が手槍で的場をぶっ刺した。逆の方が良かったような気もするが、錠の身体能力は高かったのだろう。そして牧野はおきんと半次が探し出した死んだばかりの女性と並べられて心中物の片割れに見せかけられてしまった。こうして仕置は終わったのだ。

だが大きな問題があった。話は前後するが棺桶の錠はお咲とこんな会話を交わしていた。

お咲「おら、お金なんて一文も持ってねえだ。」

無言の棺桶の錠。

お咲「聞いたんです。おら、30両なんて、そんな。」
棺桶の錠「(即座に)気にすんな。ああでも言わなきゃ動きはしねえんだ。」
お咲「でも…」
棺桶の錠「こう言うことは金でやるもんじゃねえ。やっちゃいけねえんだ。黙っていな。」

そう。棺桶の錠はお咲が30両出すと大嘘こいて鉄達を焚き付けたのだ。当然の事ながら、それがバレ、錠の住まいで鉄は激怒。主水も呆れ、おきんが唖然とする中、

おひろめの半次「はい、お待ち。お待ちどうさん。」

なんと半次が30両を持ってきた。曰く

おひろめの半次「お咲ちゃんが身を売ったんだ。これ、お前(棺桶の錠)に渡してくれってよ。なんだ、知らなかったのか?」

一同、絶句。棺桶の錠は走り回ったが、それ以上の事はできなかった。

後日。棺桶の錠のところへ4人がやってきた。

中村主水「備中守は腹切って死んだぜ。これはおめえの取り分だ。」

主水は棺桶の錠が作っている棺桶の上に6両置いた。

念仏の鉄「俺達はなあ、これからもずーっと今度みたいな仕置をしていくことに決めた。」
中村主水「これは先の長い汚え仕事だ。向こうが悪なら俺達はその上を行く悪にならなきゃいけねえ。俺たちゃ悪よ。悪で無頼よ、なあ、鉄。」
念仏の鉄「ああ。」
中村主水「磔にされてもしょうがねえくらいだ。だが、こう悪い奴をお上が目こぼしするとなりゃ、そいつら、俺達がやらなきゃならねえ。つまり、俺達ろくでなしでなきゃあできねえ仕事なんだ。」

いつの間にか立ち上がっていた棺桶の錠に念仏の鉄はトドメの一撃(大門豊談)を放った。

念仏の鉄「おめえみてえに世のため人のためなんてきれえ事言ったんじゃ、すぐへたばっちゃうんだよ。俺達と一緒にやるんだったら、この金受け取れ。やる気がねえんだったら、どっか消えちまえ。」

しばらく考えた後、棺桶の錠は金を受け取った。こうして仕置人は始動したのであった。

だが中村主水は念仏の鉄ほどの覚悟ができていたのかどうかはわからない。それが後々、自分の身に帰るとは主水は気づいてなかったのであった。