デッドロック(あまちゃん)

あまちゃん 第4週「おら、ウニが獲りてぇ」第23話(脚本:宮藤官九郎、演出:井上剛 (C) NHK)より

ウニをとるためには頭で何も考えない事、まあ無の境地みたいなものなんだろうが、兎に角、そう言う結論に達した天野アキ(のん)だったが、それを台無しにする事件がよりによって海女の口開け(本気獲り)の前日に起きてしまった。

三陸駅で足立ヒロシ(小池徹平)は天野ユキと遭遇して話をしていた。

足立ヒロシ「そっか。じゃあ、頑張んなきゃなあ。俺もビデオカメラ持って行って応援に行くから。」
天野アキ「やめてよ。ただでさえプレッシャーで押し潰されそうなのに。」
足立ヒロシ「仕事だよ。アキちゃんの泳ぎ撮影するんだ。」
天野アキ「そっか。」
足立ヒロシ「巻き込んじゃってごめんね。」
天野アキ「え?」
足立ヒロシ「俺が君のビデオ、ホームページにアップした途端に大騒ぎになって。」
天野アキ「いやいや、おがまいなく。お客さん増えて、みんな喜んでますから。」
足立ヒロシ「そっか。」
天野アキ「ストーブさん、電車出ちゃうね。急ぎの用事じゃなかったら、また日を改めて。」

天野アキは立ち上がったのだが

足立ヒロシ「心配なく。アキちゃんのことが…」
天野アキ「だからおがまいなぐ。自分でもわかってるんです。チヤホヤされるのは今のうちだけだって。女子高生の海女なんて珍しいから、一時的に騒がれてるだけだし。」
足立ヒロシ「そんな事ないよ。」
天野アキ「え?」
足立ヒロシ「ごめん、自分で蒔いた種なんだけど、君の人気が出て嬉しい反面、その、君が遠くへ行ってしまった気がして。」

ヒロシの突然の言葉に怪訝な顔のアキ。

天野アキ「どこへも行きませんよ。学校と浜の往復ですよ。」
足立ヒロシ「いや、実際の距離の話ではなくて気持ちの距離。」
天野アキ「気持ちの何?」

そしてついにヒロシは立ち上がり、こんな事を言い出してしまった!

足立ヒロシ「て言うかさ、お母さんから、何も聞いてない?」

防火壁春子(小泉今日子)はアキにこの言葉を一言も伝えていなかった。

足立ヒロシ「アキちゃんのこと、好きになったの、俺が一番っすから。」

春子は一笑にふしたが

足立ヒロシ「俺が本当に一番っすから。」

アキは怪訝な顔である。吉田正義(荒川良々)は待合室に入ってしまったが雰囲気を察したのか無言。

足立ヒロシ「(後ろを向いて小声で)普通、なんとなく伝えると思うんだけどなあ。」

吉田正義は立ち止まったが

天野アキ「一体なんなんですか?」

振り返ったヒロシはついに言ってしまった。

足立ヒロシ「好きなんだよ。」

ガーン!

天野アキ「ジェジェ。」

アキが立ち上がるのが何度も映った後、

天野アキ「ママが?」
足立ヒロシ「違う。アキちゃんのことが好きなんだ。」

吉田正義は何故か柱の陰から見ながら通り過ぎた。

足立ヒロシ「それで、お母さんには反対されたんだけど、我慢できなくて。とりあえず気持ちだけ伝えたくて。答えはすぐでなくて良いんだ。じっくり考えてからで。」

正義は何食わぬ顔をして聞き耳は立てながら駅員のいる部屋に入って座った。だがヒロシは大事な事に気がついていなかった。アキにとっては大事な時であった事を。まあ良くある話だよねえ。私も似たような事をしましたよ、ヒロシとは読まないけどね。

天野アキ「やばい。あ、やばい、やばい、やばい。」

アキは頭を抱えて座り込んでしまった。

天野アキ「脳が、脳味噌使っちゃダメなんです。考えちゃダメなんです。本気獲りなんです、明日。もう台無し。」

最後は何を言っているのか聞き取れなかったが、兎に角、ヒロシはアキに突き飛ばされ、アキは退散。座り込んだままのヒロシに正義はこう言うのであった。

吉田正義「残念でしたねえ。」

さて夜になってもアキは眠れなかった。人生初の告白だった上に相手は親友の兄。頭の中が邪念でいっぱいになり、本気獲りどころではなくなってしまったのだ! そしてこのまま、次回へと続くのであった。そういえば、このドラマ、何かと執着の強い人には願い事が叶わないようになっていたねえ。ヒロシが初めてのパターンなのかな?