機密(シャーロック・ホームズ)

著作権の関係でコナン・ドイルが書いたシャーロック・ホームズシリーズを無料で読めるようになり、専用サイトができた。

221b.jp

この記事では『シャーロック・ホームズの帰還』に収録されている短編『第二の染み』を紹介しよう。なお、特に断らない限り、引用部分は上記サイトからのものである。依頼者はヨーロッパ担当相を務めていた「トレローニー・ホープ閣下」とイギリス首相を務めていた「ベリンガー卿」だ。

「紛失が発覚したのは、ホームズさん、今朝の八時でした。私はすぐに首相に連絡しました。ここに来たのは首相の提案です」

以下、ホープとホームズとのやりとりを載せておこう。

「非常に簡単に説明できます、ホームズさん。手紙が、 ―― それはある外国の君主から送られた手紙です ―― 、六日前に届きました。非常に重要な手紙だったので、金庫には置いておけませんでした。ですから私はホワイトホール・テラスの自宅に毎晩持ち帰り、寝室の鍵付き書類箱の中に保管していました。昨夜はそこにありました。それは間違いありません。私は夕食の着替えをしている時、実際に箱を開いて文書が中にあるのを確認しました。今朝、それが無くなっていました。書類箱は鏡台の鏡の側に一晩中置いていました。私は眠りが浅く、妻も同じです。私達は二人とも夜の間には誰も部屋に入ることが出来なかったと断言できます。それなのに、繰り返しになりますが、書類が消えたのです」
「夕食は何時でしたか?」
「七時半です」
「寝室に行くまでにどれくらい時間がありましたか?」
「妻は劇場に出かけていました。私は彼女を待って起きていました。私達が寝室に行ったのは11時半過ぎです」
「では書類箱は四時間、無防備になっていたということですね?」
「午前中に家政婦が入り、その他の時間は私の従者と妻のメイドが部屋に入ることができますが、それ以外は誰もその部屋に入ることは許されていません。彼らは二人とも長い間私達と一緒にいて信用できる使用人です。それに二人とも、私の書類箱の中に通常の省文書よりもっと重要な文書がある事はまず知りようがありませんでした」
「その手紙の存在を知っていたのは誰ですか?」
「家では誰もいません」
「きっと奥さんはご存知だったのでしょう?」
「いいえ。今朝書類が無くなるまで、私は妻には何も言っていませんでした」

その後、色々と話をした後、依頼者は帰り、ホームズがエドアルド・ルーカスを含めた3人だろうと犯人の検討をつけたところ、ワトソンが新聞記事にエドアルド・ルーカス殺害事件の記事が載っている事を指摘。それは偶然にしては怪しいと議論し合っているところへ、なんとホープの妻であるヒルダ・トレローニー・ホープ夫人がホームズの部屋を来訪。彼女とホームズとのやり取りの冒頭部分を引用しよう。

「夫はここに来ましたか?ホームズさん」
「ええ、来ました」
「ホームズさん、私がここに来た事は夫には話さないようにお願いします」

以後、彼女は夫が来た目的を執拗にホームズに尋ねたのだが、ホームズは

「奥様、お尋ねの事にはお答えできません」

の一点ばり。結局、ヒルダは帰る羽目に陥った。

その後、3日間は捜査に進展はなかったのだが、機密が外国に漏れた形跡も何故かなかった。そして事件発生から4日目になり、エドアルド・ルーカス殺害事件を調べていたレストレードから連絡があり、エドアルド・ルーカス殺害事件の現場を見て、更にレストレードの話(絨毯の血痕の場所と床の血痕の場所が違っていた)を聞いた事からヒントを掴み、更に前夜に現場を「若い女性」が訪れた事をマックファーソン巡査から聞いた事によって事件の真相を掴むのだ。

最後は「若い女性」から真相を聞き出したが、彼女の名誉も守るためにホームズは裏技を使って紛失した秘密文書を元の場所に戻した。そして驚く依頼者には

「探偵にも外交上の秘密がありまして」

と言ってホームズは立ち去るという粋な最後になるのである。

まあ真相を知りたい方は上記サイトに載っているので、そちらを参照してほしい。