待機(必殺仕置人)

必殺仕置人 第4話 「人間のクズやお払い」(脚本:野上龍雄、監督:三隅研次 (C) 松竹)より

聖天の政五郎(黒沢年男)の仕置が終わった翌朝、念仏の鉄、棺桶の錠、鉄砲玉のおきん、おひろめの半次、そして中村主水は引き揚げるため歩いていたが、何故か念仏の鉄のくしゃみが止まらない。と橋を渡ろうとしていたその時、

鉄砲玉のおきん「ちょっと、なんか聞こえない?」

そこで錠が先に走って地面に耳をつけてみれば

棺桶の錠「大勢やってくる。」

それを聞いて主水は気がついた。

中村主水「小六だ。小六が来たんだ。まずいぞ、こら。」

慌てて全員、橋の下に隠れたが、物凄い足音が聞こえて止まらない。鉄はくしゃみが出そうになったが

鉄砲玉のおきん「良いよ。」
念仏の鉄「引っ込んじまった。」

半次は橋の下から出て主水とおきんが続いたのだが

おひろめの半次「あ、また来やがった。」
鉄砲玉のおきん「え?」
おひろめの半次「また来やがった。」
中村主水「行けねえ。」

とまた橋の下へと逆戻り。

棺桶の錠「ずいぶん、集めやがったなあ。」

主水はシーっと言ったが、鉄のくしゃみが出そうになり、半次が口を抑えた。頃合いを見ておきんが橋の下から抜け出した。

鉄砲玉のおきん「ああ、いて。もう腰が痛くなっちゃったあ。」

伸びをしたのだが引っ込む羽目になった。

中村主水「天神の小六って奴は大した奴だ。一声、声をかけりゃこれだけの人数か。」

行進が続く中、鉄がくしゃみをしそうになったのでおきんが口を抑えた。行進は止まらない。

鉄砲玉のおきん「馬鹿馬鹿しくなっちゃった。これだけ大勢かかる大仕事、あたし達、一体、いくらでやったんだい。」

主水はシーっと言ったのだが、鉄がくしゃみをしそうになったので

鉄砲玉のおきん「うるさいねえ。やりたきゃどこでも良いからやっておいでよ。」

半次がぼやく。

おひろめの半次「そういやあ、一人三両じゃ安かったかなあ。」
鉄砲玉のおきん「そうだろう。それに何さ。一体、なんでここに貼り付いて。ああ、もうやめた、やめた。」
中村主水「おぎん。」

中村主水はおぎんの口を塞いだが、鉄は思い切りくしゃみをし、ずっと待ち続ける一同であった。それにしてもいつ出たんだろうねえ、橋の下から。