暴走(必殺仕置人)

必殺仕置人 第18話「備えはできたいざ仕置」(脚本:勝目貴久、監督:松野宏軌 (C) 松竹)より

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第18話「備えはできたいざ仕置」1973.8.18

 若い娘を騙して連れ込み鬼面つけていたぶる三河以来の旗本・加納十兵衛。或る日連れ込まれ弄ばれた挙句発狂するおさと、婚約者の大工は犯人を突き止めようとして返り討ちに。瀕死の彼はおさとのもとに辿りつき突き止めた相手の名を告げ落命するが、その名・橘屋が狂女の記憶を戻し、膝元で死んでいる恋人を認識させる哀れな結果となる。
結婚資金を託すおさと、仕置料となる。強敵と言う主水に鉄は手の込んだ仕掛けを提示。鉄は夜に加納の寝所に忍び、おさとが孕んでその子が殺しに来る・見捨てられて病死扱いの詰腹などと不吉な暗示をかける。昼間には狂態を装ったおきんがまとわりつき、心理的に追い込まれた加納は妻を斬殺し狂乱状態で失踪。奉行所には内々に見つけて処分の沙汰が下り、出動した主水が矢継ぎ早に投げられる小柄をかわし抜き胴一発で仕留める。加納に加担していた富商は鉄と錠に乗り込まれる。
*凝ったシーンの多い見応えのある一作。長屋でハンモックで寝ていたり、おさとを探す佐吉のもとへ行者姿で現れ小銭を掠めるなど鉄のパフォーマンスが笑える。加納追い込みに狂女装うおきんに加え半次までヘンな格好で「十兵衛~」と迫るのが傑作。

ロケ地
・狂ったおさとを療養させる佐吉、西寿寺(本堂、鐘楼)。
・橘屋の桧町別邸、中山邸(門、参道)。
・加納十兵衛邸、相国寺光明寺。狂乱のおきんは方丈西塀の松に出る。
・失踪した加納を殺る主水、鳥居本八幡宮(鳥居下、竹林)。

今回は色々と遊びが多い。主水からの伝言をおきんから聞いた鉄がやる気なさそうにハンモックで寝ていたり、行者に化けて大工の佐吉(中井啓輔)のところに潜り込んで聞き込みをするのは序の口。

だが光あれば影もあり、佐吉の許嫁おさと(杉木葵)は丸岡の隠居(藤尾純)のところへ行った筈だったが、実際は丸岡の隠居のところから橘屋文左衛門(田口計)と勘定組頭 加納十兵衛(高森玄)のところに連れ込まれて頭をおかしくされてしまったのだ。彼女を甲斐甲斐しく世話する佐吉を見て、鉄がおさとの頭を治療してやる。原理不明だが頭の神経を刺激するために頭を色々とぐりぐりし、どこかから聞こえてきたのうがきっかけとなって真相が判明。おさとは般若の面をつけた十兵衛によって手裏剣で襲われたのだ。主水は十兵衛と剣道の試合で立ち会ったことがあったので、その腕前を知っていた。

最終的に佐吉は丸岡の隠居が殺されたのを見て事の真相を探り出すのだが、彼も刺されてしまった。佐吉の今際の際の言葉を聞いておさとは正気を取り戻し、嫁入りのために貯めた金が仕置料となり仕置人出動となるのだった。

と言うわけで仕置も手が込んでいる。目には目を。歯には歯を。と言うわけで加納十兵衛を発狂させるのだ。

まず鉄砲玉のおきんが勘定奉行所に乗り込み、痴れ者を装い、十兵衛と面会。

鉄砲玉のおきん「十兵衛、会いたかった。」

と追いかけ回す。

そして夜になり、今度は鉄が十兵衛の頭を刺激して枕元で有る事無い事吹き込んだ。おさとが子供を身籠って、その子供が十兵衛を殺しに来るというのだ。悪夢を見て思わず起きる十兵衛。

次の日。今度はおきんが行列の前に登場。

鉄砲玉のおきん「あなたのやや子ができました。」

などと騒ぎ、さらに

おひろめの半次「十兵衛、どうしてくれるの。」

と大騒ぎ。十兵衛は屋敷に戻れと供に命じて引きこもった。

だがその夜、さらに鉄が十兵衛の頭を刺激して枕元である事ない事吹き込んだ。お家断絶の危機まで吹き込み、ついに十兵衛は発狂。妻を斬り殺して暴走し、街に出てしまった。老中からも町奉行所に内々の通達があり、筆頭与力(唐沢民賢)がこう言った。

筆頭与力「万一の場合には切り捨てても良いということだ。」

というわけで他の同心や主水も出動。主水はついに十兵衛と出会った。堂々と表の仕事になり、十兵衛と対峙する中村主水。手裏剣の腕はやはり凄かったが、ついに手裏剣は尽きてしまった。刀を抜いて斬りかかる十兵衛を主水は堂々と切り捨てた。

残るは橘屋である。鉄と錠が乗り込んで、錠が番頭の五助(出水憲司)らを殺し、鉄が橘屋を殺すのであった。