懲戒処分(必殺仕置人)
必殺仕置人 第3話「はみだし者に情なし」(脚本:安倍徹郎、監督:松本明 (C) 松竹)より
沈没船のアジトの中に同心 島本(入川保則)、与力の高坂多聞(唐沢民賢)、蝋燭問屋 三國屋(谷口完)、紀州藩家老 小笠原頼母(溝田繁)が目隠しをされて縛られ、立たされていた。偉そうに中村主水が宣言する。
中村主水「悪いことはできねえなあ。天網恢恢疎にして漏らさずって奴だ。だがな、俺達は天網なんて夢みてえな事を誰も信じちゃいねえ。生身の人間の恨みを込めて、てめえらに仕置をしてやるんだ。お前ら、目明かしの六蔵を手先に使って何の罪科のねえ女を、おめえらの慰み者にしやがった。そのために首を括った女もある。川に身を投げた女もある。身を持ち崩した女は二人や三人じゃねえ。その訴えを取り上げてやるはずの奉行所の役人がグルになってちゃ、いってえ、この恨み、誰が晴らすんでえ。いいか、奉行所はなあ、北町と南町だけじゃねえぞ。ここにもあるんだ。ここに地獄の奉行所がなあ。」
主水が十手で島本の顔を弄ると島本が悲鳴を挙げた。
三國屋「待ってくれ。金なら出す。いくらでも出す。」
だが主水の答えはこうだった。
中村主水「金ならあるんだ。ここに乞食が貯めた十三両の金がなあ。おう。乞食の胴巻はくせえかよ。これだけはよく覚えとけ。乞食が二十年、汗水垂らして稼いだ金でえ。おめえ達に仕置をしてくれと頼んでいるんでえ。」
なんだか主水は興奮気味。ここで鉄が主水の肩を叩いた。
中村主水「これだけは忘れるなよ、てめえら。」
主水は亀吉(常田富士男)の胴巻を三國屋の顔になすりつけた。その間に鉄砲玉のおきんは亀吉を連れてきた。当然、島本の前に連れてこられた。
中村主水「亀、来たか、おい。おめえの目、潰しやがったのはよう、八丁堀同心の島本って言うんだよなあ。」
亀吉「いるのかい、あの野郎が。」
中村主水「おめえのすぐ後ろにいるじゃねえかい。」
ところが亀吉は間違えて鉄に襲いかかってしまった。慌てて宥める鉄と主水。
念仏の鉄「こっちだ、こっちだ。」
今度は亀吉は襲いかかったが噛みつき始めてしまった。「噛め」と言われたと勘違いしたのかどうかは知らないが。その小芝居の後
念仏の鉄「亀、亀。」
また亀吉は島本に噛み付いた。あのねえ。
中村主水「(鉄に)おめえの言い方が悪いんだよ。」
そして
中村主水「さあ。本当の仕置はこれからだぞ。」
島本は床に寝かされた。用意されたのは蝋燭だ。目には目を。歯には歯を。蚊には金鳥マットです、と言うCMは後に制作されたが、必殺仕置人のコンセプトはそうだったのだ。なので島本の両目は亀吉により潰された。他の連中もそうだったのだろう。
この後、連中は裸にされ、葵の御紋のついた褌をさせられ、裸踊りをさせられるのであった。最後は川の中に飛び込まされておしまい。
必殺仕置人は後のザ・ハングマンのような話だったのである。そう。現代版必殺仕事人とザ・ハングマンは当時は呼ばれていたのだが、実際の話は必殺仕置人を元にしていたのである。