割り込み(新・必殺仕置人)

新・必殺仕置人 第5話 「王手無用」(脚本:安倍徹郎、監督:工藤栄一 (C) 松竹)より

ついに中村主水は将棋の駒の買い手から疋田兵庫(菅貫太郎)に辿り着いた。あの正八から将棋の本を無理矢理持ち帰った男である。さらに旗本 小出(唐沢民賢)、旗本 横地(武周暢)、旗本 神尾(重久剛一)の3名が殺された手口から、念仏の鉄が疋田兵庫を狙っていることまで察知してしまった。さて町方は大騒ぎ。この事件の全容を知っているのは鉄達4人と中村主水(と死神と虎)だけ。

さて正八の絵草紙屋の地下室では

正八「今夜は表歩けねえよ。どこへ行っても取的だらけだ。」

ところが楽しそうにこの男は言うのだ。

念仏の鉄「そうだろう。奉行所、きりきりまいだ。」

笑いが止まらない。何故か版画を刷っている。

巳代松「八丁堀はいざとなったら俺達を売るかもしれねえなあ。奴は手柄を欲しがっている。」
念仏の鉄「奴が売ったら、俺が殺す。それだけの事だ。(刷り上がったので)どうだ、正八。良いだろう。」
巳代松「良いじゃねえか。え。」

正八は鉄が刷ったものを破り捨てながら

正八「商売、甘く見ちゃいけないよ。」

と言うわけで

念仏の鉄「帰ろうか。明日も仕事だ。早く寝ましょう。」

と階段を登ろうとしたのだが、念仏の鉄と巳代松は慌てて後戻りする羽目に陥った。あの男がやってきたからだ。中村主水は隠れていた鉄を蹴飛ばした。

念仏の鉄「お、おう。しばらくだな。」

この期に及んで遊ぶ鉄。だがそれで誤魔化される主水ではない。

中村主水「そんなに俺の面、見たかねえか。」
念仏の鉄「え? いやいや。いやあ、びっくりしたあ。全然わかんなかった。」

なおも主水は

中村主水「正八。」

なおも笑う鉄に

中村主水「お前ら随分派手にやってくれたなあ。」
念仏の鉄「え? やってくれたって何を?」

何故か主水は正八の頭を叩いた。

中村主水「松。」
念仏の鉄「松!」

松は階段の下に隠れていたのだが、慌てて鉄が引き摺り出した。

中村主水「残るのはただ1人、三番町の疋田兵庫か。」

鉄は誤魔化したかったのか版画の続きを始めたが主水の嫌味は止まらない。

中村主水「追っかけてたのが同じ男だってのは皮肉なもんだなあ。」
巳代松「(鉄に紙を渡しながら)捕まえたら、どうだ、お前の手で。」

だが

中村主水「そうは行かねえや。相手が旗本じゃ、俺達町方は手が出ねえ。」

主水はくしゃくしゃに丸まった紙を鉄の顔に投げつけた。

中村主水「旗本は旗本同士、んまあ、うまく行ったところで甲府勤番山流し。閉門持ち込みの上、無礼打ちかなんかで有耶無耶にされるのがオチってところだ。」

主水は紙を丸ごと放り投げた。慌てて正八が拾う。

中村主水「将棋所もなあ、それを知って虎に話をつけたんだろう。

今度は真面目な口調で鉄が言った。

念仏の鉄「将棋所?」
中村主水「伊藤宗看(伊藤果)ってのは只者じゃねえぞ。町の者が言ってるだろう。あいつは鬼だ、鬼宗看だって。え。おい。」

主水は手を伸ばした。銭を渡せと言うのだ。

中村主水「分前いくらだ。」
念仏の鉄「金はない。」
中村主水「ねえ?」
念仏の鉄「ねえ。前金みんなで分けちまった。」
中村主水「あ、そうか。じゃあ、しょうがねえなあ。」

だがなおもごねる主水君。正八を何故か鉄のところへ投げ飛ばし

中村主水「俺を外そうったってそうは行かねえぞ。」

さてこの顛末はどうなるか。続きは映像で確認してほしい。あれ、おていがいなかったねえ。