諜報活動 その2(あまちゃん)

あまちゃん 第9週「おらの大失恋」第50話(脚本:宮藤官九郎、演出:西村武五郎 (C) NHK)より

小田勉(塩見三省)はいつもリアスに出入りしていた。それにくっついて弟子の水口琢磨(松田龍平)もリアスに出入りしていた。そして天野アキ(のん)が種市浩一(福士蒼汰)に振られて「潮騒のメモリーズ」解散の危機に瀕している最中、芸能界への邪心もとい関心いっぱいの足立ユイ(橋本愛)は「一人でもやります」と皆に宣言。リアスで今野弥生(渡辺えり)の指導を受けていた。その場に当然居合わせた水口は北三陸駅待合室から覗き込んでいるのを見逃さなかったのか、外に出てアキに声をかけた。

水口琢磨「中入らないの? 面白いよ。」

だがアキはベンチに座り込んでしまった。そこで水口もベンチ(ただし若干離れたところ)に座ってアキと話した。

水口琢磨「振られたんだって?」

アキが鬼の形相で見たので

水口琢磨「おお、こわ。そんな目で見ないでよ。」
天野アキ「なんで知ってんだ?」
水口琢磨「知りたくなくても勝手に耳に入ってくるよ。ここのバーの人ら、口を開けばアキちゃん、ユイちゃんだもん。」

アキは無言。

水口琢磨「あ、ネットの動画みたよ。あのう、海潜ってうにとるやつ。いやあ、感動したよ。もっと浅瀬でチャプチャプやってる感じだと思ったから。」

これを聞いてアキが水口の方を向いた。

天野アキ「あれは本気どりって言って、一年に一回、沖さ出て、なんぼ獲っても良い日なんだあ。」
水口琢磨「へえ。こわくない?」

水口はアキの心を掴むのに成功したようだ。この後、立て板に水のようにアキが話し始めた。

天野アキ「そりゃ恐えべ。あの日は特に潮の流れが速かった。でも、恐えと思ってはダメだ。なんでかわかるか?」
水口琢磨「さあ。」
天野アキ「脳味噌使うと酸素が足りなくなって息続かねえんだ。だから、何にも考えねえで潜るんだ。今年の夏もやるから、ジャグチさんも来るといい。」

このドラマ、なぜバカな人ばかり出るのだろうか? あ、脳味噌使わないからか。

水口琢磨「惜しい。水口。蛇口から出るの方だ。」

思わずアキは笑った。

水口琢磨「元は東京の子だったんだよね。どこ?」
天野アキ「世田谷区」
水口琢磨「えー、世田谷のどの辺?」

この質問の回答をアキは拒否した。水口に背を向けている。

天野アキ「東京の話なんかしたぐねえ。東京なんかさいるやつはバカだ。(突然立ち上がり)浅草寺の鳩に襲われて死ねばいい。」

正に鳩に豆鉄砲を食らった感じの水口はこう聞いた。

水口琢磨「ええっと、それ誰に対しての暴言なの?」

アキは種市と話した時のことを思い出していた。とそこへ種市が通りかかった。水口は

水口琢磨「あ、そうだ。タバコ買いに出たんだ。」

と立ち去り、アキと水口は二人きりになるのであったが、アキはすぐ立ち去ってしまったのであった。